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〜勇者パーティ増える!?〜


きらきらと光る星に

冷たい夜風が肌を掠める。


「これからの夜はブレイトくんと

逢瀬だと思うと疼くもんがあるよねぇ♡」


「お黙り下さい、このサイコパス」


「残念♡サイコパスじゃなくて

サキュバスでぇす♡♡」


ああ、どうしてこうなった。

天を仰いでため息をついても

何も解決しないのだが。


つい先程、宿屋で

パーティに加わる宣言をした

この変態サキュバスに

ハーフマオリエは意外とあっさり

OKを出してくれた。

但し、

昔魔王の執事をしていた奴のところへの案内まで

という期間内でのOKサインだった。


「いいじゃん、減るもんじゃないし?

ボクの食料調達だと思って

1回だけでもセッ」


「言わせねぇよ!?てかそれ

俺じゃなくても良くない!?」


禁止用語をサラッと言おうとした

ヴァンに俺が叫ぶように言うと

えー、と渋ったようにヴァンが

唇を尖らせた。


「ボク勇者としたことないから

興味あってさぁ♡

ね?いいでしょ?」


こいつといると俺の貞操が色々

危なそうだ。


「なあハーフマオリエ。

サキュバス用のお守りの札とかないの?」


俺がさり気なくハーフマオリエに

助けを求めるとハーフマオリエは

表情ひとつ変えずこちらを見た。


「今はないけど、作れば出来るよ」


「マジか!?流石天才魔導師!!

ハーフマオリエたんマジパネェ!!」


「急にどうした」


俺のテンションの高さに

一瞬哀れみの顔をした

ハーフマオリエだったが

合点がいったのか

ふう、と軽くため息をつく。


「早めに作っておくわ」


「ああ〜、ハーフマオリエたんまじ天使ぃ」


「ちょっとお、ボク置いて

いちゃいちゃしないでよ〜」


「お前のせいだからね!?」


夜空の下、街から出た俺たちは

森の奥にあった滝まで来ていた。


「さて、勇者様のツッコミが激しい中、

これから魔族の住む魔界に行くわけだけど」


急に雰囲気の変わった声のトーンになると

ヴァンはにやっと笑った。


「その前に、色々設定決めて

置いた方がいいと思うんだ」


ヴァンの言葉に設定?と

首を傾げる俺にハーフマオリエが口を開く。


「勇者です、って言って魔界を

歩き回ったらどうなる?ってことだね」


「ご名答」


ヴァンがハーフマオリエの言葉に

満足そうに頷く。

つまり、魔王の支配下である

魔界で勇者だとわかるような姿で行けば

敵とエンカウントしまくって

厄介だということらしい。


「なるほどな。

で、具体的にはどういう設定が

魔界だと普通なんだ?」


「主に多いのは人身売買で

買った子って言えば納得して貰えるかな。


だから……ね?」


ヴァンがニヤニヤしながら

怪しい笑みで手に持っているのは

首輪と手枷と鎖&足枷に錘。

あ、なんかトラウマが……。


「それは無理!!無理無理無理!」


俺が顔を真っ青にしながら

首を横に振りまくっていると

ヴァンはケタケタと笑いながら

覚悟決めなよ〜、と迫って来る。


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!?」


俺の叫びも虚しく、

俺はあの人身売買のオークション以来、

首輪やらのオプションを

つけられてしまった。

もう二度とつけないって思ってたのに。


「ブレイトくんは、ボクの餌やりって名目だと

1番安全かな♡♡」


「お前わざとだろ!?わざとやってんだろ!?」


俺が半泣きの状態でいると

ヴァンは更ににやっとした。


「ついでに服も着替えようね〜♪」


「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」


勇者用に、と王様から貰った

鎧とか剣はハーフマオリエの

魔法の鞄(だいたいなんでも入るやつ)に

片付けられて、俺がヴァンに着替えされられたのは

亀甲縛り風な黒貴重の

恥さらし状態装備に網タイツ。

ふざけんな。

これに首輪に鎖だぞ?

なんのプレイなんだ。


「魔界で流行の『理非知らずの鎧』だよ♪」


「そんな鎧あってたまるか!!」


魔界の流行どうなってんだ。

一方でハーフマオリエは何故か

古典的なメイド服風な格好だ。


「なんでハーフマオリエはメイド?」


「ボクのお世話してる設定?」


「あー」


ヴァンの言葉に妙に納得してしまう。

先程まで魔導師装備全開だった

ハーフマオリエは今やどこからどう見ても

立派なメイドさんだ。


「話し方とかは丁寧語の方がいいの?」


「まあそうだね。出来そう?」


「はい。お任せ下さい」


「ハーフマオリエたん超合ってるよ♡」


「たん、はおやめください。」


不愉快です、とボソッと言った

ハーフマオリエはめちゃくちゃメイドさんだ。


「ヴァンさん?ちなみに俺は?」


「ブレイトくんは豚みたいに

鳴いてればいいよ?」


「ぶひぃ……」


俺が絶望していると、

ぶはっ、とヴァンが吹き出した。


「冗談だよ!

ブレイトくんはなるべく話さないこと、かな。

魔界で人身売買で売られた子たちって

大概絶望した表情してて、

話さなくて、下向いてる子が多いんだ。

だからブレイトくんは

なるべく床見ながら様子見って感じかな」


「なるほどな」


「あと魔界入ってからは

基本四つん這いで行動して貰う感じに

なっちゃうからよろしくね」


ヴァンのにこやかな台詞に

言葉を失いつつも

ハッとした。


「それじゃあ話したい時は

どうするんだ?」


「それは大丈夫」


ハーフマオリエが

メイド服の何処に隠していたかは知らないが、

手に持っていたのはピアス。


「これが私のピアスに通じていて

声を出さなくても意思疎通が可能なの」


ハーフマオリエが黒い髪をサラッと

耳にかけると右耳には

確かに赤い宝石のピアスがあった。

だが、それよりも。


「……ハーフマオリエたん、ひとついいかな?」


「たんはやめて」


「ごめん、じゃなくて。

俺ピアス、あけてないんだけど」


「今あければ?」


いやいやいやいや!と俺が後ずさるも

ニヤッとしたヴァンが面白がって

俺を取り押さえた。


「まじで勘弁してください!

ピアス怖い!痛いでしょ!?痛いやつじゃん!」


俺が暴れると共にヴァンの

大きな乳房が俺の背中に押しあたって

俺の俺が反応しかけたが、

目の前にあるピアスの恐怖に

一瞬でそれどころじゃなくなる。


「一瞬だから」


「先っちょだけだからぁ♡」


「一瞬でも嫌だ!

ヴァンてめぇ後で覚えてろ!!」


真剣なハーフマオリエの顔が近づくし、

ヴァンはふざけまくってるし、

傍から見たらカオス過ぎて敵モンスターも

見たら後ずさると思う。


キン、と冷たい感触が

俺の左の耳たぶを襲うと

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!と情けない叫び声を上げる。

じんじんとした感触が耳たぶを刺激すると

じっと俺を見つめる

綺麗過ぎるハーフマオリエと目が合う。

あ、ハーフマオリエの目の色、

宝石のマスクラバイトに似ている。

黒くて、きらきらしていて……。


「……もう、大丈夫だよ」


ハーフマオリエが

手鏡を俺に見せると

確かに左耳にピアスがついていた。

赤くて丸くて、きらきらしたピアスだ。


「……い、たくなかった」


「誰も痛いから我慢して、なんて

一言も言ってないでしょ。


やるからには痛くないようにするよ」


「ハーフマオリエたぁあん!すき!!」


「あ!ずるい!ボクも!!」


意味もなくハーフマオリエに抱きつく

俺とヴァン。

ハーフマオリエは満更でもない顔だ。


「大まかな設定も決まったことだし、

そろそろ魔界へ行きますよ」


「そうだな。どうやっていくんだ?」


「ああ、ゲートだよ」


ヴァンが指差すのは夜空。


「ゲート?」


「魔界の入口のことだよ。

特別な条件を満たした奴しか開けないんだ」


ヴァンはそう言うと

今度は滝に向かって指差す。

すると滝はゆっくりと音を変えながら

カーテンのように開いた。


「特別な条件って?」


「魔族だけが入れる専用ゲートに、

魔法使いが許可的に開けたゲート、

魔術師共が勝手にこじ開けたゲート。

ゲートにも色々あるから

特別な条件もたくさんあるよ。


もちろん、

ハーフマオリエたんも知ってるだろ?」


ヴァンが説明しながら聞くと

ハーフマオリエは少し目を細めた。


「説明する義務、あるかしら?」


「んー、ブレイトくん次第かな?

ボクら仲間だし?」


ヴァンがからかうように俺を見る。

ハーフマオリエの顔を見ると

少しだけバツの悪そうな顔をしていた。


「……また今度教えてくれ。

とにかく今は、魔界に行こう。」


「ふふっ、そうだね。

それじゃあ

ブレイトくんはボクのペット設定。

ハーフマオリエたんはボクのメイド設定。

ちゃんと守ってね!」


「あー、そういえばそうだった……」


俺のシリアス返せ、とでも言うように

ガクッと膝から崩れ落ちた。


「それじゃあ行くよ?」


ヴァンがそう言うと、

今までなかったはずの黒い大きな羽根が

ヴァンの腰辺りからバサッと音を立てて

いきなり生えたと同時に

今まで亜麻色の長い髪の毛が

輝く金色に頭から毛先まで変わっていく。


《ゲート》


ヴァンがそう言うと

何もなかった崖が黒く染まって

禍々しい渦を巻いた暗闇が出来た。


「入るよ?ブレイトくん四つん這いね」


「やめろ!追い討ちかけるな!」


「おしゃべり禁止ですぅ〜」


俺の訴えも虚しく、ヴァンが茶化すように言い放ち

俺は諦めて四つん這いになって

まるで犬のように這っていく。


『ブレイト聞こえる?

意思疎通出来てればいいけど』


ピアスから聞こえたハーフマオリエの声に

ハッとしてハーフマオリエの顔を見る。


『き、聞こえてるよ……。

これ、すげぇな』


『良かった。あんまり強く使うと

心の声とか漏れちゃうから

気をつけて使ってね』


『お、おう』


ハーフマオリエの言葉に

少し躊躇しつつも

ゲートをくぐって行った。





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