喫茶店でのある1日part13
初瀬は話の切りがついたことであることを思い出したのか、焦った様子で転移して消える。白夜はその様子を見て呆れている。
「神様を置いて来てるからかな。それなら無理してこちらに来なければいいものを」
少年は置いていかれたため、まだこの神社にいる。白夜は少年が残っていたことに気づき、溜息を吐く。
「まったく……初瀬ちゃんも連れてきた人を置いて行かないで欲しいな」
「蘇生を自分でできたということか?」
少年は呆然とした様子で白夜に問いかけてくる。白夜はその質問に対して意図を掴みかねている表情で答える。
「うん? 初瀬ちゃんのことかな、それならそうだよ」
白夜は疲れているのか答え方が適当になっている。その言葉で少年はばつが悪そうな顔をする。
「俺が頼まなければお前は言われなかったんじゃないのか?」
「ああ、そう言えばそうだったね」
言われたことで白夜はこの事態の原因を思い出したのだろう。納得した様子で少年の方を見る。そして白夜は苦笑して答えた。
「でも貴方のせいと言う訳ではないよ。私は貴方に言われていなくともあれをしようと試みていたよ」
「は? お前じゃあ何であのとき考えていたんだよ」
白夜の答えは少年の考えを裏切る様な方向で返す。少年の顔は驚きに染まり、話を詳しく聞こうとする。それに対して白夜は首を傾げる。
「……さあね。何を考えていたのかな」
本当に覚えてないのか曖昧な笑みを浮かべる。少年は驚きが一週回ったのか逆に考えこんでいる。
しばらく崩壊しかけた神社に静寂が訪れる。時間が経つにつれて赤く広がっていた霧が薄れて月明かりが射し込む。
白夜は溜息を吐いて立ち上がる。少年は白夜が立ち上がったことに気づいたのか、白夜の方を見る。その目は白夜の動きを見逃しはしないという光を持っていた。
「さて、そろそろ戻らないとね。貴方も喫茶店に来てくれるかな? 残念なことに拒否権はないのだけれど」
「どうやっても巻き込まれた者は解放されないのか?」
その質問は答えをはぐらかしてはいけない様な空気を纏っていた。その空気の変化に白夜は気づいているのだろう、面倒なものを見たという様子で答える。
「されないよ。だから巻き込まれたのなら率先して巻き込まれて欲しいところかな」
「そうか。なら仕方がないんだろうな。お前のその言葉には強制が含まれている様だしな」
少年は諦めた様子で溜息を吐く。
ここまでの出来事で少年が持っていた常識は役に立つことなく壊れていた。蘇生の能力がある世界と言えど、目の前で今まで話していた者が死ぬ。このことは、軽く言えるものではない。
当たり前であることだが、今まで平穏に過ごしていた少年の中では命が軽いと言っても、どこか遠いところの話だ。この様に感じていることであった。そんな少年は今日出会い、話した者が死に、生き返るという事態を目にした。どうしてそれで正気でいられるのだろうか。
必然的にどこかが壊れて狂う。そしてこの様な出来事は過去を見返しても往々にしてあることだ。
そんな少年は、疲れたのか眠そうにもしている白夜に対して、頭を下げる。
「なら、あの喫茶店の店員の正体を探るという名目で関わらせて欲しい」
別に何かを考えて言う気力もないために、適当なことを言っていただけだった白夜は、その言葉に驚く。
「眠いときにするものじゃないことだったかな……。はあ、面白そうではあるけど厄介だね。関係あるのは私ではないけど」
心の声がほとんど洩れている様子の白夜は、少年の願いを聞かずに少年の手を掴み、転移をする。転移した先は喫茶店の中であり、初瀬は白夜と少年が来たことに訝しげな表情を浮かべる。
「白夜ね、この時間に何をしに来たのかしら?」
「いつ敵が来るか分からないからね。あと私は眠い、初瀬ちゃん布団貸して」
「私に対する拒否権がないと思わないかしら」
少年のことを置いて白夜は初瀬に対して布団を強請る。眠いという理由の原因の一つは初瀬にあるということには気づいているのか、初瀬は断ることをしない。
少年の運命はこの場面を境に切り替わる。少年の運命は白夜に対してした提案を転換点に平穏から離れることとなった。
何か前哨戦の様な何かが少し長引いた気もする。




