(最終話)光の差す大聖堂と、解けた結び目
ジュリアンたちへの判決は、迅速かつ苛烈なものだった。
公爵家の資金横領、伯爵家の財産横領、そして王家が保護する令嬢に対する暗殺未遂。
積み重なった数々の罪状に対し、王太子アルフレッドの主導のもと、厳罰が下された。
ジュリアンと義母は全財産を没収のうえ、北方の最果てにある鉱山での生涯強制労働。
異母妹のミレーヌはすべての貴族位を剥奪され、平民へと落とされた末に辺境の修道院での一生の贖罪が命じられた。
前世で私を暗闇へ突き落とした者たちは、二度目の人生において、二度と日差しを浴びることのないどん底へと静かに消え去っていったのだ。
◇
それから、半年後。
澄み渡る秋晴れの中、王都で最も壮麗な大聖堂に、清らかな鐘の音が響き渡っていた。
「……セレスティア様、本当にとっても美しいですわ」
鏡に映る私は、純白のシルクに繊細な刺繍が施されたウェディングドレスに身を包んでいた。
胸元には、あの日取り戻した母の翡翠のペンダントが、静かに温かな光を放っている。
鏡の向こうから歩み寄ってきたのは、タキシード姿のアルフレッド殿下だった。
社交界で「氷の王太子」と恐れられていた面影はどこにもなく、私を見るその瞳には溢れんばかりの愛おしさが宿っている。
「セレスティア……本当に、俺の妻になってくれるのだな」
「ええ、殿下。……いいえ、アルフレッド様」
微笑みかけると、彼は愛おしさに耐えかねたように、私の白手袋の上からキュッと手に口づけを落とした。
「前世で……お前を失ったあの暗闇の中で、俺は何度も夢を見た。お前とこうして笑い合える日を。……夢ではないのだな」
「はい。夢ではありませんわ。私がここにいます。あなたの妻として」
重厚な扉が開き、パイプオルガンの荘厳な音色が二人を包み込む。
何百人もの参列者が見守るバージンロードを、私たちは一歩、一歩、踏みしめるように歩いた。
神前での誓い。
「健やかなるときも、病めるときも、命ある限り愛することを誓いますか」
「誓います。……俺の魂のすべてをかけて」
迷いのない力強い声で答えたアルフレッド様が、ヴェールをそっと持ち上げる。
重なる視線。かつて「消えてしまいたい」と絶望していた私の世界は、今、彼の手によって眩しいほどの光で満たされていた。
そっと重なる唇は、とろけるように甘く、そして温かい。
(ああ……私、今、すごく幸せ……)
誓いのキスが交わされた瞬間、大聖堂に割れんばかりの拍手と祝福の歓声が響き渡った。
「愛している、セレスティア。二度目の人生も、その先も……永遠にお前だけを愛し続ける」
「私も愛しています、アルフレッド様。……私を見つけてくださって、ありがとうございます」
寄り添う二人の影が、温かな木漏れ日の中に重なり合う。
「愛されない」と諦めていた私の物語は、今、世界で一番甘く、解けることのない幸せな愛で満たされていた。
【完】




