生き物を殺す同級生の話
私の彼女から、『自転車のチェーンに生き物を挟み、ペダルを回すと潰れていく様子がお気に入りの同級生』の話を書いてほしいと言われたので、今回はその同級生の話を書く。
◇
その同級生は普通の男の子だ。勉強もそこそこできて、運動もそこそこできる。会話も普通にできる。
たまーに人を馬鹿にしたりするけれど、本当に普通の男の子、ただ、生き物を殺すことが好きなだけ。
私は彼と過ごした時間の中で、彼から狂気を感じたことはない。生物を殺しても、ニタニタ笑わないし、真剣にその様子を見てる。喜びもしないし、テンションが上がるわけでもない。
おそらく『状態の変化』が好きなんだと思う。
◇
彼は私と初めて出会ったときに、ダンゴムシの内臓の出し方を教えてくれた。
私はそれをする意味が分からなかったので、おそらく彼の話を聞いて、ほうけた顔をしていたのだろう。
彼は私に「待ってて」と言い残し、ダンゴムシを探しに行った。
しばらく待つと、彼が左手を握りしめたまま戻ってきた。そして彼は、「見てて」と言い、右指でダンゴムシの胴体を摘み、左指でダンゴムシのお尻を摘んだ。
彼がダンゴムシのお尻を勢いよく引っ張ると、ダンゴムシの胴体はお尻を境に2つにちぎれた。
彼の左指には、摘まれたままのダンゴムシの欠片。その欠片から、緑と灰色が入り乱れた腸のようなものが1cmくらいぶら下がっており、それは彼の指先に張り付いていた。
彼はその指先を私の目の前に突き出し、「これがダンゴムシの腸だよ」と言った。
私は「へぇー、そうなんだ。」と返した。なんでそんな事をするのか意味は分からなかったから、とりあえずの反応だ。
彼はその場にしゃがみ込むと、左手に握っていたダンゴムシたちを地面に放し、捕まえて次々にお尻を千切っていた。
◇
それから2ヶ月くらいたったときに、私は彼に「土日、何をしてるの?」と聞いた。
彼は「モンスターハンターをしてる」と答えた。
彼は続けて、「モンハンのハンマーが好きでさー、頭殴って気絶させると楽しい」と言い、「あー⋯、でも自転車のチェーンにナメクジとかバッタ挟んで、ペダル回すと、潰れて楽しいよ。」と言った。
バッタは、潰れるときに茶色い汁を口から出すそうだ。
ナメクジは、ペダルを何回まわしても潰れないから、お気に入りらしい。
しかし、ナメクジと似ているカタツムリは、殻が潰れるとすぐに弱って死んだらしく、彼は「カタツムリは弱い」と言っていた。
彼とはそこまで深い仲にはならなかったけれど、モンハンのハンマーの扱いは確かに上手かった。
けれど、私自身も気づかない内に疎遠になって、彼と話すことは無くなっていった。
◇
昨日、よく待ち合わせに使っていた彼の家をGoogleマップで見てみた。
綺麗な家が建っていた。
彼と私が遊んでいた、まだらの外壁に囲まれ、鬱蒼とした葉に遮られた陰鬱な庭はもう無くなっていた。
いまでは彼がどこに居るのか、今も生きているのか、その消息は分からない。
彼は連絡先を聞いても、教えてくれなかったから。




