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後悔 ~自信がもっと付いたなら~
だれでも一緒に学びを受けられるのは、素敵なものだと思われる。
自由にだれとでも話してもよくて、だれとでも何ででもできるというのだから、魅力的なものではないか。
今論点になっているのはそこじゃないとわかっていても、僕は憧れなところであった。
だって女性の姿のままでも、あなたの隣で勉強ができるかもしれないということだよ?
だけどたくさんの人と一緒にいるはしたない状況の中では、偶然あなたが僕を見付けて、まさか僕に惚れてくれるようなことはないのだろう。
ほら、あなたは経験がなさすぎるから。
僕だってあまり興味があったわけでもないので、誘われて垣間見することはあったけれど、そこから通ったことはないのだから、経験がないという点では同じだ。
だからあなたの熱に流されてしまったところもあるかもしれない。
僕に夢中になっているうちはだれのことも知らないでいるあなたも、自由にいろいろな人と出会える環境にいたら、簡単に僕のことなんて忘れてしまうかもしれない。
毎日通ってなんて、くれなくなってしまうかもしれない。
いや、え? 毎日会っているのか。
通うのではなくて、多数の男女が昼間に?
そういう場所なのだということを、理解ができないではなかった。そういう常識だと思えば、別に納得できないというものではなかった。
一途でいないではならないだなんて、だってそれは奇妙で矛盾した話だ。
「友人は多くないのですから、私からは何も言えませんけれど、何も、たった一つ好きでいられたらそれで十分というものではありませんか?」
問いの答えがある前に、あなたが僕の手を引いてその場を離れた。
どうしたのかと思っていれば、やはり僕には人付き合いということが向いていなかったためだろう。
いろいろあって職に就けなかったことも関係しているのだろう。
「何を好きと思ってそう仰られているのか、残念ながらそれを知らないわけですけれど、そうしたことを悩んでいるご本人に口にするのはさすがによくないのではありませんか? 自身の身分は高くなくても歌詠みとして高貴な方々に呼んでいただけることもあり、何より愛おしい方の傍にいられる。そうあれていることは幸せです。幸福だと思います。大勢に認められなくとも、自分の好きなことを好きなようにできることが何よりです。だからこそ、そうしたものに出会えたことも幸福だと考えるのです」
ここまで聞いて、やっと僕にも何を伝えようとしてくれているのかがわかった。
「ありがとうございます。あなたが止めてくださらなかったら、私はあの方を傷付け続けていたことでしょう。気を付けないとなりませんね。ありがとう、私の、たった一人の好きな人」




