喫茶店でのある1日part20
『まあ、私に関わる依頼はこれで終わりね。私が頼まれたのはその青年が死ぬことだったの、風音が居てくれて助かったわ』
笑顔を浮かべて初瀬は風音に礼を言う。声のトーンは単調ながらも、お礼を言われるとは思っていなかった風音は目を見開く。
「い、いや。お礼なんてそんな……。初瀬さんの様な者から言われる必要はないですよ。実際、私は良いところを持っていった様なものですから」
『風音が居なければ殺せない可能性の方が高かったのよ』
そこで話が途切れ、空白が訪れる。ほのぼのとしていた雰囲気に包まれていることに変わりはない。
「兎に角、これで全て終わりとするぞ。これ以上長引かせる必要もないからな」
『それもそうね。神様の容態も気になるところだし、もう離れるわ』
「そうなんですか? 私はどうしようもないですからね、封禍ではないですが……またいつか」
「お前、関わった奴に説明も無しに終わらせるのか?」
『説明なんて必要かしら?』
「どんだけ無責任なんだよ……」
『何で責任なんて負わなければいけないのかしら。私は今回、依頼をされただけよ。説明をする義理はないわ』
そう言うと、初瀬は喫茶店の奥にある扉を開けその場を立ち去る。風音もまた、その間の短時間に転移をしたのか居なくなっていた。
男は溜息を吐いて少年に話しかける。
「ご愁傷様、とでも言うべきか」
「俺が巻き込まれた理由は……」
「真っ当な理由であるはずがないだろう。たかが人間であるお前が巻き込まれた。それを気にするのは白夜くらいだ」
困惑している少年に対して、男は笑みを浮かべて生き生きとした様子だ。
「それも、あいつの場合はどこまでが本性か分かったもんじゃねえしな」
「何でお前はここに残ってるんだ?」
「ある程度の事情説明と、まあ労いでもかけてやろうかと思ってな」
少年の隣に座りながら話を続ける。
「言っては悪いが、運が悪かったな。神と関わらなければこうなることは無かった」
「……」
「まあ、見捨てりゃあ話は違ったがな」
「殺されかけている者を助けるな、と?」
「ああ」
男は少年の質問に断言する。男からすれば死にかけている人物は自分と無関係なら興味はない。悲痛な顔をする少年だが、男はその様子を見つつ話を続ける。
「この世界にお約束を求めるなよ。人外が跋扈するようなところだ。力が無ければ抵抗できずに死ぬ」
「それはお前にも言えるんじゃないのか……」
「はっ! 基本が相性なんだよ、人外どもの戦闘はな。下剋上をするならば相性というところに落とし込めるまで強くなれや」
「お前は何がしたいんだ?」
「下剋上だよ。初瀬とか言う奴にな」




