21、22
言葉 ~不器用なままで~
もしあなたの声が聞けないとしたら。
もしあなたの歌が読めないとしたら。
どちらも僕にはかなり苦しいことに思われた。
だけどそのどちらかの力が僕に備わっていなかったとしたら、僕はあなたに惚れるようなことはなかったのかもしれないね。
それでもあなたの歌を存分に楽しめないのは今の僕からしたら考えられないことだ。
もしあなたの声で読み上げられる歌を聞かずに済んでいたならば。
もしあなたからの手紙が何と書かれているのかも知らなかったならば。
手紙を毎日送り、通ってくれている人がいるという報せが入ってきても、心が奪われるようなことはなくあのまましっかりと追い返せていたことなのだろう。
僕は手紙なんて読まなければよかったのかな。
……いっそあなたに出会わなければなんて、絶対に言いたくないのにな。
病弱軍師 ~桜の花のように美しく散ることを彼が望まないのなら~
武士にはいいイメージはないし、身分もないのに金ばかり蓄えた大商人が武士に武器を提供したがために、僕たち貴族に歯向かえたのだという情報があるのだから、商人にだっていいイメージはない。
けれど歌を詠むだけの教養があるのだとしたら、それに悪意というものを感じられないものだから、何も全員がそういうものではないというわけなのだろう。
僕だって貴族を貴族と一括りにされてしまったら、好い気はしないだろうし。
「そうです。歌を学ぶ気はありませんか?」
思いついて、勝手ながら僕は商人の少女に提案する。
嬉しそうな、明るい笑顔で少女は大きく頷いてくれる。
「是非! 貴族の方に教えていただけるなら、どんなにか素敵なことでしょう。歌集を見ることはありましたが、教えていただいたことがあるわけではありませんし、そもそもどれも独学ばかりで、知識はあっても解釈は正しいものだとは思えません。それも貴族の中でも歌の得意な方なのだと聞いています」
興奮したように少女があなたへと迫る。
「人に教えるほどのものではありませんが、お望みでしたら」
僕が勝手に言い出したことであったのに、快く受け入れるあなたの優しさが僕には誇らしい。
何も僕はすごくないのにね。
歌の得意でない貴族の僕と、歌を作るのに一日もかけて悩んじゃうような武士の彼とで、二人の歌作を待つことにした。
「返歌はいらないと言ってくださいましたけれど、それはさすがにできませんよね。愛おしい人から歌を送られて、そのままにしておくだなんて非礼で非常識なこと、するわけにはいきません」
「やっぱそういうもんだよな。雅なことはできないけど、いくら俺でもそれくらいの礼儀はある」
武士の口から礼儀だなんてものが聞けるとは思わなくて、改めて偏見というものを捨てなければいけないと思わされた。
「そうだ。俺にも教えてくれないか? 返歌って言うのを、どう作ったらいいものかわからないんだ。どうにか調べながら作ったら、翌日まで待たねばならぬ歌があるものかと笑われてしまった」
「本当は私も歌は駄目々々なのですけれど、基本くらいなら」




