vsラリッタ①
その日は朝から曇りだった。
「なあ、新月の夜ってもしかして……」
「太陽も月も見えないって意味なら、確かに今は新月の夜よね。」
「普通に夜で、しかも灯りのないところで戦うのは無理だしな……」
「まっくらくら。ところであいつはもう待ってるのかしら?」
「待たせておこう。時間の指定をしなかったあいつが悪い。」
俺たちは酒場で食事を終え、ゆっくりと廃教会へ向かう。
「遅かったじゃない……」
廃教会の扉をくぐると裏口側にラリッタがいた。結構待っていたのか?
「時間の指定がありませんでしたし?」
「大先輩を待たせるなんて失礼な後輩もいたものね……」
「一応確認。この戦いの勝利条件は?」
「それはアタシがあなたを〆るまでに決まってるでしょう?」
「例えば私が今ここで泣いて謝ったらあなたは許してくれるの?」
「内容と気分によるわね。」
「まったく、気難しい大先輩ね。」
シンシアは杖を構える。
「ネクロマンサー、シンシアです。」
「絶望に顔を歪ませてくれたら許してあげる……今はダメ。」
ラリッタも杖を構える。
「知ってると思うけど。ネクロマンサー、ラリッタよ。」
俺は息を吸い込む。そして……
「戦士ノクタの立ち合いのもと、
術士ラリッタと術士シンシアの決闘を許可する!」
ノリノリで宣言した。だってこの決闘の宣言がかっこよかったからな。
「あっはっはっは!」
しかしラリッタに笑われてしまう。
「使い魔は人間扱いじゃないんだ!決闘の許可権限は無いんだよ!」
「じゃあこの決闘は……」
「決闘じゃない。一方的な蹂躙、あるいはただの破壊活動よ。」
ダァン!ザアアア……
雷が鳴ったのだろうか、一瞬だけ明るくなった。
追い打ちで土砂降りの雨が降りはじめた。
「さあお前たち、入ってきなさい!」
教会の裏口から4人の女性が入ってきた。
見覚えがある……ダンジョンで知り合って保護した4人じゃないか!?
「あああああんたたち、あんたたち、あんたたち……」
「う、ううううううう……」
「ににににげ、にげにげにげにげにげ……」
「……」(無表情)
おい、まさか。アンデッド化されてる……?
「あっはっはっは!ナラザスを始末したなんて舐めたこと言うから!」
ラリッタさん?ちょいとこれは外法が過ぎませんかね……
「トーカーが問い詰めたら、これはこれで面白いことになったわあ……」
またリザルトーカーの名前が出てくる。
「さあお前たち。あの女の子の息の根を止めなさい!」
4人がふらつきながらシンシアに襲い掛かる。
あの、ちょっといいか?確か二人ほど遠距離職だったような気がするのだが。
全員が工夫もなくただ突っ込んでくるだけだぞ!?
「えーっと、こうかな?」
シンシアが4人に向けて手のひらをかざす。
工夫もなく突っ込んでくる4人。ついにはシンシアの手に触れた。
途端
シンシアの手に触れられた順番に、4人は倒れる。
ダァン!ザアアア……
雷が鳴る。
ラリッタは目を丸くしている。
「お前、今。何をした……?」
「魔力譲渡の逆をやったわ。」
「魔力譲渡の……逆……ですって……?」
「だから魔力譲渡の逆をやってアンデッド化を解除したの。」
「勝手に……勝手に魔法を作るな……」
「へえ、この魔法には名前が付いてなかったのね。」
シンシアは一呼吸置く。
「"■■■■"と名付ける。」
ダァン!ザアアア……
シンシアの言葉と同時に雷鳴が響き、肝心の部分が聞き取れなかった。
「"火葬昇華"」
4人の死体は炎に包まれる。
「ま、待ちなさい!死体という貴重なリソースを消滅させるなんて!」
ラリッタは慌てている。
「ふーん、ちゃんとリソースとか考えて魔法を使っているのね。」
「火葬昇華は我々にとって禁忌!お前はネクロマンサー失格だよ!」
「人として失格なのはあなたの方でしょう?」
「生意気。本当に生意気な後輩だよお前は!」
「先輩後輩って……そういう価値観は学生で卒業しなさい?」
「黙れ!序列を考えろ!」
「じゃああなたが下。」
「ふざけるな!」
なんとなくだが……二人のやりとりで思ったことがひとつある。
……シンシアは本気で怒ってる。
無理もないか。俺も冷静じゃないし。
ダァン!ザアアア……
一切の遠慮もない雷と、雨が地面を叩きつける音が聞こえてくる……
「やはり仕込んでおいて正解だったようね……」
裏口からスケルトンの群れがぞろぞろと入ってきた。
「"死体強化"」
ラリッタはスケルトンの群れにバフをかける。
「さあお前たち!あの女の息の根を止めろ!」
ガキン!
スケルトンの攻撃は俺の小さな丸盾で止まる。
「あらあ?立ち合い人が乱入してくるなんて失礼じゃない?」
「俺には立ち合い人の資格なんてないんだろ?それに……」
俺はスケルトンを力いっぱい払いのける。
「これは使い魔の基礎行動で、術者をかばっただけだぞ?」
ダァン!ザアアア……
「上等……!」
ラリッタは怒りで顔が崩れかけている。いい化粧品でも紹介してやるか。




