砂漠の盗賊団
車両を降りて周囲を見回す。
列車の周りには何もない。砂漠に線路。それだけだ。
もっと騒ぎになっているかと思われたが、長い車両は静かに佇むばかりで意外に静かだ。
右方向に目を向けると、車掌が言っていた用心棒が4人、ぶっ倒れている。
その近くに山賊の姿はない。
「フ〇ック! 山賊どもはどこだ?」
ラルクが汗を拭いながら首を振る。
「分からない。どの辺にいるんだろ?」
車両の下から向こう側を見てみたが、それらしき姿はない。
仕方がないので車両の列に沿って歩いてみた。
すると、しばらくして二つ前の車両から人影がふたつ、飛び降りてきた。
「ファ〇ク!? あれか?」
「みたいだな」
ラルク達の姿を認めた半人半トカゲが2人、さっそく寄ってきた。
「おやおや。そっちから出てきてくれたのかよ!」
「兄ちゃん! 手間が省けて良かったな!」
トカゲ頭の二人組は兄弟のようだ。
兄貴分のトカゲ頭がチキに目を付けた。
「おうおう、姉ちゃん! そのバッグの中身、おとなしく渡しな!」
「そうだそうだ! 兄ちゃんを怒らせない方がいいぞ!」
二人組に絡まれてチキが顔を顰める。
そして、おもむろにポシェットに手を突っ込むと、素早く草を掴んで口に放り込んだ。
トカゲの兄ちゃんが、それを見て慌てる。
「おいおいおい! てめぇ、今、何か飲み込んだな!?」
「兄ちゃん! きっと貴重品だよ! 取られたくないから飲み込もうとしてるんだよ!」
「なんだと? てめぇ! 舐めた真似しやがって!」
「やっちゃうよ? 兄ちゃんは、やるっていったらホントにやっちゃう人なんだぞ!」
トカゲ頭の二人組を睨みながらチキはモグモグ。
そしてゴックン。
「おう!? てめぇ何、飲み込んでやがんだ! 出せ! 吐き出しやがれ!」
「そうだそうだ! 兄ちゃんの言う通りにしろ! 早く吐き出せ!」
チキは冷静に二人組の様子を眺めながら「分かりましたわ」と、頷く。
そしておもむろに口を開く。
「ぼ、ボエエエッ!」
赤茶色のゲロが二人組の前にぶちまけられた。
トカゲ頭のズボンにもデロデロした吐しゃ物が引っかかる。
「うげっ! 汚ったね! なんだこの女!」
「兄ちゃん! こいつ、ビビリすぎてゲロ吐きやがった!」
チキのゲロは、ワンテンポ置いて『ジュッ!』と音を立てて発火する。
「熱っ! なんじゃこりゃ!?」
「兄ちゃん、熱いよう! なんか熱いよぉ!」
燃え盛るズボンにトカゲ頭たちは大パニック。
「あーっ、ちぃーちぃーあっちぃー! 転がれ! 脱げ! いや、転がれ!」
「兄んちゃん! あちちっ! 脱げないっ! 燃えるっ! パンツまでっ!」
砂の上で転がりながら必死にズボンを脱ごうとするトカゲ兄弟。
しかし、それぐらいでは溶岩のゲロは火が消えない。
チキは涼しい顔をして口元を拭う。
「仕方がないですわね。吐けとおっしゃるんだもの」
そこに上からダミ声が響いた。
「なーにやってだぁ? おめえら!」
声は上の方からだ。
ラルク達が車両の屋根を見上げると、頭に茶色いターバンを巻いた大男が立っていた。
「フ〇ック? なんか変な奴が居るぞ?」
ラルクが若干、引き気味に呟く。
「なんだろ。あの頭に巻いてる変な布は……」
「ウンチみたいでしゅ」
ピピカが嬉しそうに大男の頭を指さす。
確かに色合いといい、とぐろを巻いた形といい……それは的確な例えだ。
それが聞こえたのかターバンを巻いた大男が激怒する。
「ごるぁ! 『うんこ』じゃねえど! ボスの証だべ!」
ギルバートがゲンナリした顔で言う。
「嫌ですよね。リーダーは、あんな汚らしい物を被らなきゃならないだなんて」
ターバン男は手にしていたラッパのような銃をギルバートに向ける。
「聞こえてっど! おめぇ、もういっぺん言ってみろ! 頭、ぶち抜くど!」
慌ててギルバートが作り笑いを浮かべる。
「い、いえ、素敵な『お帽子』だなあと思って!」
「でも、ンコでしゅ」
「んだとぉ! ぶち殺してやるど!」
ラルクが手のひらにドングリを乗せて「ピピカ」と、合図する。
「あい」と、ピピカがスキルを発動。
『ポフン』と、ターバン男の手からラッパ型の銃が消失する。
その代わりにドングリがポトリ。
「あで? おでの銃がねえど?」と、目を丸くするターバン男。
反対にラルクが物珍しそうに銃を弄り回す。
「これ、どうやって使うんだろ?」
適当に触っているうちに『パンッ!』と、銃が発砲される。
「ご、ごるぁ! 素人が触ったら危ねえべ!」
ラルクが「なるほど」と、仕組みを理解して、正しく銃口をターバン男に向けた。
「こんな感じかな?」
「や、やめれ! 人に銃口を向けたら、いけないんだど!」
「うるさいな」
『パン! パン!』と、銃弾が放たれ、それぞれターバン男を掠めた。
真っ青な顔でターバン男が撃ったラルクを非難する。
「いーけないんだ、いけないんだ! せーんせいに、ゆうてやろ!」
「先生?」と、ラルクが首を傾げる。
ターバン男は足元に向かって叫ぶ。
「先生ぇ! 出番だど! こいつらをやっちゃうべ!」
すると、ターバン男が乗る屋根の下で車窓が開いた。
そこから顔を出したサングラスの女が上に向かって怒鳴る。
「やあよ! アタシのノルマは終わったでしょ!」
「んだども! 頼むべ! 追加料金払うだで」
ターバン男に懇願されて、女が面倒くさそうに窓から身を乗り出して車両の外に出てこようとする。
「フ〇ック! なんだ、あの女? あいつも山賊か?」
「そうは見えませんわね」
女は苦戦しながら窓枠をまたぎ、転がり落ちるように窓から出てきた。
ラルクが目を凝らして女の様子を伺う。
「こいつが先生……」
山賊のリーダーが頼りにするぐらいだから、それなりの実力は持っているのだろう。




