マエストロ……ププッ
ちょっと今日は忙しくて短め&進展してません。すいません。
「で、結局セキトって奴は何がしたくて『迷家』を盗んだりしたんだ?」
朝の食卓を囲みながら俺はモモに問いかける。
ちなみに今我が家の食卓を囲んでいるのは5人。
俺、レイ、スズ、モモ、ヒトミちゃんだ。
モモは泊まるところがないということで必然的にウチに、スズも帰るのが面倒だと言って泊まった。
ヒトミちゃんはモモを質問攻めにしているうちに時間が経ってしまい、仕方なく泊まらせた。
本人は「これで夜通しモモちゃんからお話が聞けますわ!」と乗り気であったが。
ちなみに四十万はゲッソリとした顔で帰って行った。
朝からまた来ると言っていたが、大丈夫だろうか。
やっぱり過去の黒歴史のダメージは相当なものだ。
まぁ、ともかくそんなこんなで一夜明けて朝になった。
「モグモグ……それは、人間への憎しみだからだと思います」
口に入れていたパンを飲み込み、モモが答える。
「憎しみ?」
「はい。私達は山奥に隠れ住んでいることは話しましたよね、小さい時からセキトはそのことに不満を持っていました。なぜ人間どもからコソコソ隠れて生きていかねばならないんだと。その度に長老たちが言い聞かせていたのですが――」
「遂に村を出た、と」
「はい」
「でもやってること小さいよね。チマチマとそこらへんにいる人を殺すとかさ。人間への報復とかいうんなら、もっと総理大臣とか偉い人でも殺すべきなんじゃない?」
「レイ、人が死んでんだからべつに小さい事ってわけじゃないんだぜ?」
「……チッ」
俺の注意に舌打ちで答えるレイ。
「まぁまぁ……そこは私も不思議なんです。どうしてこの街でセキトがこんなことをしているのかは」
「何なんでしょうね~、この街に何か特殊なものがあるとかならわかるんですけど、そんなもの思いつきませんし」
顎に手を当てたヒトミちゃんがそう呟く。
特殊なもの、か。
無いわけじゃないんだよな。
俺という「元勇者」がこの街にいるわけだし。
だが、あの鬼がそんなことを知っているわけがないから、結局なぜこの街に来たのかはわからないな。
「まぁ、それはとっ捕まえてから聞けばいいんじゃないか。それよりレイとヒトミちゃんはそろそろ学校行かなくていいのか?」
時計を見ながらそう告げる。
「あ、あたしは今日休むから」
「私もお休みします」
しかし返ってきたのは予想外の答だった。
「は? 何言ってんの?」
「いや、だってモモが大変だって言うのにノコノコ学校とか行ってられないし」
そう言って隣に座るモモの頭を胸に抱え込むレイ。
クッソ、なんて羨ましい……!
いや、今はそうじゃない。
「レイ、学生は学校に行かなきゃならないんだぞ。一日休んだらそれだけ勉強が遅れる……」
「大学時代講義サボりまくって家でゲームしてたのはどこの誰よ?」
「……」
流石に自分がやってなかった事をエラそうにやれとは言えない。
でも簡単に学校休ませるのもな~。
「おい、マエストロ」
「その呼び方マジやめてくれませんかねスズさん。で、なに?」
「レイはそのセキトとか言う鬼に顔を見られておるのだろ? このままひとりで学校行かせて危なくないかの?」
言われてみると確かに……。
「わかった、いいよ。学校休んでも」
「ハァ? 別にアンタの許可とか求めてないし。あ、でもそれなら学校に風邪引いたって連絡入れといて」
「……」
何とか納得して許可を出したが、返ってきたのは辛辣な言葉。
「お主は保護者には向いとらんな~」
「ウッせぇよ」
「おやおや、ずいぶんと生意気な口をきくもんじゃなマエストロ……ププッ」
「最後に笑うのやめてくれよな!」
ニヤニヤと笑いながらからかってくるスズ。
チクショー、当分はこのことでからかわれ続けるんだろうな。
そんな勝てそうにない奴らからは顔を背け、ヒトミちゃんに向き直る。
「ヒトミちゃん、学校休むって言っても、もしかしてついてくる気じゃないよね?」
「え?」
いや「何を言っているんだコイツは」みたいな顔されても俺の方が困るんですけど。
「勿論着いて行きますよ、私も『B&Bトラブルバスターズ』の従業員ですから」
「いや、そうは言ってもバイトよりも学校優先しないと。ヒトミちゃんのご両親から任されてるんだから、そこはしっかりしないといけない」
「あぁ、それなら大丈夫ですよ」
そう言って、ヒトミちゃんはスマートフォンを取り出し、少し弄ってから画面を見せてきた。
「えーと『社会科見学だ、学校なんか休んでプロの仕事を見させてもらいなさい。from父』? え、なに? ご両親了承済みなの?」
「はい。私の夢のために学校に行くよりも多くが学べると言ったら了承してくれました」
にこやかに笑うヒトミちゃん。
ホントすっごい理解ある親御さんなんだね、マジビックリ。
「え、んじゃなに? 今日は四十万を加えて6人で探しに出るのか」
「そう言うことになるのかの」
まぁ、俺とスズがいればあの程度の奴から全員を守ることは難しくないだろうけど、大人数で動くとやっぱり目立っちゃいそうだしな~。
「あの、そんなことよりいいですか?」
考え込んでいたらヒトミちゃんが声を上げてきた。
「ん? なに?」
「ひとつきになったんですけど、そのセキトって人、次元をズラして隠れることができるんですよね? どうやって見つけるんですか?」
……。
「あれ、そう言えばどうやって見つけよっか?」
「なんじゃ、お主そんなことも考えとらんかったのか!?」
「いや、うっかり」
「うっかりじゃないわい!」
やっべー、考えてなかった。
昨日見つけられたのだってモモが次元ズラす前に魔力出してくれてたおかげで見つかったわけだし。
「そのことなら大丈夫です」
しかし、頭を抱える俺達にモモが声をかけてくる。
「何か考えでもあるのか?」
「はい、小さな頃から次元のズレた村で育った私達はある程度近くに居れば次元をズラされても感知することができるのです」
「お、マジか!?」
「ふむ、それは大した能力じゃな」
「流石モモ、すごいすごい!」
「あ、頭を撫で繰り回さないでくださいレイさん~」
褒められ慣れてないのか、顔を赤くしたモモの悲鳴が朝の食卓に響いた。




