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Ep.42 殺した男の見た目とか覚えてるわけないだろ

いつか自分に帰ってくるぞ

 目の前には、両手を鎖に繋がれ……額に赤い宝石が埋め込まれた男がいた。

 瞳は閉じており、どうやら意識は無いらしい。



「ねぇ、あの宝石から凄い力を感じるけど……どうする?」

「決まってるでしょ」


 異様なエネルギーを発している赤い宝石。私は男の頭に手をかざし……指をめり込ませながら、その宝石をちぎり取った。



 赤いポリゴンがそこから滝のように溢れ出る。まぁこれ本来は救出するんだろうけど……残念ながら私はコイツに用がないので普通に殺す。美少女だったら多分殺してない。多分ね。



「……一応消滅させておこう。狂夜、やれ」

「分かったよ。【灰永ノ世界(アシェルネ・)ヲ照ラス光(アークレイシア)】」


 私の展開したバリアによって指向性を持たされ、そして範囲を限定された灰色の光は、男の周囲のみを跡形もなく消滅させた。

 ポリゴンの一片すらも残されていない。




—————————————————————

『クエスト【ウェルタード領主の救出依頼】失敗』

『達成した失敗条件:ウェルタード領主の息子が死亡する。』

『特殊失敗条件:ウェルタード領主の息子を殺害する。』


《報酬》

・特殊称号【水煙の裏切り者】

—————————————————————


 ふむ、まぁなんか変な称号は手に入ったが……どうせあの街はそもそも入れないし、特に問題ないかな。



「とりあえずこの石を色々と調べたいけど……」


 これ、多分持ってるだけでダメージくらうんだよね。私は何かしらの特性か、あるいは状態異常無効のおかげでなんとかなってるけど……ちょっと危険だから、これは一旦持ち帰ろう。



「さて、ここで行き止まりみたいだけど……こういうのって帰りのポータルみたいなのがあるんじゃないの? まさか自分で帰れって?」


 さっきも見渡したが、再び周囲を見渡してみる。

 ダメだ、全然それっぽいのが見当たらない。そういえば前のシャマザリエの時は謎ワープ……後から聞くところによるとレイヴィ・グレイの魔法で地上に戻ったが……もしかしてあのNPCが戻してくれる予定だったりするのか?



「なんか転移できる方法とかないかな」


 ダンジョン内はやたらと壁が頑丈で壊せないから、そういう方法は取れないんだよね。



「うん? キミが前に使っていた【Obsession Chronicle】とかいうアレで転移魔法でも作れば解決するんじゃないかな……?」

「あ、確かに」


 『独自(オリジナル)』コマンドは、ちゃんとその現象に対応した魔法式について知ってないとダメだから……


 【Obsession Chronicle】はその辺の仕組みを一切考えないでいいってのが利点になるね。これ結構ちゃんとした利点だね、あの時の私はもしかしたらバカだったのかもしれない。



「【願いも嘆きも記憶の中に】【記せ】【綴れ】【顕現せよ】———【Obsession Chronicle】」


 さて、では転移魔法を作って……あ。



「どうしたんだい?」

「Bloodが足りない」


 てことでちょーっともう1回血を吸わせてもらって……あ? オッケー? よし、じゃあいただきます……







◇数時間後:神蘇国エル・レイヴィア———王城内研究室



「グレイー? ちょっとそこのマナウェーブスコープ取ってくれない?」

『なぜ私がこんな助手みたいなことを……私は王女なのだけど』


 知るか。今のあなたは単なる私の助手にすぎないんだからキリキリ働きなさい。分かったか?



『いや、まぁ霊となって彷徨っていた私を助けてもらったのは確かなのだけど……はぁ……』


 そう言いながらも、灰色の少女は私の言うことをしっかりと聞いて……頼んだ魔導具を私の目の前に置いた。



『私にはあなた達のやっていることがよく分からないわ……』

「分からなくていいよ」

『どうせろくでもないでしょう?』

「キミは私のことをどう思っているんだ……?」


 一応恩人のはずなんだけどなぁ……お、なんか妙な波形だな。波形っていうかノイズかな?



「んーと、これを一旦転写して……多分変換できるはず……」


 なんでこんな研究じみたことをやっているのかと聞かれれば、この赤い宝石……火のオリジンストーンについて調べれば更なる力を得られるんじゃないかと思ったからだ。


 とりあえず、このアイテムの説明文を見せよう。



—————————————————————

ユニークアイテム【火のオリジンストーン】

《能力》

・不壊

・時間と共に魔力を生成する。生成された魔力は取り出すことができる。貯蔵できる魔力量には制限が存在する。

・このアイテムに触れたキャラクターに【燃焼】を付与する。

・???

・???

—————————————————————



 最近、ヒバナと色々話していて気づいたんだが……このゲームは意外とちゃんと作られている。


 この“ちゃんと作られている”というのは、アイテムのひとつひとつに設定や成り立ちがあるし、法則などもしっかりと定められている……といった話だ。



 まぁつまり、ちゃんと観察したり実験してみれば、こういった不思議なアイテムの力を更に引き出せたりするかもしれないのだ。


 実際、このゲームは説明欄に書いていないことが多すぎる。


 オリジンスキルがどうやら『感情』によって著しく出力が変化するらしいことだとか、【不壊】にも色々と種類があることだとか……挙げだすとキリがない。



「変換終了、この波形は……まだ下に変換しないとダメなのぉ? 面倒だなぁ……」


 無限に振れてんじゃねーよ。無駄に手間かかるなコイツ……



「あ、これももしかしてアレ使えば結構楽になるか? 【願いも嘆きも記憶の中に】【記せ】【綴れ】【顕現せよ】———【Obsession Chronicle】」


 目の前に本が出現する。これもしかしてヤバいスキルなのでは?



「んーと、結構ちゃんと機能制限しないと曖昧な情報しか返されないだろうし……とりあえず単純なのからいこう。【マナウェーブスコープ】」


 目の前に波形を示すホログラムのような何かが表示される。とりあえずこれは成功、じゃあ次は……



「【ダウングレード】」


 これも成功、波形が読み取れるラインにまで変化した。しかしこの方法だと色々とすっ飛ばしちゃってるなぁ……それに消費するBloodが酷い。一回でほぼ全てがもっていかれた……隕石とかと比べ物にならないレベルの消費だ。


 どうやら曖昧な現象を目標にした魔法だと、消費Bloodも飛躍的に高まるらしい。もうちょっとちゃんと理論立てないと……いや本当につまらないなこれ。なんでゲームでこんなことしてんだ?



「グレイー? 手伝ってー?」

『私はそういうこと出来ないって言ったでしょう? 桃色女に頼みなさい』

「ラピスー! 手伝ってー!」

「呼んだ?」


 ひょこ、と研究室の扉からラピスが顔を見せる。

 なんでいるんだよ。私結構冗談で言ったんだったんだけど……



「ユキちゃんが望むならどこだろうと現れるよ。ふふ……」


 ありがたいね。でもちょっと怖いから程々にね。



「ふふふ……」


 その笑顔はなんの笑顔なの……?

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