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女先生の実力

 先生と呼ばれた女は、意外と若い。

 長い黒髪を後ろで縛ってあらわになった白い首筋や肌のつやが若さを誇示している。

 

 だが、顔の3分の1を占めるサングラスで表情は読めない。

 それに、すその長いダブっとした赤い上着を羽織っていて、中に武器を隠し持っているような雰囲気がある。


 車両の上ではウンコ・ターバンのリーダーが声援を送る。

「せんせー! せんせー!」


 加えてトカゲ兄弟がいつのまにか復活している。

 彼等は共にフリチン。脱ぎ捨てたズボンは燃え尽きて彼等の足元に放置されている。

あんちゃん! 先生だよ! 先生が出たよ!」

「おうおう! 先生が仇を取ってくれるぜ!」


 先生と呼ばれる女はラルク達を一瞥して、ギルバートに目を付けた。

 やはりこの中では、一番目立つ格好をしているからかもしれない。


 女先生は「行くわよ!」と、宣言して、ギルバートに向かってダッシュした。


「え? ぼ、僕ですかっ!?」

 戸惑うギルバートとの距離を縮めながら、女先生は突然、上着の前を豪快にはだけた!

 まるでモモンガが羽を広げるように。


「いっ!?」「なっ!?」「フ〇ック!?」

 男達が一斉に目を見開いた。


 なんと、女先生は裸同然のボディを、予告もなく晒けだしたのだ!

 惜しげもなく、恥じらいも無く。


「あわわわ」と、ギルバートがドギマギしながら硬直する。


『スパァン!』と、乾いた音がギルバートの顔面で生じた。

 続けて『スパパパパパパ!』と、女先生の往復ビンタが物凄い勢いでギルバートの顔面に炸裂する!


 声を上げることすら許されず、ギルバートは何十発と往復ビンタを喰らってしまった。

 そして、仰向けに卒倒してしまう。


 それを見て女先生は上着を元に戻して、倒れているギルバートの懐やポケットを物色し始めた。


 何が起こったのか理解できず、ラルクは放心状態だ。

 まるで渾身のギャグがすべったような、リアクションに困る雰囲気……。

 

 ようやく、ファンクが口を開く。

「フ〇ック……ノック・アウト強盗か」


 チキが顔を強張らせる。

「聞いたことがありますわ。出会い頭に気絶させて金品を奪う強盗ですわね……」


 そんな中、なぜかピピカは興奮している。

痴女ちじょでしゅ! あれは痴女でしゅ!」


「フ〇ック。お前、どこでそんな言葉覚えやがった?」

「はじめてナマで見たでしゅ! 裸でしゅ!」


 ギルバートを物色中の女先生がそれを聞き咎める。

「失礼ね! 裸じゃないわよ!」


 車両の上ではターバン男が大喜び。

「せんせー! せんせー! それが、せんせぇええ!」


 フリチンのトカゲ兄弟は抱き合って歓喜している。

「やった! 先生がやったった! 瞬殺だぁ!」

「兄ちゃん、良かったね! 俺達、勝ったんだね!」


 騒ぐアホどもをしり目に女先生は、ギルバートから離れると『ペッ』と唾を吐いた。

「しけてるわね! なにも持ってないじゃない!」


「ファ〇ク。そりゃそうだ。服しか残ってない没落貴族だからな……」


 憐れ、ギルバートの頬は真っ赤に腫れあがっている。

 気絶しているので反応は無いが、相当、痛そうだ。


「仕方がありませんわね」

 見かねたチキが草を片手に歩み寄る。

 そして、氷結草を口に含むと、軽く飲み込んだ後で倒れているギルバートの顔に向かって「うげぇええ」と、氷のゲロを垂らした。


 ぼとぼとベチョベチョと氷のゲロを顔面に浴びてギルバートが「ひゃああ!」と、目を覚ます。


 状況を把握してパニックになるギルバート。

「うげえ! 何でゲロをかけるんですかっ! ほっぺたが痛いですよぅ!」


 それまで黙っていたラルクが真顔で疑問を口にする。

「さっきのはスキル? なのか……」


「ファ〇ク! んなわきゃねえだろ!」

「最低ですわね。下品極まりないですわ」

 チキはゲロを人の顔に垂らしながら顔を顰める。


 トカゲ兄弟が煽る。

「先生! 他の奴もやっちゃってください!」

「兄ちゃんとオイラの仇をとってよ!」


 女先生はトカゲ兄弟を一瞥して、また唾を吐く。

 やる気がないような素振りで、女先生はラルクに照準を定める。

「面倒くさいわね。もう」

 

 そして、さっきと同じように上着に手をかけながら、ダッシュでラルクに向かってきた。


 女先生が上着を全開にする。と、同時にラルクがテイムを発動する。


 クルリと後ろを向いて、懐から木槌を出すラルク。

 ワンテンポ遅れて、女先生がラルクの動きをトレースする。

 

 先に振り返ったラルクは、女先生の後頭部に『カツーン!』と、木槌を振り下ろす。

ターン途中で「はがっ!?」と、女先生の動きが停止する。


「いだだだだ……」と、頭を押さえてしゃがみ込む女先生。

 裸体を晒す機会を奪われた女先生が、性懲りもなくラルクに敵意を向ける。

「く、今度こそ!」 


 立ち上がりながら上着の前をはだけようとする女先生。

 ところが『ポフン!』と、煙が生じて、女先生の服装が変化してしまった。


「え!? あれ?」と、女先生が驚く。

 赤い上着が消え失せて、代わりに男物の服を身に纏っている己の格好が信じられない様子。

 おまけにその頭には……ウンコ紛いの茶色いターバン!


 女先生がパニックになる。

「な、な、なによ! これ!」

 

 同時に車両の上からも慌てふためく大男のダミ声。

「なんだべ? なんでだべ!?」

 女物の下着に赤い上着だけを羽織ったサングラスの大男が、ガニ股でアワアワしている。

 しかもサイズの合わない淡いピンク色の下着は引きちぎれそうにキチキチだ。


 ファンクがピピカを見ながら笑う。

「フ〇ック! 面白いじゃねえか! 服を強制交換しやがったな!」


 だが、ラルクの様子がおかしい。

 サングラスを失った女先生の顔を食い入るように見るラルク。

「ま、まさか……どうしてこんな所に……」


 ラルクの異変に気付いてチキが心配する。

「ダーリン、どうかしましたの? ひょっとして知っている人ですの?」


 チキの問いにラルクが力なく答える。

「ネム……妹だ」


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[良い点] 女優スタイルからの痴女(*ノ゜Д゜)八(*゜Д゜*)八(゜Д゜*)ノィェーィ! おにいちゃん····私、痴女なの♡
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