第20話 止まれ! そっちは敵だ!
アンコウ
分類: 深海性・肉食魚生息域: 深海、海底洞窟など特徴: 大きな口と鋭い牙を持つ捕食者。頭部にある発光器官を利用して獲物を誘き寄せ、奇襲を得意とする。
能力・性質
* • 《誘蛾灯》:頭部の発光器官から特殊な光を発生させ、獲物の注意を引きつける。
* • 《暗視》:光のほとんどない深海でも周囲を認識できる。
* • 《奇襲》:暗闇や地形に身を隠し、獲物が接近した瞬間に攻撃する。
* • 《大口》:自身の体格からは考えられないほど大きく口を開き、獲物を丸ごと捕食できる。
* • 見た目や戦闘能力とは裏腹に、阿部に対して非常に忠実で、独特な言動をする。
総評: 深海での待ち伏せと奇襲に特化した戦闘要員。阿部の勢力では、オウムガイが「知」を担うのに対し、アンコウは「武」を担う存在。
阿部が捕食した場合
アンコウを捕食することで、特に**《誘蛾灯》と深海での捕食能力**を取り込むことができる。
《誘蛾灯》
アンコウの発光器官を利用した能力。
暗闇の中で光を発生させ、魚や魔物の注意を引きつけることができる。
単純な照明としても使えるが、本来の用途は獲物を自分の間合いへ誘導すること。
阿部が使用した場合、光を餌と誤認させて敵を誘き寄せたり、逆に敵の注意を別方向へ向けたりするなど、戦闘以外にも応用できる。
能力が成長すれば、光の強弱や点滅を調整し、特定の生物だけを誘導することも可能になる。
《大口》
アンコウの捕食能力を取り込むことで、阿部の口や顎の性能が強化される。
単純に口が大きくなるだけではなく、自分より大きな獲物へ食らいつく力が強化される。
これにより、阿部の《捕食進化》との相性が非常に良くなる。
特に大型の敵との戦闘では、
噛みつく → 動きを封じる → 捕食する
という阿部の基本戦術を強化できる。
《暗視》
深海の暗闇でも周囲を把握できるようになる。
《水流感知》と組み合わせれば、
「見る」+「水流で感じる」
という二重の索敵が可能になる。
そのため、アンコウとオウムガイの能力は阿部にとって非常に相性が良く、アンコウが持つ奇襲・捕食能力と、オウムガイが持つ索敵・情報収集能力を同時に取り込むことで、深海での戦闘能力が大きく向上する。
総合的には、アンコウの捕食は阿部の「狩る力」を強化する進化。
最悪だ。
本当に最悪だ。
「止まれぇぇぇ!」
俺は必死に叫びながら泳いでいた。
その前を、巨大なカジキが猛スピードで突っ走っている。
そして、そのさらに前には――。
巨大な岩。
「そっちは岩だ!」
カジキは止まらない。
「止まれって!」
――ドゴォン!
海底に衝撃が走った。
巨大な岩が粉々になる。
「…………」
俺は呆然とその光景を見る。
アンコウが後ろから追いついてくる。
「……見事な突撃だったな」
「褒めるな」
「しかし、あの岩を砕くとは……」
「褒めるなって」
カジキは岩を砕いた本人なのに、まったく気にしていない。
むしろ楽しそうだ。
こちらへ戻ってくる。
「グルル……」
「……」
俺は嫌な予感がした。
「おい」
カジキが身体を低くする。
「待て」
さらに低く。
「待てって」
尾びれが動く。
「おい」
水流が変わる。
「――待て!」
突撃。
「だから待てって言ってるだろぉぉぉ!」
俺も逃げる。
カジキが追う。
魚群が逃げる。
アンコウも逃げる。
オウムガイだけが冷静だった。
「なるほど」
「何がなるほどだよ!」
「速度は非常に高い」
「見れば分かる!」
「方向転換も可能」
「だから何!?」
「ただし、直線的な攻撃しかできない」
俺は一瞬だけ考える。
「……つまり?」
「誘導できます」
「よし」
俺は泳ぐ方向を変えた。
カジキが追ってくる。
俺は巨大な岩の間を通る。
カジキも追ってくる。
右。
左。
上。
下。
カジキは速度を落とさない。
だが、身体の大きさが災いして細かい方向転換が苦手らしい。
俺は急旋回。
カジキも曲がる。
しかし少し遅れる。
「今だ!」
俺は横へ逃げる。
カジキはそのまま――。
――ドゴン!
「……」
「……」
岩に突っ込んだ。
アンコウが呟く。
「……強い」
「何が?」
「我が盟友の頭脳が」
「そこじゃないだろ」
カジキが岩から頭を抜く。
まだ元気そうだ。
「……あいつ、痛くないのか?」
「おそらく」
オウムガイが答える。
「頭部の骨格と筋肉が非常に発達しています」
「じゃあ、どうやって止めるんだよ」
「簡単です」
「え?」
「戦えばいい」
オウムガイは淡々と言った。
「あなたが勝てば、少なくともあなたの命令を聞く可能性があります」
「……なるほど」
俺はカジキを見る。
カジキもこちらを見る。
そして、口を開く。
「グルルル……」
「来いってことか?」
カジキが身体を構える。
俺も構える。
「よし」
今度は逃げない。
カジキが突撃。
速い。
正面から受ければ、確実に吹き飛ばされる。
だから俺は――。
ギリギリまで引きつける。
さらに引きつける。
そして。
横へ移動する。
カジキが俺の横を通過する。
その瞬間、俺は尾を噛んだ。
「――捕まえた!」
身体が持っていかれる。
「ぐっ……!」
速い。
速すぎる。
俺の身体が引っ張られる。
だが離さない。
「止まれぇぇぇ!」
カジキが暴れる。
俺は全力で耐える。
海底を身体で擦りながら、少しずつ速度が落ちる。
そして――。
止まった。
「……はぁ……はぁ……」
俺は息を切らす。
カジキも止まっている。
しばらく睨み合う。
そして。
カジキが――笑った。
「……?」
初めて、敵意ではないものを感じた。
カジキが俺の周囲を泳ぐ。
そして、もう一度だけ突進する。
今度は攻撃ではない。
俺の横を通り過ぎるだけだった。
「……認めたのか?」
オウムガイが答える。
「その可能性が高いでしょう」
カジキは俺の前に戻ってくる。
そして、頭を下げた。
「……」
俺は困惑する。
「……仲間になりたいのか?」
カジキが頷いた。
「本当に?」
また頷く。
「……でも、仲間を攻撃するなよ?」
少し間があった。
カジキは首を――いや、身体を傾けた。
「……今の間は何だ?」
アンコウが笑う。
「ククク……」
「お前は何が面白いんだよ」
「貴様、恐ろしい者を仲間にしたな」
「お前が言うな」
こうして。
俺たちの群れに、新たな仲間が加わった。
ただし。
こいつには一つだけ、大きな問題がある。
――止まれない。
だが俺たちは、それが後から欠点になることをまだ知らない。
追記1000PVありがとうございます!!!




