〜魔界へLET'S GO!!〜
チャリチャリ、と鎖の音が鳴る。
俺はヴァンに言われた通り
なるべく床を見ながらの四足歩行中だ。
俺の後ろではメイドの格好をした
ハーフマオリエが上品について来る。
そして俺の横にはやけに上機嫌なヴァン。
「それでさぁ、気に入って買っちゃったの♡
衝動買いしちゃったわあ♡♡」
「やだあ〜、太っ腹なのねぇん♡」
くそ、なんだこの昼下がりの
おばちゃんたちのような会話は!
ツッコミてぇ!
ちなみにヴァンは
昔魔王に仕えていた執事のところまで
の案内中に何度かこうして他の魔族と
情報交換という名の世間話に身を投じている。
それにしたっても。
「ほ〜んとかわい〜わねぇ〜ん♡
食べちゃいたいくらい♡」
「あーん、ダメだよぉ!ボクのなんだから!」
このヴァンとさっきから喋ってる魔族
おっさんじゃねぇか!
あれか!?オカマか!?オネェか!?
俺がプルプル震えていると
不意にピアスからハーフマオリエの声がした。
『大丈夫?』
『大丈夫じゃない、ツッコミたい……』
なんだこれは、と戸惑いつつも
俺はヴァンにさっさと案内してくれ、
と心の中で願った。
「ご主人様。そろそろお時間です」
「あれ?もうそんな時間?
それじゃあまたね、マスター!」
「また遊びに来てねぇ〜ん♡」
ハーフマオリエの言葉にヴァンは
魔族のおっさんと別れを切り出すと
おっさんはにこやかに去って行った。
「ハーフマオリエたんやるね〜。
いかにもご主人様にこれから
外交でもあるのかの言い回し♡最高♡」
「それはそれはなんとも僥倖なことで
よろしゅうございました」
ハーフマオリエはいけしゃあしゃあと
嘘をついたらしい。流石だ。
最も、案内してもらわないと
俺らも来た意味ほとんどないみたいな
ものだから助かった。
グッジョブ、ハーフマオリエたん俺の嫁。
「じゃあ行きますかね〜。
ごめんね、もうちょっとだけ歩くよ〜」
たぶんヴァンは俺に対して言っている
のだろうが何せ返事が出来ないので辛い。
俺は変わりに少しだけ頷くと
ヴァンはわかったようで満足げな顔をした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
魔界の外から屋敷内に入ったのか
急に床がふかふかのカーペットになった。
ここまで石造りの道とかが多かったから
正直ものすごく助かった。
しかもほぼ裸に近い格好だったので
寒かったのだがここではそうでもない。
「寒かったでしょ?
ここなら大丈夫だからね〜」
ヴァンは俺に気遣いながらも
俺のペースに合わせて歩いてくれた。
「ご主人様。ところで今からお会いに
なられる方とのお約束はされたのですか?」
「いや、まったく」
ハーフマオリエの質問に
ヴァンはけろっとした顔で答えた。
「それは如何なものかと。
きちんと書面でご確認されなくては」
「大丈夫大丈夫〜。
ボクがこういうのって知ってるからさ〜。
本当にハーフマオリエたんは
真面目なんだから♡
ますます好きになっちゃう♡」
ハーフマオリエのプチ説教に
ヴァンはにやにやしているが
ハーフマオリエは訝しげな顔をしていた。
無表情なハーフマオリエのレアな顔、
またゲットだぜ。
「もしかして、ヴァン?」
声のした方をチラッと見ると
双子の兄妹らしい魔族がいた。
「おひさ♡」
「来るなら来るって連絡して欲しいの」
「ごめんね?たまたま通りかかったから
顔見に来た感じなの」
ヴァンの軽いノリに兄妹の兄の方が
ため息をつくと部屋の扉を開けた。
「またペット買ったの?
前のはどうしたの?」
「すぐ壊れちゃった♡
やっぱり人って壊れやすくてさ〜」
サラッと怖いことを言ったヴァンは
兄の方に勧められてソファに
ぼふっ、と座った。
その後ろに控えるハーフマオリエに
俺はどうしていいか戸惑った。
俺のこのまま四つん這いでいいのか?
とか思ってたら頷くがにこやかに笑った。
「ポチ♡伏せ♡」
ふかふかのカーペットを指さして伏せ、
ということは床に寝転がれ、と。
俺は戸惑いながら床に突っ伏すと
ヴァンがよしよし、と俺の頭をなでる。
俺は犬か。
「そのペット気に入ってるの?」
「うん♡イチオシ♡」
世間話をしていると
いつの間にかいなくなっていた
ハーフマオリエと魔族の妹の方が
お茶とお菓子をワゴンに乗せて戻って来た。
「アフターヌーンティーは
お済みでしたか?」
「ううん、これからなの。
ありがとう。
今回のヴァンのメイドさん、当たりみたいのね」
「でしょ〜?」
ハーフマオリエが慣れたように
華やかな陶器にポットから紅茶を注ぐ。
ハーフマオリエ、料理は絶望的だけど
用意されてるとやれるとこあったんだ。
「本日のアフターヌーンティーはアッサムを。
セットは奥からショートブレット、
パウンドケーキ、マドレーヌ、フィナンシェ
でございます」
ハーフマオリエがつらつらと説明すると
ヴァンはおー、と拍手をした。
「お砂糖とミルクはお使いに?」
「貰うの」
兄がカップを差し出すと
ハーフマオリエが砂糖とミルクを入れていく。
ヴァンはボクはお砂糖だけ貰うよ、と言う。
なんだこれ、優雅か。
「それで、ヴァンは本当は何しに来たの?
本当にただの顔出し?違う気がするの」
兄が妹を横に座らすと
自分の飲んでいたカップを渡し
妹はナチュラルに飲んでいた。
「いや〜、やっぱりわかっちゃう??
さすがだねぇ〜。
じゃあ仕方ないから単刀直入に聞くとするよ。
前、君たち魔王様の直々執事してただろ?
ぶっちゃけ今どうしてんのかな〜ってね」
ヴァンが早々に本題を持ち出すと
兄がやれやれ、とため息をついた。
「魔族たち皆が知ってるから
君も知ってると思ってたけど、
君、今まで何してたの?」
逆に質問を返されてしまったヴァンが
たはは、と少し照れくさそうに笑った。
「実はさぁ、
人間界の人身売買にハマっちゃってさ〜。
そこでお金持ちに買われて
生気食い散らかして
金目の物巻き上げて贅沢暮らししたり、
逆に買われた方ペットにしたりして〜。
あとは一緒に人身売買されてる子が
好みだったら一緒に逃亡する変わりに
生き血飲ませて貰ったり。
色々やっちゃってたら
いきなり魔界の噂で君たちの引退話を
聞いて来ちゃったわけ♡」
ヴァンの説明に、
だからヴァンが人身売買の会場にいたのか、
とここでようやく合点がいった。
じゃあヴァンは自分の趣味で
オークション会場にいたのか。
なんつー悪趣味な……。
「なるほどね。
君、しばらく魔界で見ないと思ったら
そんなことして遊んでたのね」
やれやれ、と言いながら笑う兄は
どこか女の子みたいな笑顔に見えた。
「じゃあヴァンの為に説明するよ。
僕らが何故、
魔王様の執事を引退したかの説明を」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「僕ら執事は
魔王様に仕えて500年。
年に何度か伝説の勇者が
人間界の各国々の王様の命令で
魔王様を倒しに来たけど、
魔王様は敗れることはなかった。
だから僕らも魔王様のお側にいれた。
だけど、近年に来た勇者は
とてつもなく強くてね。
魔王様は基本的な魔法やら剣術も
本来元来は全部無効化出来るんだ。
それでも魔王様は
その日来た勇者に負けた。
魔王様の身体は朽ち果てて
魂だけがバラバラに砕けて、
この世界の何処かにある。
だから人間界や魔界で
魔王様らしき姿が見えたって
話が出て来たって噂なのは
その魂の破片のひとつかもしれないし、
そうじゃないかもしれない。
実際僕らも見たわけじゃあないからね。
僕らが引退したのは
魔王様が今いないっていうのと
魔王様の力で大人の魔族の格好してたけど
今はその力もなく子供の姿になっちゃったから
仕事がしようがないからだよ。
わかったかな?」
「それじゃあ最近
人間界で聞いた魔王様討伐って
人間界側の王様が魔王様の魂見て
魔王がいる!退治しろーっ!
ってこと?」
「恐らくそうだろうね。
人間界側は魔王様が消滅したのも、
勇者が亡くなったのも
知らないだろうから」
「なんで知らないんだい?」
「魔界じゃ皆知ってるけど
勇者は自滅して、
魔王様を道づれにしたから
どっちもいないし、
亡くなった勇者はパーティ
組んでなくて1人で来たからね。
噂は魔界で止まってるってわけ」
ヴァンと魔族の少年の話を聞いて
俺はじゃあ今まで何の旅をしていたんだ、
と心底思った。
「それで、魔王様は復活するのかい?」
「どうだろう。
今は魂のまま
どこかにいるらしいから、
身体さえ見つかれば
魔界にも人間界にもいるのかも。
ただ、それがどこの
誰だか分からないけどね」
「なるほどね〜。
じゃあ近々ボクら人間派閥の
悲願も叶うのかね〜?」
紅茶を飲みながら話を
していると不意にヴァンが試すような
口調で話し始めた。
「……人間側、次第じゃないかい?
ここ最近、魔界は魔王様が
消滅されてからは
魔王派閥は勢力を失いつつあるから。
だから僕ら人間派閥が
本気を出して魔王派閥を
うまくまとめることが出来れば
悲願は叶うと思うよ。
大変だとは思うけどね」
「やっぱそうなるよね〜」
紅茶を飲み終えたのか、
ヴァンは重たい腰を上げて
うーん、と伸びをしたせいか
何処からか彼女の尻尾も伸びをしていた。
「ま、ボクらの派閥が動きそうな時は
使い魔でも送ってよ。
出来ることの限りは尽くすからさ」
「そうしてくれると助かるの。
……人間界は楽しかったかい?」
「それなりに〜」
ヴァンに
おいとまするよ〜、
と声をかけられて四つん這いの体制に戻ると
ハーフマオリエもヴァンの後ろから
ついて来た。
「また来てよ。
僕らは大体この屋敷にいるだろうから」
「知ってるよ、だから来たんだし?」
ニヤッとしながら
ウインクしたヴァンに
魔族の兄妹は手を振りながら笑った。
こうして俺たちは
魔族の兄妹の屋敷を後にするのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ブレイトくん大丈夫〜?」
「大丈夫じゃねぇ!
膝も肘も色々身体中痛いんだけど!?」
「あーゆうプレイは初めてだったもんね♡
またいっぱいしようね♡」
「誤解を招く言い方やめて!?」
俺たち一行は魔界にあるヴァンの家に来ていた。
早々に魔界対策の設定衣服を脱いで
今は身体中を労わっている最中だ。
「1日四つん這いはキツい……」
俺がソファでだらけていると
ハーフマオリエもメイド服は疲れたのか
俺と同じくラフな格好をしていた。
「怪我したとこ見せて。
薬品塗って治るところはするし、
治らないとこは回復魔法するから」
「ハーフマオリエが天使に見える〜!
お迎えが来たよおお!」
ふええ、と咽び泣くように
ハーフマオリエに泣きつくと
ハーフマオリエは
いいから身体見せて、とあしらって来た。
ハーフマオリエたんまじツンデレかわゆす。
「でもまさか魔王がいないなんてな」
「正確には魂だけの状態、が正しいけどね」
俺がポツリと呟くと
ハーフマオリエがそれに応えながら
俺の肘やら膝やらの外傷に
薬草を錬金した薬品を塗っていく。
「ボクも驚きだよ〜。
あ、人間界に戻るの
魔界で朝日が登ってからでいい?
ゲートって結構魔力消費すんの。
回復するまで休憩ってことで」
ヴァンはベッドにダイブした状態で
ゴロゴロしながら言う。
「タイミングは任せるぜ。
つーか、これからヴァンは
どうするんだ?」
「ボクは1回魔界の人間派閥と魔界派閥が
どんな感じになってるか確認してから
人間界に戻って情報収集かな?
ブレイトくんとハーフマオリエたんは
どうするつもり?」
ヴァンに言われて
どうするかな、と呟いた。
正直さっきの話を聞くと
どうにもやる気が出ない。
今までの自分を全て否定されたみたいだからだ。
「私はブレイトについていくよ」
ハーフマオリエは治療を終えたのか、
薬品を鞄に戻しながらサラッと言った。
ハーフマオリエたん、イケメン。
「もう俺ハーフマオリエたんと
結婚してどっか
田舎の隅っこで暮らそうかな……」
「ええー、何それずるいー。
ボクも混ぜて♡
後妻でいいからさ♡」
「何言ってんだこいつら」
俺の冗談にヴァンは乗っかる形なので
ハーフマオリエは無表情で
軽く毒を吐いた。
あ、この感じ懐かしい。
「とりあえず人間界戻ってから考えるかー。
今日は疲れたし、
ヴァンが魔法使えるまで休もうぜ?」
俺がやる気なさげに言うと
ヴァンがニヤッとした。
「賛成、賛成♡
ボクの家に泊まっていきなよ♡
ついでにブレイトくんの童貞も頂戴よ♡」
「ち、ちゃうわ!童貞ちゃうわ!!」
ヴァンの誘惑に俺が赤面しながら
全否定した。
「あ、そういえばこの間
ブレイトが言ってたお守り作ったよ」
「まじかハーフマオリエたん神!」
ハーフマオリエは最近
俺とヴァンがたん、と付けること
に対して何も言わなくなった。
諦めたらしい。
ハーフマオリエから渡されたのは
ブレスレットだった。
「これ、淫魔とか夢魔とかの
誘惑に耐えれるブレスレット。
ちなみに御加護的なお守りは
材料の関係上、難しかったから
まだつかないけど
材料さえあれば可能になる」
「なるほど……。
ちょっとヴァン、誘惑してくれ」
ブレスレットをつけて
ヴァンに頼むと
えー、と悩んだ声をあげた。
「それつけてするんなら
せめてなんか賭けさせて?
ブレイトくんが耐えたら
ボクが何か君の命令聞くよ。
ボクがブレイトくんに誘惑出来たら
ブレイトくんがボクの命令聞いて?」
ヴァンがニヤニヤと怪しい笑みを
浮かべながら言う。
俺はこくり、と頷いた。
「ふーん、いいんだ?
それじゃあ誘惑するよ?」
ヴァンがおもむろに俺の上に跨り、
亜麻色の髪の毛を長い耳にかけて
頬を赤らめさせ、更には目を潤ませた。
そして次の瞬間……
彼女はバサリ、と上の服を脱いだ。
「!?!!?」
俺が赤面すると同時に
ブレスレットが反応して
俺は瞬間的に真顔になるも
ヴァンは手強かった。
更に俺の股の近くまで腰を低く落とし、
両腕で豊満な胸を押し寄せて
俺の腕を掴んで、更には俺の指を舐めた。
「ほらぁ、ブレイトくんの、
好きにして♡いいんだよ??」
ヴァンが身体中使って誘惑して来るのが分かる。
俺はもう赤くなったりブレスレットの力で
真顔に戻ったりで大忙しだ。
最終的にヴァンが自分の尻尾を
何処からともなく手で掴んで来たのが
いけなかった。
「ほら、ちょっとだけ擦ってみなよ?」
わけも分からず擦ると
あん♡だめぇ♡とか
そんな激しくしないで♡とか
禁止ワードが飛びまくって
ハーフマオリエに冷たい目で見られたのが堪えた。
「ストップ、ストップ!
もうこの勝負なし!
このブレスレットの効果見れたし!」
俺が叫ぶとヴァンがニヤニヤしながら
俺の顔を覗きこんだ。
「それはボクの勝ちってことでいいのかな?」
ヴァンの上機嫌な顔に俺が
屈服しそうになった時だ。
「そのブレスレットの効果を
最大限に生かせれた、
私の勝ち。
だからこの勝負、なし」
ハーフマオリエの声に
俺は感動で泣いた。
「ハーフマオリエ様ぁ、女神様ぁあ!」
「ぶはっ!ブレイトくん泣いてる!!」
「もう今日は休まない?」
咽び泣く俺と爆笑するヴァン、
疲れた顔のハーフマオリエ。
とにかく俺たち一行は
ヴァン宅に1泊し、朝1番に
人間界に戻ることになった。




