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株主総会 そのに

「調査探検事業部についておたずねしたい。今年の予算は四億円ということですが、事業部に所属している従業員はあなた以外には何名ですか」

 どこかで見たことのある顔だった。そうだ、若葉銀行の人だ。

「伊藤事業部長、答えて下さい」

 CEOからの指名がある。

「現在、四名です」

「そのうち何名が、海外での情報収集にあたっています」

「私含め、毎年三名があたっています」

「事業部では、海外のエネルギー資源の調査はしていますか」

「多少はしています」

「人工衛星等を用いた資源探査にはどのくらいの予算を使っていますか」

「えー、そのような探査はしておりません。現地情報の収集のみです」

「事業部長は、今月、日本に帰国したとお聞きしましたが、その前はどちらに」

「スーダン、エチオピア、コートジボワール、インドネシア、インド等です」

「それで、五年間、ずっと海外旅行、もとい出張をしていたわけですね」

「はい」

「それが仕事なのですか」

「はい。その間、レポートと新産品の本社への送付は欠かさずしてきました」

「そのうち事業化され、利益が出たものはいくつありますか」

「えー、コートジボアールの調味料シリーズと、映像コンテンツ部門でのDVD化が十二本、あと、インドのウィスキー、といったところでしょうか」

「どれもマニアックな物ばかりですね」

 そう、ローエンタール商会は、子会社として映像関係の会社も持っている。そして、大ヒットこそしていないが、映画ファンの間で絶賛されたり酷評されるような映画を配信している。ちなみに、社員割引の対象なので私も見ている。

 ……しかし、まさかあれが熊さんのチョイスだったとは!

「そして、CEOの方針説明にあった資源探査の方は片手間ですませている。そういうことですね」

「天然資源分野については、どこも大手総合商社、特に米中露欧の巨大会社が権益をおさえていて、割り込めないのが現実です。ローエンタール・ユーロップと対立するのも望ましいことではなく……」

「CEO。ご経験から以上の認識で合っているのでしょうか。天然資源分野についての業務拡張は絶望的だと」

「いいえ。最近、アフリカ各国では元の宗主国以外との関係強化を狙った動きが目立ち、十分に商機はあると思います」

「ということです」

 その瞬間、私にはわかった。

 社長、会計士ギルドとツーカーだ!

「では、百二十万株の株主として、緊急株主提案『調査探検事業部の解体、同時に伊藤事業部長の解任』を提案します」

 会場がざわめいた。

「提案を採決します」とCEOが断言した。


 そして十五分の休憩時間がすぎた。

 一旦、株主たちは外に出て、招待状を取り出して行列に並ぶ。

 私達は、携帯スキャナーを起動し、配信されたプログラムを見る。

「緊急株主提案」の採決画面になっていた。

 各株主の招待状を読み込み、「解任/Dismissal 留任/Continuation 棄権/Abandonment」の選択肢を選んでもらう。

 ほとんどんの株主が、「解任」を選ぶ。

 ちょっと可哀想だが、会社を(くび)になるわけではない。

 アリサさんは最後までスマホをいじっていたが、別の行列の末尾に並んだ。


 結果は予想通り、調査探検事業部の解体、同時に伊藤事業部長の解任、ということになった。

 

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