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野球はスリーアウトから  月見草シーズン  作者:


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18/31

サプライズ

「すみません。おそくなりました」


 一人の選手がグラウンドにんでくる。


 集合しゅうごう時間じかん大幅おおはばぎているが、監督かんとくもコーチも文句もんくを言わなかった。この選手がおくれてくることは、その理由りゆうふくめて、球団スタッフからいている。


 おくれてきた選手が全体ぜんたい練習れんしゅう参加さんかしようとすると、


「ちょっといいでしょうか」


 球団スタッフがにこにこしながらちかづいてくる。


突然とつぜんですが、今日きょう試合しあいまえに『ホームラン競争きょうそう』をすることになりました」


 いつもの試合しあいまえに、こんなことはやっていない。が、サプライズのファンサービスだという。


 りょうチームから一人ずつ選手を出して、「何本ホームランをつのか」をきそうのだとか。


「で、監督かんとくやコーチとはなった結果けっか、あなたに出てもらうことがまりました」


 球団スタッフの言葉ことばに、選手はまどう。


 自分がプロになってったホームランのかずは十本少々。このチームには、もっとたくさんっている選手が何人もいるのに、どうして・・・・・・。


 ひょっとして、遅刻ちこくしたばつだろうか?


 とにかく、まってしまったものは仕方しかたがない。はじをかかなくてむように、おおいそぎで素振すぶりをかえした。


(せめて一本はホームランをとう)


 バットをちからづよいていく。


 そうやっているうちに、試合しあい直前ちょくぜんになった。


「いきなりですが、これより『ホームラン競争きょうそう』をおこないます」


 場内アナウンスがげると、客席きゃくせきからは歓声かんせいがった。いつもはやっていない、サプライズのファンサービスだ。


 選手が味方みかたベンチを出ようとすると、球団スタッフがこえをかけてくる。


「こっちが先攻せんこうです。ホームランをたのみますよ」


 勝負しょうぶ十球じゅっきゅうだ。ちやすいところに味方みかた投手ピッチャーげてくれるので、目指めざせホームラン!


 選手は集中しゅうちゅうした。


 はじをかきたくない。そして、今日はそれ以外いがいにも、「どうしてもちたい理由りゆう」があった。


 その結果けっか、どうにか二本のホームランをつことができた。


 しかし、つぎ相手あいてばんだ。所属しょぞくしているチームこそちがうものの、おな高校こうこう出身しゅっしん先輩せんぱいで、プロでもゆびりのホームランバッターである。


 こっちは二本なので、さすがにつのはきびしいかも・・・・・・。


 ところが、先輩せんぱいりきみすぎたのか、ホームランを一本しかてなかった。


 見事みごと勝利しょうりした選手のもとに、野球のボールが一個いっことどく。


 二本のホームランのうち最初さいしょったほうのボールだという。外野がいやせきでキャッチしたおきゃくさんから、スタッフがゆずってもらったのだとか。


 選手がボールをると、場内アナウンスがながれた。


第一子だいいっしのご誕生たんじょうおめでとうございます」


 選手はおどろいた。こんなアナウンスをするとはいていない。


 客席きゃくせきから拍手はくしゅこる。


 選手はれくさくなって、周囲しゅういかってお辞儀じぎをしまくった。


 遅刻ちこくした理由りゆうは、病院びょういんっていたからだ。つま出産しゅっさんに立ちっていたのである。


(ひょっとして、今日きょうのホームラン競争きょうそうって・・・・・・)


 選手は手の中のホームランボールを見ながらかんがえる。これはサプライズに使つかえそうだ。明日あした病院びょういんるので、つまどもにいプレゼントができたかも。


 そして、翌日よくじつになる。


 選手は病院びょういんつまに、昨日きのうのことをはなしていた。


「これが、そのホームランボールだよ。『ホームラン競争きょうそう』でったやつ」


 さらにボールをもう一個いっこり出すと、選手はほこらしげに言う。


「で、こっちは昨日きのう試合しあいったやつ。サヨナラホームランのボールだよ♪」


次回は『守備シャッフル』というお話です。

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