表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/274

25、26



 汗 ~努力は影でするものです~



 不自由 ~動かなくなっていく~


 愛おしい人を早く喪ってしまうことが、幸か不幸かわかっていて、徐々に削られていくその体力が尽きるその瞬間まで、愛おしい人がしたいことを、愛おしい人としたいことを叶えていく。

 そうして病の身に無理が与える影響を不安に思いながらも、少しでも願いを叶えてやろうとどうにも旅に出てしまうのだ。

 今までも僕と似た境遇だとか、僕と似た人物だとか、そういったことを勝手に思うことはいくらもあった。

 けれどこの女性が、今までで一番そうだった。


 桜に包まれて儚く消えていく愛おしい人を、幸せを噛み締めながらその隣で生きる。

 今は、想い出を抱えたままに責任を持って生きている。

「お子さんがいらっしゃるのですね」

 少しばかり女性が切なげな表情をして、スッと目を細めたことには、どのような意味があるのだろう。

 答えに迷った僕に代わって、想桜ちゃんが元気に答えていた。

「想桜ね、ずっとパパと一緒にいるんだ! それでね、想桜がパパと結婚して、もう寂しくないよって言ってあげるの!」

 それは僕も初めて聞く話だった。


 想桜ちゃんの優しさに泣きそうになる。

 こんなことじゃ、完全に親バカだってわかってはいるにしても、それだってこんなことを言われたら全国のお父さんはみんながみんな号泣だと思う。

 泣くでしょ。泣くよね。

「血は繋がっていませんが、とても可愛いものですよ。一瞬で、今の今だけでも伝わるでしょう、子どもというのがいかに魅力的な話であるか」

「血は繋がって、……なるほど。それは魅力的かもしれませんね。それで、そのお言葉はお勧めのおつもりなんですか?」

 笑いながら女性は答えた。


 なんだか真意の読めない人だと思った。

 もしかしたら、僕も同じように見えているのかもしれない。他人から見たら、僕も同じくらい心を閉ざしているのかもしれない、とそう思った。

 今が幸せだとしても、抜け落ちた心の穴は埋まっているわけではない。

 恋人という枠は空けっ放しのままなのだ。

「さて、どうでしょう。そういうつもりではありませんでしたけれど、そうとも言えないことはありませんね。それに、子どもというのは、本当に自然と癒されることですよ」

 僕の言葉に女性は想桜ちゃんをじーっと見た。

「そうですね。それは、本当にそうなのでしょう。そうした癒しを求めることも素敵だということはあたしも理解のできるところですね」

 そう言いながらも、笑顔は引き攣っているように見えた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ