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Ep.41 やっぱトマトジュースより生の血だよね

ちょっと今回アステリアがキモいから注意してね!

◇ヨイタウ王の金字塔———地下8階


「む、雰囲気が変わったね」

「ミイラとか出てきそう」


 私は脳内で光属性の魔法を演算する。とりま9重合成魔法をキープしとけば大抵のことはなんとかなるからね。

 あ、でもちょっと待てよ。これBloodの量が足りないか? 足りないわ。



 やっぱ敵が少ないと魔法の収支はマイナスになっちゃうね……


 まぁこれはアストライア(触手剣)を使えるなら解決するんだけどさ、その場合は【無手の極意】が発動しないから火力が著しく下がっちゃうんだよね。難儀だ。



 とりあえず、Bloodが今足りなくなってるのはどうにかしないといけない。


 回復ポーションとかでもいいんだけど、ここは狂夜に血を吸わせてもらって……いや、ちょっと待てよ?


 よく考えたら私、このゲームで(・・・・・・)まだ全然人の血を吸ったことなくないか……?



 これは由々しき事態だ……血を吸わない吸血鬼ってなんなんだよ。

 吸血鬼モノの一番美味しいとこじゃん、それ。



「ねぇ、狂夜……ちょっと血を吸わせ「いいよ」


 即答ですか。



「ほら、アレだろう……? 首の方からいくのがいいと聞いたことがあるからね、さぁ……いつでもいいよ」


 なんかノリノリで逆に怖いな……とは思いつつも、喉が渇いたような感覚に襲われた私はいつの間にやら彼女の首筋に噛み付いていた。



「……どう?」

「…………」


 ごめん、ちょっと今口開くとアウトな言葉が大量に溢れ出てきそうだから……一旦無言で通させてもらおう。


 いや、これ……すごい……

 なんていうんだろうな、味っていうより魂に直撃してくる衝撃って感じだ。

 まず、最初の一口。舌に触れた瞬間、口に広がるのは鉄の匂い。しつこさは無く、ふんわりとした感触がビッグバンのように広がっていく。温度は体温より少し暖かいくらいで非常に丁度いい、吸血鬼の好みを分かっている感じの温度だ。質感はサラサラとドロドロの中間、言うなれば生きた絹のような、綿のような……液体のくせに、舌を撫でていくたびに感じ取れる“流れ”っていうの? そういうのがあるんだよね。それが自然と口の中に……まるで自分から飛び込んでくるかのように流れ込んでくる。現実ではなく虚構のはずなのに、感じられるのは現実よりも素晴らしい血の味で……なんだ、この感覚は。もしかしてこっちが吸ってるんじゃなくて向こうが求めてるんじゃないか? いや、さすがにこれは勘違いも甚だしいかもしれないが、そう思わせてくるような血だった。すごい、なんだこの感覚は……これまで生きてきて初めてだ。こんなの中毒になってしまう。下の奥へと辿り着いた血から受け取った味覚という情報は“甘さ”……いや、これはもはや“快楽”と言ってもいいだろう。砂糖の甘さじゃない、命の密度がそのまま溶けた甘さだ。舌の表面に電流が走るみたいに、脳髄の芯まで突き抜ける。そのあとにほんの一瞬、柑橘のような酸味が追いかけてくる。狂夜の血、きっと流れが速いタイプなんだろうなぁ……普段は何を食べているんだろうか。いや、現実で食べているものとこっちでの血の味が関係ないのは分かってる。でもなんか想像しちゃうよね、いやぁ……やっぱり和食とか食べてるんだろうな。彼女の家もそんな感じだったし。そして、後味は驚くほどクリアだ。鉄臭さが消えるどころか、喉の奥に“光”が差す感じがある。あれだ、朝焼けをそのまま飲み込んだらこうなるのかもしれない。不思議と彼女の血を吸ってしまったことへの罪悪感はない。元から無いかもしれない。ただ、無限に続いてほしい幸福感だけが残る。噛み締めるたびに、心臓の拍動が共鳴する。私の彼女の鼓動がひとつになるような、共鳴するような、まるで性行為をしているかのような……この身体は男性器なんて付いていないが、もし付いていたらそれは確実に……と考えていたその瞬間、視界が滲む。光が滝みたいに流れ込み、世界が赤と白の境界線で満たされる。れる。———ああ、これが本物の吸血か。おそらく真祖の吸血鬼もこんな血を飲めたことはないだろう。私は文明によって作られた究極の血を味わい、そして歓喜の涙に震えた。





「…………」

「え、えっと……なんで無言なんだい……? 感想とかは……?」


 おいしいです。






◇ ヨイタウ王の金字塔———地下9階



「【虚空撃】……ほら、アステリア! そっちはお願いね!」

「【悪剣の乱舞ダンス・オブ・アソード】……ほい、これで終わり」


 爆発する6本の剣。包帯まみれ、ボロボロのゾンビがその身体をポリゴンへと変えていく。



 狂夜はレベル60程度のはずだが……それでもこの辺りで普通に戦えているのはどういうことなんだろうか。ちょっと気になるな。



「うーん、多分キミと出会ってから獲得したスキルの影響かな……これなんだけど」


 そう言って、狂夜はスキル説明を共有する。



—————————————————————

オリジンスキル【灰永ノ世界(アシェルネ・)ヲ照ラス光(アークレイシア)

消費MP:100

CD:5m

《常時発動能力》

・自身の【高揚】(隠しステータス)に応じて全ステータス、最終ダメージ、最終被ダメージ軽減を強化する。

《能力》

・灰色の流星による物理・光・霊・悪・天属性特殊ダメージを与える。このダメージは現在の【高揚】に応じて強化される。

—————————————————————



「どうやらこのスキルの強化幅は結構高いらしくてね……今までの3倍くらいは強くなってる気がするよ」


 ……なるほど。



「ところで、そのMP使って発動できる能力の方はどんな感じなの? MPポーションあげるからやってみてよ」

「ふむ、分かった。やってみようか……【灰永ノ世界(アシェルネ・)ヲ照ラス光(アークレイシア)】」


 狂夜が指を遠くのモンスターに向ける。その先端に灰色の光が収束し———



「あっ」

「えっ?」


 暴発した光が、私を含めた周囲のすべて———半径500m程度を消し飛ばした。





 まぁなぜかBloodは1で止まったのでギリギリ死ななかったけど……これ威力高すぎない? 雑に100MPでぶっ放していいものじゃないでしょ。隕石1発分くらいの威力あるじゃん。



「ふふふ……いや、思ったよりも凄いねこれ……ちょっと制御できなかったよ……」

「いや、大丈夫だよ。パーティメンバーのセーフティ的な何かはあったらしいし……初めから分かってればこっちで対策できるからさ。じゃんじゃん使っていいよ」

「そう? なら分かったよ。じゃんじゃんバリバリ使っちゃおうか」


 バリア魔法7枚ぐらい貼れば大丈夫かな……?



「お、アステリアちゃん。あそこが……」

「む?」


 そう言って彼女が指さしたのは、先ほどまではモンスターがひしめいていた空間の先……黒ずんだ大部屋の奥の扉。


 完全に閉じていたその扉が、大きく音を立てて少しづつその奥の姿を見せ始める。



 私たちは2人揃ってその扉へと歩みを進め……


 扉の奥で、磔にされた男を発見した。

 なんだ、男か。

 美少女がよかったな……

 

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