25、26
汗 ~努力は影でするものです~
不自由 ~動かなくなっていく~
愛おしい人を早く喪ってしまうことが、幸か不幸かわかっていて、徐々に削られていくその体力が尽きるその瞬間まで、愛おしい人がしたいことを、愛おしい人としたいことを叶えていく。
そうして病の身に無理が与える影響を不安に思いながらも、少しでも願いを叶えてやろうとどうにも旅に出てしまうのだ。
今までも僕と似た境遇だとか、僕と似た人物だとか、そういったことを勝手に思うことはいくらもあった。
けれどこの女性が、今までで一番そうだった。
桜に包まれて儚く消えていく愛おしい人を、幸せを噛み締めながらその隣で生きる。
今は、想い出を抱えたままに責任を持って生きている。
「お子さんがいらっしゃるのですね」
少しばかり女性が切なげな表情をして、スッと目を細めたことには、どのような意味があるのだろう。
答えに迷った僕に代わって、想桜ちゃんが元気に答えていた。
「想桜ね、ずっとパパと一緒にいるんだ! それでね、想桜がパパと結婚して、もう寂しくないよって言ってあげるの!」
それは僕も初めて聞く話だった。
想桜ちゃんの優しさに泣きそうになる。
こんなことじゃ、完全に親バカだってわかってはいるにしても、それだってこんなことを言われたら全国のお父さんはみんながみんな号泣だと思う。
泣くでしょ。泣くよね。
「血は繋がっていませんが、とても可愛いものですよ。一瞬で、今の今だけでも伝わるでしょう、子どもというのがいかに魅力的な話であるか」
「血は繋がって、……なるほど。それは魅力的かもしれませんね。それで、そのお言葉はお勧めのおつもりなんですか?」
笑いながら女性は答えた。
なんだか真意の読めない人だと思った。
もしかしたら、僕も同じように見えているのかもしれない。他人から見たら、僕も同じくらい心を閉ざしているのかもしれない、とそう思った。
今が幸せだとしても、抜け落ちた心の穴は埋まっているわけではない。
恋人という枠は空けっ放しのままなのだ。
「さて、どうでしょう。そういうつもりではありませんでしたけれど、そうとも言えないことはありませんね。それに、子どもというのは、本当に自然と癒されることですよ」
僕の言葉に女性は想桜ちゃんをじーっと見た。
「そうですね。それは、本当にそうなのでしょう。そうした癒しを求めることも素敵だということはあたしも理解のできるところですね」
そう言いながらも、笑顔は引き攣っているように見えた。




