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生き物を殺す同級生の話



 私の彼女から、『自転車のチェーンに生き物を挟み、ペダルを回すと潰れていく様子がお気に入りの同級生』の話を書いてほしいと言われたので、今回はその同級生の話を書く。



 その同級生は普通の男の子だ。勉強もそこそこできて、運動もそこそこできる。会話も普通にできる。


たまーに人を馬鹿にしたりするけれど、本当に普通の男の子、ただ、生き物を殺すことが好きなだけ。


私は彼と過ごした時間の中で、彼から狂気を感じたことはない。生物を殺しても、ニタニタ笑わないし、真剣にその様子を見てる。喜びもしないし、テンションが上がるわけでもない。


おそらく『状態の変化』が好きなんだと思う。



 彼は私と初めて出会ったときに、ダンゴムシの内臓の出し方を教えてくれた。


私はそれをする意味が分からなかったので、おそらく彼の話を聞いて、ほうけた顔をしていたのだろう。


彼は私に「待ってて」と言い残し、ダンゴムシを探しに行った。



 しばらく待つと、彼が左手を握りしめたまま戻ってきた。そして彼は、「見てて」と言い、右指でダンゴムシの胴体を摘み、左指でダンゴムシのお尻を摘んだ。


彼がダンゴムシのお尻を勢いよく引っ張ると、ダンゴムシの胴体はお尻を境に2つにちぎれた。


彼の左指には、摘まれたままのダンゴムシの欠片。その欠片から、緑と灰色が入り乱れた腸のようなものが1cmくらいぶら下がっており、それは彼の指先に張り付いていた。



 彼はその指先を私の目の前に突き出し、「これがダンゴムシの腸だよ」と言った。


私は「へぇー、そうなんだ。」と返した。なんでそんな事をするのか意味は分からなかったから、とりあえずの反応だ。


彼はその場にしゃがみ込むと、左手に握っていたダンゴムシたちを地面に放し、捕まえて次々にお尻を千切っていた。



 それから2ヶ月くらいたったときに、私は彼に「土日、何をしてるの?」と聞いた。


彼は「モンスターハンターをしてる」と答えた。


彼は続けて、「モンハンのハンマーが好きでさー、頭殴って気絶させると楽しい」と言い、「あー⋯、でも自転車のチェーンにナメクジとかバッタ挟んで、ペダル回すと、潰れて楽しいよ。」と言った。



バッタは、潰れるときに茶色い汁を口から出すそうだ。


ナメクジは、ペダルを何回まわしても潰れないから、お気に入りらしい。


しかし、ナメクジと似ているカタツムリは、殻が潰れるとすぐに弱って死んだらしく、彼は「カタツムリは弱い」と言っていた。



 彼とはそこまで深い仲にはならなかったけれど、モンハンのハンマーの扱いは確かに上手かった。


けれど、私自身も気づかない内に疎遠になって、彼と話すことは無くなっていった。



 昨日、よく待ち合わせに使っていた彼の家をGoogleマップで見てみた。

 

 綺麗な家が建っていた。


 彼と私が遊んでいた、まだらの外壁に囲まれ、鬱蒼とした葉に遮られた陰鬱な庭はもう無くなっていた。

   

いまでは彼がどこに居るのか、今も生きているのか、その消息は分からない。


彼は連絡先を聞いても、教えてくれなかったから。



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