↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何故か俺は付き合えない!  作者: 那須 儒一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
10/10

第十話 義妹と手料理

「ただいま……」


心音《ここね》を起こさないように物音を立てずに玄関の扉を開く。


時刻は午前二時……さすがに佐久間《さくま》先生の家に長居しすぎたな。


「ふぅ……」


乾いた喉を潤そうと冷蔵庫を開ける。


『にーにのバカ!』


赤い文字が飛び込んでくる。


作り置きされていたオムライスにケチャップで書き殴られていた。


「はぁ、朝にでも食べるか……」


軽くシャワーを浴びて、二階の寝室に入る。

そこには、心音が布団に包まって寝息を立てていた。


こいつも大概、かまってちゃんだな。

起こさないようにそっと布団に潜り込んだ。


「にーに……」


子どもみたいに甘える心音が抱きついてきた。


「不倫は許さないんだから……」


……寝言か?


てか、不倫ってなんだよ。

いつお前と籍を入れたんだよ。


そんなに好きなら、なんで俺を振った?


……まったく、小石川《こいしかわ》といい、綾園《あやぞの》先輩といい女心は本当に分からない。


心音と初めて会ったのは十三歳の時、

あの日のことを今でも覚えている。


海外で生活していた両親が、突然帰ってきたかと思えば、腕を組んで仁王立ちしていた心音が両親の間に立っていた。


何でも、母さんの親友の子どもらしい。

両親は俺と心音だけを日本に残し、海外に帰っていった。


まったく、引き取るだけ引き取って、面倒見ないなんて、大人って勝手だよな。


当時は、亡くなった祖母と二人で暮らしていたが、

正直寂しかった。


だから、妹ができたのは素直に嬉しかった。


始めはツンケンしていた心音が、

ある日を境にべったりになった。

理由は未だに分からないけど。


俺が初めて心音に告白したのは十四歳の時。

思春期に入り、とにかく彼女が欲しかった俺は義理の妹に告白した。


「俺の彼女にしてやってもいいぞ」


この時は思春期と自尊心と厨二病を拗らせていたからな。我ながら最低な告白だ。


「心音……愛しているよ」


今なら素直に気持ちを伝えられる。

俺って優柔不断なんだろうな。


わずかに心音の口角が上がった気がした。


「にーに……私も……」


「おい、起きているだろ」


「……バレたか」


「遅くなってごめん」


「……心配したんだから」


「オムライスからは心配しているなんて窺えなかったぞ」


「だって……どうせ、女の子と遊んでたんでしょ」


「ギクッ……まぁ、厳密には女の子ではないけど」


「にーにの浮気癖、いつになったら治るん」


今日の心音はいつもみたいに喚かなかった。


「てか、浮気って……別にフリーだから問題ないだろ」


むしろ誰か俺をもらってくれ。


「にーには心音のにーになんだから」


「はいはい」

もう、何度その言葉を聞いたことか。


「にーに……眠い……」


「そうだな。そろそろ寝るか……おやすみ」


「うん。おやすみ……」


明日は休みだ。たまには家族サービスもしないとな。


心音の体温を感じながら眠りについた。


❀


翌朝、冷蔵庫のオムライスを一人で頬張る。


「にーに……無理に食べなくてもいいんだよ」


寝ぼけまなこの心音が机を挟んで、前に腰を下ろす。


「とか言って、手を付けなかったら拗ねるくせに」


「当たり前じゃん。にーにへの愛情入りなのに、愛が蔑ろにされたら普通怒るでしょ」


「心音……一つ訊いていいか?」


「……どうしたの。改まって……」


「何で俺たち、付き合うのはダメなんだ?」


核心に迫る。


「だって……」


彼女の言葉を待った。

その先の言葉を俺も知りたかったから。


「だって……一度付き合ったら、兄妹には戻れなくなるから……」


「……ん?」


いまいち要領を得ない。


「義理でも兄妹だから付き合えないっていうのか?」


心音は首を横に振る。


「兄としてはオッケーだけど、彼氏としてはちょっと……的なこと?」


心音の首は左右に振り続けていた。


「俺はとにもかくにも彼女が欲しいんだ。

高校生活は彼女の有無で幸福度が天と地ほどの差がある」


あくまで個人的意見だが。


「それなら、恋人ごっこならいいよ」


「恋人ごっこ?」


「よしっ、それで行こう」


「えっ、いいの?」


心音は自分で提案しておきながら目を見開く。


「良いも何も、心音と恋人の予行演習ができるんだろ? 後学のためにも経験しておきたい」


いつか、運命の人が現れた時に、少しでも女性の扱いを心得ておかないと。


「なんか、動機が不純なんだけど」


心音は頬を膨らませる。


「まぁまぁ……それなら何から始める?」


「えっ……一緒に買い物行ったり……お風呂に入ったり……一緒に寝たり?」


「どれもいつもやっているだろう。

お前の裸なんてもう見飽きた」


「な、にーに失礼な!

この前入った時より成長しているから!」


「胸が一、二ミリ成長したってわかんねぇよ」


「むっ、にーにのバカ! もう知らない!」


心音は怒って二階に上がっていった。


「さっそく破局かよ」


短い付き合いだった。


確かに心音と付き合っても、

今までの生活と変わらないのかもしれない。


怒って、泣いて、笑って……

いや、心音の場合はほとんど怒ってばっかりだな。


はぁ……いつものように心音の部屋へ向かう。

慰め待ちの心音は必ず布団に包まって俺を待っている。


放置してもいいんだが、俺の飯を作る人がいなくなるからな。長引けば長引くほど俺が不利になる。


彼女の部屋に入って、いつものように土下座をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。