プロ野球の英会話教室
アメリカのメジャーリーグに挑戦したい、というプロ野球選手が近年増えている。
そんな中、自球団に所属している選手の「メジャーリーグ挑戦」に、前向きな球団があった。
たしかに、優秀な選手や人気の選手に出ていかれるのは痛い。戦力的にも、経営的にも。
しかし、その選手がアメリカでどこまでやれるのか、日本の野球がどこまで通用するのか、それを見てみたい。そうした選手たちが活躍することで、あとに続く者たちの道も広くなるし・・・・・・。
そんなわけで、いずれ渡米したい選手たち、彼らを応援するために、この球団では希望者への『英会話教室』を開いていた。
プロ野球選手は基本的に、「野球づけ」の日々だ。試合があるし、練習もある。遠征も当たり前だ。
そんな中、普通の英会話教室に通うのは難しい。
そこで、球団がサポートすることにした。球場の中に教室を設置。遠征の時には現地に先生を派遣する。マンツーマンの指導により、個人の実力に応じた、きめ細かい教え方が可能だ。
とはいえ、選手たちは日々、本当に忙しい。人気の選手だと、試合や練習の他に、CMの撮影もあるし、雑誌のインタビューもある。英会話の勉強に使える時間は限られていた。
なので、教える内容もかなり厳選している。
日本人メジャーリーガーが使いそうな会話、そういうものに特化していた。
たとえば、次のような台詞だ。
――もしも日本に帰るとしたら、自分を育ててくれた球団に恩返しをしたい。
これを英語にした内容を、先生が発音するので、選手もマネをする。
こうやって反復練習をしておけば、アメリカに行っても安心だ。とっさの時にきっと、さっと口から出るはず。
たとえ選手が苦笑いをしようとも、先生は気にしない。真顔で授業を続ける。
――引退試合をするなら、自分を育ててくれた日本の球団でと決めている。限定グッズの販売など、金銭的な意味で恩返しをしたいんだ。
他に、こんな台詞もある。
――マイナー落ちが決まった? でも、君は抑えにぴったりだ。日本のプロ野球に興味はないかい? 良い球団を知っているよ。
とはいえ、変な台詞ばかりではない。普段からよく使うような台詞も、ちゃんと教えてくれる。なので、選手たちからの評判も上々だ。
そして、このノウハウを活かした商品を、このたび製作。全国のプロ野球球場で販売することにした。
高校生向けの『英単語帳』である。
この『英単語帳』はかなり個性的だ。
受験英語? それはあきらめろ。そういう視点で収録単語を選んでいない。
その代わり、将来メジャーリーガーになりたい高校生たちのために、アメリカでのプロ生活や日常生活でよく使うであろう英単語を厳選した。
今から少しずつ勉強しておけば、いざという時にも安心だ。球団OBの日本人メジャーリーガーたちからも、「お墨付き」をもらっている。
こうして、「大学入試にはたぶん役に立たない、ある目的に特化しすぎた『英単語帳』」が全国で販売された。
未来のメジャーリーガーたちへ、「Good luck!(幸運を祈る!)」。
次回は『これが大事』というお話です。




