23、24
人生 ~たった一度を楽しもう~
自分のペースで楽しんで、前向きにポジティブに生きていく。
自分のために、自分のやりたいことをして生きていく。
それほど幸せなことはないだろう。
それが上手くできていたら、それほどの幸せはないことだろう。
そうであることは、みんな知っているのだ。
知っているんだけど、そう上手くはコントロールできないものなんだよ。
そこに関しては彼女は上手だったな。
最早、悟っていたからだというのもあるんだろうけれど、彼女は本当に自分のやりたいことをやっている、楽しんでいるという様子だった。
死に対する恐怖がなかったわけではないと思う。でも、僕にだって感じられないようなものだった。
僕にだって彼女は笑顔ばかりを見せていた。
心を開いてくれていないわけではないんだろうけど、物理的な苦しみを見せることはあったにしても、精神的な苦しみを彼女は僕にも見せなかった。
我慢をしていたのだとしたら、それは望ましいものではないのだろう。
そうなんだけど、本心から彼女が悟りを開いてたんだったら、好きなことをして好きなように生きられてたんだったら、彼女は何よりだれより素晴らしく生きたことになるんだね。
悟りのための禁欲というのはまた違う。
死を恐れず悟りながらも好きなことを好きにする、やっぱり彼女には敵わないよ。
運命 ~避ケラレナイ運命ナドナイ~
先に進むことは、終わりへと近付くこと。
前向きな思考回路を維持し続けるために、それなりの努力はしている。元より、後ろ向きな方でもない。
そうなのだけれど、多少、僕にはそう思ってしまうところがあった。
割り切っては考えられなくて、想桜ちゃんを見ていると尚更、終わりへと刻一刻と近付いていくことが怖いと思うんだ。
繰り返しは、なんとも楽で幸せなことだ。
実際にそこに迷い込んでしまったのなら、終わりを求めることになるのかもしれない。
先に進むことは悪いことなわけはない。
それなのに僕は素直に終焉を目的として定められよう自信はなかった。
今がこんなにも幸せだから、繰り返しも悪くないと思ってしまうのかもしれない。
そこに彼女もいてくれたなら、どれほど素敵なことだろう。
だけど僕の記憶に彼女が登場するとき、そこに想桜ちゃんはいない。
二人が同じ舞台に登場している日々が僕の中にはないのだ。
幼い想桜ちゃんを腕に抱き、その名を授けた散り際の彼女の美しさを、僕はひどくよく憶えている。
それでも僕は彼女と想桜ちゃんが重なる景色を知らなかった。
失いたくない大切な彼女との時間に、戻りたいとは思わなかった。
それが無駄な願いだと知っていることもあるからだろう。




