15.伏線の種類② あからさまに気づいて欲しい伏線
2.あからさまな、気づいてほしい伏線
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すなわち、例文2。もう一回下に書きます。
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2
俺は目の前のステーキにかじりつきながら、優斗の話を聞いていた。
「あの先生、本当にうざくねえ? いちいち遅刻の話ばっかり俺に吹っ掛けてきてよう。俺だって遅刻したくて遅刻してるわけじゃないっつーの」
「まあまあ、そう怒んなって」
俺は真向いに座る優斗に、そう宥めた。と、そこで俺の隣に座っていた真美が、小さな声で言った。
「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」
──まただ。
真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。
「いいよいいよ。席どくな」
俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。
ふと真美の座っていたあたりの机を見た。
──食べかけのハンバーグ。
一番最初に真美の料理が届いたのに……。
「あー。あのセンコー、今度会ったら殴ってやりたい」
「おい、それはやばいって。やめろよな」
「いや、これはまじで」
優斗は顔を険しくさせた。彼の刺すような瞳に、友達ながら俺はぞくりと鳥肌が立った。
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怪しいいいいいいいいいいいいい。
怪しすぎてクソワロ。
絶対読者【怪しい!!!!!】って思いますよねこれ。
絶対【これ伏線だ】って気づきますよ笑。
【あからさまな伏線】は、こんな感じに書くんです。
そうだなあ。あからさまな伏線の書き方としては、
a.一人称の文章で、主人公(喋ってる人)に疑問に思わせる。
b.そのページの最後に怪しい感じで書く。
c.よくあるネタを使う
これらがあります。
私がさっき書いた例文2は、aのやり方ですね。
[aの書き方]
この書き方で、【あからさま】にしたい場合は、
【疑問を前面に押し出し】
てください。
つまり、この書き方だと読者は気づきません。
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「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」
「いいよいいよ。席どくな」
俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。
真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。
真美の座っていたあたりの机の上には、まだ食べかけのハンバーグが残っている。一番最初に真美の料理が届いたのに、真美ってけっこう食べるの遅かったんだな。
「あー。あのセンコー、今度会ったら殴ってやりたい」
「おい、それはやばいって。やめろよな」
******
たしかに疑問は書いてます。
「真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか?」
はい。
今はこの部分しかないから目立つけど、一話の中のたったこの一文から【これ伏線だ!】なんて気づくの、無理です。
あ、逆に言えば、これは
【気づかれなくてもいい伏線(よりもちょっと気づいてもいいやつ)】
くらいにはなります。
でも少なくとも、【あからさまな伏線】ではないです。
だから、aもただ書けばいいってもんじゃないんです。
改行して、ダッシュとか使って、もうめちゃくちゃに意識させるんです。以下、またさっきの例文。
******
「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」
──まただ。
真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。
「いいよいいよ。席どくな」
俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。
ふと真美の座っていたあたりの机を見た。
──食べかけのハンバーグ。
一番最初に真美の料理が届いたのに……。
「あー。あのセンコー、今度会ったら殴ってやりたい」
******
じゃあ、この例文よりもヤバイ、aの書き方やってみますか?
つまり【もっと露骨に】するんです。
******
「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」
──まただ。
真美、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? いや女の子の事情って分からないし、こんなこと言うの変態みたいだけどさ。
「いいよいいよ。席どくな」
俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。
ふと真美の座っていたあたりの机を見た。
──食べかけのハンバーグ。
一番最初に真美の料理が届いたのに……。
「真美!」
俺は思わず声を上げて、彼女の手を掴んだ。①真美は振り返って俺の方を見、ぎょっとした顔で目を瞬いた。
②「な……、なに」
③ 真美は明らかに動揺した声で言った。
「お前、ちょっとトイレ行き過ぎじゃないか? ④なんか──病気、とか」
ぱっと手を振って、真美は掴んでいた俺の手を振り払った。
⑤「──関係ないでしょ。放っといて」
真美はくるりと踵を返し、俺たちの机から遠ざかる。
俺はハア、と溜息をついて椅子に座りなおした。優斗が訝しそうな顔で俺を見る。
⑥
「どうした?」
「真美、なんか変じゃないか?」
「あー……、たしかに。たまにおかしいよな、あいつ……」
俺たちは顔を見合わせたあと、もう一度真美の向かったトイレを見た。
「それよりさあ、あのセンコー。今度会ったら殴ってやりたい」
******
優斗はどんだけセンコー殴りたいんだ……笑。
それより、一気に怪しさ増しましたねえ笑笑笑笑。こんなの絶対やばいやつやん笑笑。どうですかこの、怪しい匂いぷんぷんの……。
とりあえず、これくらいやればもう確実に
【読者は意識します】。
ちなみに、①とか②とか書いたんですが、あれは変更できるってことです。↓以下のやり方にすればするほど、怪しさが【減ります】。
例えば
①真美は振り返って俺の方を見、ぎょっとした顔で目を瞬いた。
↓
カット
or
真美は振り返ってきょとんとした顔をした。
②「な……、なに」
↓
(①の文章をもとの「ぎょっとした顔」にしてたとして)
「わあ、いきなり掴まないでよ。なに?」
③真美は明らかに動揺した声で言った。
↓
(①も②も元のままだとして)
俺が突然つかんだから驚いたらしい。
④なんか──病気、とか
↓
カット
⑤「──関係ないでしょ。放っといて」
↓
(①~⑤全部あったとしても)
「なんだ、びっくりした。うーん。女の子にそんなこと聞かないでよね。ちょっとその……頻尿気味なの」
(このセリフ書いて爆笑した)
⑥「どうした?」
「真美、なんか変じゃないか?」
「あー……、たしかに。たまにおかしいよな、あいつ……」
↓
(①~⑤全部元のままだとしても)
カット
はい。こんな感じで、適宜【怪しさ度】を変えられます。
特に「頻尿なの」からの、優斗と主人公の会話がカットされれば、【一部の読者は】
「なんだ伏線じゃないやん」
ってなります。だって頻尿ならたくさんトイレ行くの当たり前だから。解決してるんです。
でも一度惹き付けた分、【怪しいと思う読者も】残ります。
はーい、次行きます。
[bの書き方]
[b.そのページの最後に怪しい感じで書く。]
小説のね、最後の行って、伏線書くのに適してるんですよ。なんかわかんないけど。
やっぱりそこで一旦目が留まるじゃないですか。それで「次のページ」のリンク押すじゃないですか。だから目立つんだと思います。
ということで、さっきの【真美の拒食症】、やってみますね。
じゃあいいですか。
なろうページの、第16話、一番最後だとしますよ。
******
俺は目の前のステーキにかじりつきながら、優斗の話を聞いていた。
「あの先生、本当にうざくねえ? いちいち遅刻の話ばっかり俺に吹っ掛けてきてよう。俺だって遅刻したくて遅刻してるわけじゃないっつーの」
「まあまあ、そう怒んなって」
俺は真向いに座る優斗に、そう宥めた。と、そこで俺の隣に座っていた真美が、小さな声で言った。
「ごめん、ちょっとトイレに行ってきていい?」
「いいよいいよ。席どくな」
俺はいったん席を外して、奥に座っていた真美を通してあげた。真美の座っていたあたりの机の上には、まだ食べかけのハンバーグが残っている。一番最初に真美の料理が届いたのに、真美ってけっこう食べるの遅かったんだな。
視線をずらし、トイレに向かう真美をなんとなく見やった。彼女の華奢な背中が目に入る。
『トイレ行ってきていい?』
なぜかその言葉が、いつまでも頭の中で反駁していた。
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どうでしょう。いけましたかね。
最後の一文を
『食べかけのハンバーグから、いつまでも目が離せなかった』
にする流れもありなのかもしれないけど……。うーん……。食べかけのハンバーグに目が離せないってなんぞ……。
まあ、そこはお好みで。
とりあえず、文章がここで終わってると、少しだけ怪しいですよね。
「トイレになんか関係あるのかな」ってなりますよね。
この伏線の貼り方で大切なのは、
【いつまでも】と【していた】です。
最後の一文に【いつまでも】という単語を入れて、文末は【〇〇していた】にするんです。
例えば、
・少年はいつまでも彼女の姿を見ていた。
・いつまでも男は食べ続けていた。
・その女は、いつまでもしゃべり続けていた。
とか??
三人称視点の文章なら、こんなのもOK
・彼がじっとそれを見ていることに、誰も気づいていなかった。
・優香の発言を聞いている者は、誰もいなかった。
・そのつぶやきを聞いたのは、誰もいなかった。
・ただ一人、優香だけが違う方向をみていた。
こんな感じです。
【ただ一人】とか【〇〇以外、~~なかった】とか、【誰も~~なかった】とかが使えます。
これは、三人称だけです。厳密には、一人称でやるとおかしいです。
あ、これならいいですよ?
・俺がじっとそれを見ていることに、誰も気づいていなかった。
・俺の発言を聞いている者は、誰もいなかった。
・そのつぶやきを聞いたのは、誰もいなかった。(つぶやいたのは俺)
・ただ一人、俺だけが違う方向をみていた。
でも、【主人公】以外の第三者が↑の行為をしているなら、厳密には使っちゃだめです。
だって、【誰も見てなかった】のに、なんで主人公描写してるんですか!!!!
まあでも、厳密にはおかしい(ような気がする。私的には。でもルールはわからない。普通の本でも使ってる)気がします。
あ、あと、その小説が、【主人公が過去を振り返って書いている】ものなら、なんの問題もありません。日記形式とかですね。
・俺はそのとき気づかなかったのだ。このあとあんなことが起こるなんて。
とかもありです。これも伏線になります。
まあ、【一人称でやらない方がいい】というのは私の小説を書くときのこだわりでしかないんで、
「いやいやいいでしょ」って思った人は使ってください。
実際、一般に売られてる本でもよくあると思います。知らないけど。
これ書くの忘れてた。
[c.よくあるネタを使う]
これは、いわゆる死亡フラグ的なやつです。
「俺、戦争から帰ってきたら絶対あいつと結婚するんだ!」
はい、こいつ死にますよね。ハイ。他にも、
「こんな男のことなんて、絶対好きにならないんだから!」
はい、絶対こいつ好きになりますね。ハイ。他には、
「絶対あんな船乗ったりしないんだから!」
はい、乗りますね。
こんな感じです。他には思い浮かびません。まだあったら教えてください。