⒐
触れるだけのキスは、長い様で短い時間だった。
ゆっくり離れていく、透の唇を目で追ってしまう。
キスをした後の濡れた透の唇。
「もう一回して欲しい?」
透の唇をじっと見詰めていた所為か。
そんなことを聞かれてしまった。
恥ずかしさに顔が火照る。
「……、あかん」
「なんで?」
「もう一回されたら、今度こそ壊れる」
「何が?」
「そんなん決まってるやん。何回も言わすなや」
一意は自分の心臓を押さえた。
「心臓や」
その台詞に、透がぷっと吹き出した。
「なんで笑うんや?」
「今ものすごい告白を聞いた気がするわ。俺の気のせいやなければ」
「告白?」
「そう。さっきのキスで、どきどきしたんだろ? 心臓が壊れそうなくらい」
透の言うとおりだ。
確かにどきどきした。
キスでも。
視線でも。
その前言われた台詞でも。
「……うん」
「それは、俺のこと好きってことじゃないんか? なんとも思ってない相手なら、どきどきなんてしないやろ?」
透のことが好きなのは当たってる。
……告白。そうかも。
大胆なことを言ってしまったのだろうか?
「心臓が壊れそうなくらい、俺のことが好きと言う告白に聞こえた。間違ってはいないと思うけど?」
やっぱり。
今更ながら、自分の言った台詞の大胆さに泣きたくなった。
そんなこと聞かれても。
うん、と頷いてしまって良いものなのかわからない。
答えられない。
告白だと認めて。
透に今、拒否されたら。嫌われたら。
そう思うと怖い。
読んで下さりありがとうございます。