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「あのさ、今日声を掛けて来たやついただろ?」
「え?」
「さっき。帰り際に」
ああ、そう言えば。
一瞬、なんの話か分からなかった。
相手の顔を思い出し、
「うん」
一意は、そう言って頷いた。
「なんで一意に声を掛けてくるのか、分かった?」
不意に、こんなことを聞かれて分かるわけがない。
今のこの状況と。
なんの関係があるのか。
困惑して、透を見上げると、苦笑した顔が目に入る。
「透?」
なぜそんな顔をするのか分からない。
今日はここへ着てから、と言うか、来る前から疑問ばかりだ。
「やっぱり、分かってへんのか?」
「ええっと。うん。わからへん」
分からないものを隠しても仕方がないので、正直に答えることにした。
「俺と同じで、あいつも一意のことが好きなんや」
しかし、透の信じられない台詞を聞いて、耳を疑った。
「ええっ。嘘や」
「嘘じゃない」
やっぱり、分かってなかったか。と、透が小さく呟いた。
「それが、賭けの答え」
「なんやそれ。そんなん信じられへん」
思ったそのままの言葉が、口をついて出た。
なんで? あいつが好きって? 誰を?
「……分からへん」
「じゃないと、いくら一意が一緒だからって、良く知らないやつの家になんか行かへんやろ。俺に、一意のこと取られるんじゃないかと心配してたんや、あいつは。俺の気持ちにも気付いてた。だから、ここまで着いてこようとした。俺が睨んでなかったら絶対に来てわ。あれは」
「ええっと、その……。取られるって? 俺?」
「そう。お前。あいつは俺と同じで、一意のことが好き。分かった?」
「……信じられへん」
「じゃあ、どう言えば良い? 俺はさっき、ストレートに一意と一緒に居たいと言うことが出来るあいつに嫉妬した。だから不機嫌だった。それは、あいつも気付いてた。後で聞いてみたら良い。これでも、信じられないか?」
いきなりそんなこと言われても。
信じられるわけがない。
けれど。
透の不機嫌の理由はそんなこと?
本当だとしたら、ものすごく嬉しい。
「じゃあ、答え教えたから。一日一意のこと好きなようにして良いか?」
言いながら、透は下半身に触れてきた。
「俺の勝ちだろう?」
耳元で囁かれて、下半身を撫で上げられて。
全身が震える。
「や、……待って」
「まだ何かあるんか?」
「やって。その答えがあってるかどうか分からへんやん」
透の勘違いの可能性だってあるし。
そう、まだ負けたと決まったわけじゃない。
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(*´`)