ある宇宙飛行士のイタズラ(おまけ)
月面の落書きを消してくる。
そのために宇宙飛行士たちが月へと向かった。
三人の内、二人が月面に着陸する。
そして、ようやく落書きを消し終わった。
広々とした月の地面は今、まっさらになっている。「『ニューフロリダ・ハンバーガーズ』優勝!」という落書きは、完全に消えていた。
「手間をかけさせやがって」
そう言う宇宙飛行士の顔は疲れきっていた。
もう一人も同様だ。
「まさか落とし穴を用意しているとはな」
「しかも複数だし」
二人の宇宙飛行士は思い出す。
落書きを消す作業中に、何回も落とし穴に落ちまくった。
そのせいで、宇宙服が月の砂まみれになっている。
「落とし穴がなければ、もっと早く作業が終わったのに」
「しかし、俺たちはやり遂げたぞ。人類にとっての大偉業だ」
二人は笑顔になって、グータッチをする。
地平線の方を見る宇宙飛行士たち。
「すごいな」
一人が言うと、もう一人も言う。
「すごいな」
それしか感想が出てこない。
二人が見ている先には、地球がある。
宇宙空間にたたずむ青い地球だ。
「さて、予定していたミッションはすべて終わったし、あとは自由時間だな」
宇宙飛行士の一人が月面車から、金属の箱を降ろした。
「そろそろ教えてくれよ。その荷物は何なんだ?」
もう一人がたずねる。
「いい物だよ♪」
箱の外側にはスイッチがある。それを押すと、金属の箱が開いていく。
その中には――
「これって・・・・・・」
箱の中には、組み立て式の天体望遠鏡が入っている。最新式だ。ものすごく高性能なやつ。
「いいか、地球から月面の落書きを見ることができたんだ。それなら・・・・・・」
「そうか! 逆も可能ってわけだな!」
二人の宇宙飛行士はうきうきしながら、天体望遠鏡を組み立て始める。
「最初はどこを見るんだ? やはり、ナスカの地上絵あたりか?」
「えへへへ、まだ内緒♪」
天体望遠鏡が完成する。
それを片方の宇宙飛行士がのぞき込んだ。
そのずっと先には、地球がある。
しばらくの間、天体望遠鏡の調整作業をすると、
「よし、ここだ!」
もう片方の宇宙飛行士に天体望遠鏡を譲る。
「何が見えるんだ?」
「のぞいてみれば、わかるよ♪」
天体望遠鏡の中の丸い視界。
そこに見えているのは、野球場のスコアボードだ。メジャーリーグの試合中らしい。
試合は終盤で、『ニューフロリダ・ハンバーガーズ』が負けている。
「なるほど」
天体望遠鏡をのぞきながら、宇宙飛行士はつぶやいた。
月面からの野球観戦。
人類はまた新たな一歩を踏み出した。
ご愛読ありがとうございました。




