055 護衛依頼16
カンパたちはハダリーたちと合流すると、イキサツを説明しながらあの村に戻っくる。
ハダリー隊長はカンパとアイネに、
「よくやったな、お前たち! これでまた、軍務卿にお褒めいただけるぞ」
とだけ言う。
捕まえた盗賊、ガナリの足取りは村に近づくにつれて重くなり、村に入るとますます重くなる。村では領主軍を中心に片づけは行われていたが、重く沈んだ村の雰囲気まではなくせなかったようだ。
アイネがカンパに聞く。
「ねぇ、カンパ? ガナリのおじさん、これからどうなっちゃうの?」
カンパが1片のためらいも見せずに答える。
「そんなの斬首か縛り首だろ」
「そんなぁ! そんなのカワイソすぎるよ!」
カンパがアイネに近づき、声を潜めて警告する。
「……そんなこと言うなら周りを見てみろよ! 盗賊たちは他人のダイジなモノを奪ってんだ。だからその代償に奪われてもモンクは言えねぇだろうがっ」
アイネが周りを見渡すと、兵士に連行される男に気づいたらしい村人が何人か、憎悪のこもった眼差しを向けたまま立ちつくしている。その眼差しはガナリが村の中を移動するのに合わせて、髪の毛1本分もぶれることなく追従していく。
アイネの口から、悲しみの言葉がこぼれる。
「……そんなぁ……」
ガナリが、光を失った声でいう。
「仕方がないんだ……やさしいお嬢さま。これが……俺たちのやってきたことの報いなんだから……」
カンパが言う。
「ほらな! 本人もわかっているんだから、お前がイチイチしゃしゃり出んなよ」
アイネは何も言うべき言葉が見つからない。
一行はそのまま村の中を少しずつ、しかし着実に進んでいく。そしてその先にあるのは……村の中央広場で、兵士たちから報告を受けたり指示を出している人物がいる。軍務卿だ。その身なりや立ち居振る舞いから、軍務卿ベナッジョその人を知らない人が見ても、兵士たちの統率者で厳格な人物だろうということがうかがえる。
盗賊のガナリが、まさにそんな感想を抱いた人物だ。その上彼にとって、村に足を踏み入れてから増幅されつつある取り返しのつかない後ろめたさが、その統率者の畏怖の影をより大きくより色濃くしていく。
ガナリはだんだんとその人物に近づいていくことが、恐ろしくなってくる。その恐怖が彼の足にからみつき、その足取りを重くする。
実際、彼の歩く速さは、みるみる遅くなっていく。心配になったアイネが、思わず声をかける。
「オジサン、だいじょうぶ? フルえて……」
しかしその声は、怒りに満ちた声で上書きされる。
「さっさと歩け!」
ガナリの後ろを歩いていたブーバーだ。そして……
【ガナリ】
背中に衝撃を受けて、つんのめる。
背中をケられたんだとわかったが、そんなことはどうでもいい。とりあえず今は、この先に行きたくない。あの人のところには、近づきたくない。
理由はわからない。でもそう感じるんだ。近くにデッカイ肉食動物かいるとわかったときみたいな、重圧を感じる。
「さっさと進めって言われてんだろうが!」
今度は左にいる男が、そう言いながら近づいてくる。そして手の届く距離に近づくと、俺の服の襟の辺りをつかんで引っ張り出す。
そしてそれでも重い、俺の足……
自然と上半身を突き出した、前傾姿勢になる。
「マレ! ヤメてあげて! オジサン、苦しそうじゃん」
狭くなった意識でも、その声が誰のものかはわかる。あのお嬢さまのモノだ。ただ少しだけ、心が軽くなった気がする。
背後の男が彼女に言う。
「おいおいおい! 俺たちゃ慈善家じゃねえんだぞ! 盗賊に優しくしてどうすんだ?」
あの少年までも、お嬢さまに言う。
「おい、バカ女! ジャマすんなよ!」
さっきまで怖くてどうしようもなかったにもかかわらず、俺は口に出していた。
「……あ……あ……あるくから! おれ、は、歩くから! お嬢さまをイジめるのはやめてくれ……」
視界が狭まり、ふらついていた。それでもかまわず、足をだす。案の定、よろけるが、胸ぐらをつかまれているので、バランスを保てる。
不安そうに見つめる少女の気配を感じる。彼女のためにも歩かなければ……。そして気にしていないようで心配してくれている少年のためにも……。
それでもまだ不満だったのか、隊長らしき人が言う。
「ボゴタ、手伝ってやれ。軍務卿がお待ちだ」
胸ぐらをつかまれていたのとは反対側の腕を、大男につかまれる。力強さによって持ち上げられることによって、歩くのがだいぶ楽になる。
進行方向を見ればひらけた広場があり、あの恐ろしい男が立っていて……こちらに気がつく。
足がうまく動かないが、右と左につかまれて引きずられていく。その男の元へと……。
次話に、体の一部を欠損させる暴力表現があります。




