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  ママチャリライダー。




 

 僕の記憶では其の名は恐らく此の国で一部の人間にとって有名である。

 五十年前に流行った特撮物の主人公の名だ。




 ジャンルは仮面を被ったヒーロー物。



 世界征服を企む秘密組織が存在する近未来。



 悪の秘密組織に改造された人間暁太郎。


 彼は脳改造される前に逃げ出し正義の為に戦いに身を投じた。


 強化されたママチャリを使い戦う彼は何時しかこう呼ばれた。






 ママチャリライダーと。







 何時終わるとも知れない戦いに終止符を打つべく彼は今日も戦う。





 という設定です。




 当時特撮ヒーロー物と言えばアニメでしか見られなかった。

 其れを帝都チャンネルが社運を賭け特撮で放送したのだ。

 其れは視聴率三十を超える人気作品になった。

 以降に十年かけ放送され続けた人気作品である。

 放送終了した後も熱心なファンが居たというからその人気は本物だ。



 続編を望むファンの声を聴き何度も続編が作られたらしい。

 相手はストレス獣と言われる謎の敵。


 其のうち主人公が交代した続編も作られるようになっとか。



 魔法少女物。

 仮面を被ったヒーロー物。

 戦隊物。



 今では日曜の定番番組である。



 その初代ママチャリライダーが居ます。





 目の前に。


「はあ~~」



 まさか現実とは。



 現実は小説より奇なり。




「どうした」

「いえ」


 そういいながら僕は御父さんが茶碗に入れた御飯を貰う。



 今日のおかずは……。



 金平ゴボウに沢庵其れにキャベツの千切り。

 豆腐の味噌汁は昨日の残りもの。

 後は自家製キムチです。



 冬の間に家庭菜園で作られた白菜で作られた代物です。


 其のままでは腐るので冷凍して保存した物を解凍して出してます。

 

「美味い~~」

「そうだな~~」

「御母さんは?」

「何でも学生時代の友人と飲みに行くと言ってた」

「はあ~~」


 食後の緑茶を貰う。



 美味い~~。



 我が家では肉中心の生活から野菜魚中心におかずに変えられてる。


 健康のためだ。


 家族全員高血圧の為こうしてる。



 最初は不満でしたが体の調子が良いので満足してます。





「ではなくてっ!」

「おおうっ!」



 御父さんの言葉に僕がが慌てる。


「何で怪人とか見て驚いてないんだっ!?」

「ゑ?」



 そういえば何で僕は驚いて無いんだろう?




 不思議だ……。



 普通なら取り乱すのに。


「まあ~~帰った途端行き成り御飯にした御父さんも大概だけど」

「……」


 視線を逸らされた。


 うん。




 誤魔化す気だったけど僕が何も言わないからアレだな。

 調子が狂ったという感じかな。




 そんでもって焦って自分から聞いてしまい墓穴を掘った。

 という感じだろうな。




  ズルズルと御茶を飲む僕。



「そういえば御父さん?」

「なんだマー君?」

「御母さんは御父さんがママチャリライダーだという事を知ってるの?」

「知らない筈だ」

「ですよね~~」



 まあ~~当然だろう。



 ママチャリライダーとはいえ人間。

 その正体を知ってるものは居る。

 特に年単位で戦ってたんだ。

 知っている筈だ。



 うん。


 というかママチャリライダーという事を受け入れたのか……。

 

「……って知らないのかいっ!」

「何がマー君?」



 何故キョトンとしてる?



「御父さんがママチャリライダーだという事をっ!」

「まあ~~ねえ~~」



 ああ~~と手を叩くお父さん。




「御母さん長年夫婦をしていて何でしらないのさっ!」

「ゑ?」


 何故か変な顔をされた。

 何言ってんだ此奴という顔だ。


 実の息子に酷くない?


「何?」

「あ~~マー君……普通は怪人とか戦闘員は見えないんだが……」

「はあ?」


 御父さんの言葉に僕は、はあ? と間抜けな顔をする。

 緑茶を飲みながら答える御父さん。


「それどころかママチャリライダーの姿もね」

「はあ? 何で?」

「認識力断絶現象さ」

「認識力断絶現象?」


 御父さんの言葉に僕は眉を顰める。

 聞いたこと無いんですけど。



「これまで培ってきた知識や経験それに常識等に沿わない物を見た時にマー君はどうする?」

「其れは……例えばどんな状況だ?」


 御父さんの言葉に首をかしげる。



「例えば怪人の姿だマー君は見てどう思う?」


 怪人が何か?




 意味が分からないが……。


「怪人は怪人だろう?」

「そう其処」





 僕を指差すお父さん。



「はい?」


 ガリガリと御茶請けの漬物を齧る御父さん。

 良いけど塩分が多いから血圧上がるぞ。


「話が長くなりそうだから分かりやすく言うな」


 色々と説明してくれた。

 なのだが……今一つ分からなかった。



 だが暫く聞いてると段々理解できてきた。




 要するに普通の人は超常の存在を知覚し認識できないのだ。





 此れまでの常識が邪魔をして。


 超常の存在が何かしたとする。


 其れは普通は精々気のせいと言うレベルに落ち着く。

 若しくは其れを不自然と思わない。


 そうなると最早他人事になってしまう。





 それも致命的(・・・)なレベルに。





 

 例えば今日の話をしよう。


 僕が何時もの調子で歩いてたら怪人と遭遇し殺されるとする。

 御父さんたちは僕が怪人に殺されたと認識する。



 但し普通の人の場合は僕は通り魔に殺された思うのだ。




 認識の齟齬。



 というか認識した非現実が自分の常識に沿った物に置き換わるのだ。


 無意識に。


 そんな訳で普通の人は認識出来ないのだ超常の存在は。


 出来ても自分の都合の良いように記憶してしまうのだ。




 

 此れが認識の断裂現象。





 正しく事実を認識出来ないのが普通の人間らしい。



「となると御父さんは……」

「改造されて認識できた」


 マジかよ。


「あ~~でも僕は怪人とかは今日初めて見たんだけど……」

「……多分だけどマー君さあ~~頭を打たなかった?」




 何言ってるの?



「打ったけど?」

「それだっ!」



 漬物を刺した爪楊枝を此方に向ける御父さん。



「へ?」

「詳しくは省くけが其れで急に認識出来る様になったんだ」



 うんうんと、頷く御父さん。







「……」





 マジですか?




「となると困ったぞ此のままではマー君は殺されるかもしれないぞ」

「誰に何でさっ!?」



 行き成り不穏当な言葉を聞いたんだけどっ!?

 何で!?

 としか言いようが無い。



「いや秘密結社に見られたし」

「そうでしたあああああっ!」

「アノ組織がマー君を見逃すとは思えないっ!」

「ぎゃああああああああああっ!」


 御約束だよ。



 秘密を見た者は消される。

 此れは御約束だ。


「認識出来る様になった人間をあいつらが見逃すものか」

「そうだよね~~って何で?」




 やさぐれてたらお父さんの言葉に引っかかる。



「簡単な話だ奴らのアジトは普通の人間に見えない此処までは分かるか?」

「うん」



 それはまあ~~。


「という事は普通はアジトが襲われないよな」

「まあ~~」



 当然ですね。


「自衛隊も警察も踏み込めない」

「あ~~」

「奴らを認識出来ないからだ」

「成る程」



 言われてみれば……。



「だから奴らは悠々とアジトでのんびりしてるのさ」

「のんびりしてるって……普通は警備ぐらいしてるでしょ」



 何言ってるんだろう?



「してないぞ」


 ボソリと言うお父さん。


 



「はい?」








 マジですか?

 え?

 マジ?







「奴らも事実を正しく認識出来る人材が少ないんだ」

「はあ」



 まあ~~分かる。



「だから遊ばせておく人材の余裕が無いんだ」




 あれ?




 のんびりという言葉は何処に?



「普通はあいつ等何してんの?」



 とりあえず聞いてみるか。


「怪人のメンテナンスに資金調達其れに新技術の実験かな」

「そんなに忙しいんだ」




 ふうん?



「ああ確か全員で十人しか居ないとぼやいてた」

「少ないっ!」

「しかも給料ない上に休みなし」

「酷いブラックだっ!」

「悪の組織だからな」




 え~~悪の組織って最悪のブラックだ。




「しかも御父さんが自分の死を偽装する為に色々したからな~~」

「何したの?」




 ジト目で言う僕。




「施設を破壊した上に今後の生活の為に資金強奪したから劣悪な環境になってるだろう」

「何方が悪役か分からないんだけどっ!」


 御父さん視線を逸らさないでください。

 唯の強盗ですから。


 ええ。


 本当に。









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