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15.伏線の種類② あからさまに気づいて欲しい伏線

2.あからさまな、気づいてほしい伏線

──────────────────────


 すなわち、例文2。もう一回下に書きます。


*************

 俺は目の前のステーキにかじりつきながら、優斗の話を聞いていた。


「あの先生、本当にうざくねえ? いちいち遅刻の話ばっかり俺に吹っ掛けてきてよう。俺だって遅刻したくて遅刻してるわけじゃないっつーの」

「まあまあ、そう怒んなって」


 俺は真向いに座る優斗に、そう(なだ)めた。と、そこで俺の隣に座っていた真美が、小さな声で言った。


「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」


 ──まただ。

 真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。


「いいよいいよ。席どくな」


 俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。

 ふと真美の座っていたあたりの机を見た。

 ──食べかけのハンバーグ。

 一番最初に真美の料理が届いたのに……。


「あー。あのセンコー、今度会ったら殴ってやりたい」

「おい、それはやばいって。やめろよな」

「いや、これはまじで」


 優斗は顔を険しくさせた。彼の刺すような瞳に、友達ながら俺はぞくりと鳥肌が立った。


************


 怪しいいいいいいいいいいいいい。

 怪しすぎてクソワロ。

 絶対読者【怪しい!!!!!】って思いますよねこれ。

 絶対【これ伏線だ】って気づきますよ笑。



 【あからさまな伏線】は、こんな感じに書くんです。


 そうだなあ。あからさまな伏線の書き方としては、


a.一人称の文章で、主人公(喋ってる人)に疑問に思わせる。

b.そのページの最後に怪しい感じで書く。

c.よくあるネタを使う



 これらがあります。


 私がさっき書いた例文2は、aのやり方ですね。



[aの書き方]


 この書き方で、【あからさま】にしたい場合は、

 【疑問を前面に押し出し】

 てください。


 つまり、この書き方だと読者は気づきません。 


******


「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」

「いいよいいよ。席どくな」


 俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。

 真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。

 真美の座っていたあたりの机の上には、まだ食べかけのハンバーグが残っている。一番最初に真美の料理が届いたのに、真美ってけっこう食べるの遅かったんだな。


「あー。あのセンコー、今度会ったら殴ってやりたい」

「おい、それはやばいって。やめろよな」


******



 たしかに疑問は書いてます。


「真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか?」


 はい。

 今はこの部分しかないから目立つけど、一話の中のたったこの一文から【これ伏線だ!】なんて気づくの、無理です。


 あ、逆に言えば、これは

【気づかれなくてもいい伏線(よりもちょっと気づいてもいいやつ)】

 くらいにはなります。


 でも少なくとも、【あからさまな伏線】ではないです。



 だから、aもただ書けばいいってもんじゃないんです。

 改行して、ダッシュとか使って、もうめちゃくちゃに意識させるんです。以下、またさっきの例文。


******

「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」


 ──まただ。

 真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。


「いいよいいよ。席どくな」


 俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。

 ふと真美の座っていたあたりの机を見た。

 ──食べかけのハンバーグ。

 一番最初に真美の料理が届いたのに……。


「あー。あのセンコー、今度会ったら殴ってやりたい」

******



  じゃあ、この例文よりもヤバイ、aの書き方やってみますか?

 つまり【もっと露骨に】するんです。


******


「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」


 ──まただ。

 真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。


「いいよいいよ。席どくな」


 俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。

 ふと真美の座っていたあたりの机を見た。

 ──食べかけのハンバーグ。

 一番最初に真美の料理が届いたのに……。


「真美!」


 俺は思わず声を上げて、彼女の手を掴んだ。①真美は振り返って俺の方を見、ぎょっとした顔で目を瞬いた。


②「な……、なに」


③ 真美は明らかに動揺した声で言った。


「お前、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? ④なんか──病気、とか」


 ぱっと手を振って、真美は掴んでいた俺の手を振り払った。


⑤「──関係ないでしょ。放っといて」


 真美はくるりと踵を返し、俺たちの机から遠ざかる。

 俺はハア、と溜息をついて椅子に座りなおした。優斗が訝しそうな顔で俺を見る。


「どうした?」

「真美、なんか変じゃないか?」

「あー……、たしかに。たまにおかしいよな、あいつ……」


 俺たちは顔を見合わせたあと、もう一度真美の向かったトイレを見た。


「それよりさあ、あのセンコー。今度会ったら殴ってやりたい」

******


 優斗はどんだけセンコー殴りたいんだ……笑。


 それより、一気に怪しさ増しましたねえ笑笑笑笑。こんなの絶対やばいやつやん笑笑。どうですかこの、怪しい匂いぷんぷんの……。



 とりあえず、これくらいやればもう確実に

 【読者は意識します】。



 ちなみに、①とか②とか書いたんですが、あれは変更できるってことです。↓以下のやり方にすればするほど、怪しさが【減ります】。



 例えば


①真美は振り返って俺の方を見、ぎょっとした顔で目を瞬いた。

 ↓

カット

 or

真美は振り返ってきょとんとした顔をした。



②「な……、なに」

 ↓

(①の文章をもとの「ぎょっとした顔」にしてたとして)

「わあ、いきなり掴まないでよ。なに?」



③真美は明らかに動揺した声で言った。

 ↓

(①も②も元のままだとして)

俺が突然つかんだから驚いたらしい。



④なんか──病気、とか

 ↓

カット



⑤「──関係ないでしょ。放っといて」

 ↓

(①~⑤全部あったとしても)

「なんだ、びっくりした。うーん。女の子にそんなこと聞かないでよね。ちょっとその……頻尿気味なの」

(このセリフ書いて爆笑した)



⑥「どうした?」

「真美、なんか変じゃないか?」

「あー……、たしかに。たまにおかしいよな、あいつ……」

 ↓

(①~⑤全部元のままだとしても)

カット



 はい。こんな感じで、適宜(てきぎ)【怪しさ度】を変えられます。

 特に「頻尿なの」からの、優斗と主人公の会話がカットされれば、【一部の読者は】

「なんだ伏線じゃないやん」

 ってなります。だって頻尿ならたくさんトイレ行くの当たり前だから。解決してるんです。


 でも一度惹き付けた分、【怪しいと思う読者も】残ります。



 はーい、次行きます。



[bの書き方]

[b.そのページの最後に怪しい感じで書く。]


 小説のね、最後の(ぎょう)って、伏線書くのに適してるんですよ。なんかわかんないけど。


 やっぱりそこで一旦目が留まるじゃないですか。それで「次のページ」のリンク押すじゃないですか。だから目立つんだと思います。


 ということで、さっきの【真美の拒食症】、やってみますね。


 じゃあいいですか。

 なろうページの、第16話、一番最後だとしますよ。


******


 俺は目の前のステーキにかじりつきながら、優斗の話を聞いていた。


「あの先生、本当にうざくねえ? いちいち遅刻の話ばっかり俺に吹っ掛けてきてよう。俺だって遅刻したくて遅刻してるわけじゃないっつーの」

「まあまあ、そう怒んなって」


 俺は真向いに座る優斗に、そう(なだ)めた。と、そこで俺の隣に座っていた真美が、小さな声で言った。


「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」

「いいよいいよ。席どくな」


 俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。真美の座っていたあたりの机の上には、まだ食べかけのハンバーグが残っている。一番最初に真美の料理が届いたのに、真美ってけっこう食べるの遅かったんだな。


 視線をずらし、トイレに向かう真美をなんとなく見やった。彼女の華奢な背中が目に入る。


『トイレ行ってきていい?』


 なぜかその言葉が、いつまでも頭の中で反駁(はんばく)していた。


************


 どうでしょう。いけましたかね。


 最後の一文を

『食べかけのハンバーグから、いつまでも目が離せなかった』

 にする流れもありなのかもしれないけど……。うーん……。食べかけのハンバーグに目が離せないってなんぞ……。

 まあ、そこはお好みで。



 とりあえず、文章がここで終わってると、少しだけ怪しいですよね。

 「トイレになんか関係あるのかな」ってなりますよね。



 この伏線の貼り方で大切なのは、


 【いつまでも】と【していた】です。



 最後の一文に【いつまでも】という単語を入れて、文末は【〇〇していた】にするんです。



 例えば、


・少年はいつまでも彼女の姿を見ていた。

・いつまでも男は食べ続けていた。

・その女は、いつまでもしゃべり続けていた。


 とか??

 三人称視点の文章なら、こんなのもOK


・彼がじっとそれを見ていることに、誰も気づいていなかった。

・優香の発言を聞いている者は、誰もいなかった。

・そのつぶやきを聞いたのは、誰もいなかった。

・ただ一人、優香だけが違う方向をみていた。


 こんな感じです。


 【ただ一人】とか【〇〇以外、~~なかった】とか、【誰も~~なかった】とかが使えます。



 これは、三人称だけです。厳密には、一人称でやるとおかしいです。


 あ、これならいいですよ?


・俺がじっとそれを見ていることに、誰も気づいていなかった。

・俺の発言を聞いている者は、誰もいなかった。

・そのつぶやきを聞いたのは、誰もいなかった。(つぶやいたのは俺)

・ただ一人、俺だけが違う方向をみていた。


 でも、【主人公】以外の第三者が↑の行為をしているなら、厳密には使っちゃだめです。



 だって、【誰も見てなかった】のに、なんで主人公描写してるんですか!!!!

 まあでも、厳密にはおかしい(ような気がする。私的には。でもルールはわからない。普通の本でも使ってる)気がします。


 あ、あと、その小説が、【主人公が過去を振り返って書いている】ものなら、なんの問題もありません。日記形式とかですね。


・俺はそのとき気づかなかったのだ。このあとあんなことが起こるなんて。


 とかもありです。これも伏線になります。



 まあ、【一人称でやらない方がいい】というのは私の小説を書くときのこだわりでしかないんで、

 「いやいやいいでしょ」って思った人は使ってください。


 実際、一般に売られてる本でもよくあると思います。知らないけど。


 これ書くの忘れてた。


[c.よくあるネタを使う]


 これは、いわゆる死亡フラグ的なやつです。



「俺、戦争から帰ってきたら絶対あいつと結婚するんだ!」


 はい、こいつ死にますよね。ハイ。他にも、


「こんな男のことなんて、絶対好きにならないんだから!」


 はい、絶対こいつ好きになりますね。ハイ。他には、


「絶対あんな船乗ったりしないんだから!」


 はい、乗りますね。



 こんな感じです。他には思い浮かびません。まだあったら教えてください。

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