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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第四章

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朱禪院 晴③


「君にお願い事があるんだ」


「……それは、取引ってこと?」


「う〜ん 別にそんな大仰なことじゃないけど、君にとって飲み込みやすいなら、それでもいいよ」



「お願いって?」


「ここ最近、変な連中に狙われててね それらの調査の手伝いをお願いしたいんだ」



「変なの?」

俺以外にも狙われていたのか?


いったいそれは…


その時、背後で気配がする


「はぁ 噂をすれば、だね」


振り返るとそこにいたのは


罪獣シンだと? おいおい……」



界顕体め… 妙な置き見上げを



「もしかして、アレに見覚えが?」


「ああ、あれは罪の獣 人から生まれる罪業だ」


俺は構える 


今の俺でどこまでできるか 


人を相手にするのとはわけが違うからな 


ブランクバレットを生成するが…


ちっ


舌打ちがでる 生成に時間がかかりすぎだ 


全盛期なら秒もかからずに数万発は生成できた 


だが今は…


空器ブランクの匂いがするね」


匂う、ね


少し笑ってしまった


馬鹿にするつもりで、ではない


俺はブランクの匂いなんてわからない 


無臭だとすら思っていたくらいだ


「できれば、生け捕りにしてほしい 調べたいんだ」


「それは無理だ アレは倒すと消える」


「そっか… なら、ボクも加勢しよう」


「生け捕りにできると?」


「君が手伝ってくれればね」


そう言って彼女は懐から煙管キセルのようなものを取り出す


ナノ粒子クラウド! “情報を運ぶ媒体”

カードリッジ型ではなく、調合型のカプセルをキセルにセットしていく 


キセルから煙、いや気化した蒸発香が出てくる 


これではキセルというよりシーシャだろうか


匂いが湧き立つ


匂型空器アロマブランク


ノインツェンの使っていたタバコ型のやつに似てるが、あれは使い切り型 


彼女のは都度細かい調整・調合ができる 


どっちが優れているというよりも、好みや使い勝手の問題だろう




煙が罪獣に迫り、絡まるが、凶暴な獣はこちらにそのまま襲い掛ってくる


「殺さないように捌いてくれる? 直に、動けなくなるから」


「まかせろ」


俺はシンに向かって駆け、フォースエッジで切り払う

真正面からではなく、飛びかかってくるシンの懐に踏み込んで腹をなぞるように刃を通す 


ブルブル、ゾワゾワと妙な波動が返ってくる


そして、グニャリと空間が歪み、シンに直撃せずに透過する

超能力の精神波動に触れた時の感覚に似ている 


精神波動のフィルター効果により、マジックミラーのような原理が働く 

こちらからの物理的な干渉を防ぎ、あちらから一方的に攻撃できる


潰すには、波動を合わせるか、逆位相で打ち消すか、もしくは存在強度を高めて力技で叩き潰すしかない


それにしても……


以前より、完成度が上がっている?


数体のシンを相手取るが、いつもより手こずる


踏ん張りが効かない 押し込まれ、吹き飛ばされる!


ぐっ!


シンが冬の視界から消えた! 


観測網を広げるが、観測の網にかかるたびに次元の角度が変えてこちらに襲いかかる!


まずい!


シンの爪がこちらに襲いかからんとしたとき


「"想起”せよ 過去の轍を」


晴はそう呟く


シンの爪が俺をすり抜ける 


いや、違う 


今のは… 


シンは確かに爪を俺に触れたはずだった 




シンの位置がまるで時間でも巻き戻したかのように

元の位置へ移動した


「想起せよ 古傷を」


そう言うと、シンは引っ掻き傷や剣で斬られたような傷が体中に浮かび上がる 古傷が開いて絶叫する


「……やるな」 

時間を巻き戻してるわけじゃない

思い出してる 過去の座標や、傷の痛みを



「とはいえ、時間かかっちゃうから無防備では使えないけどね」



「充分だ!」


ならば!


俺は無頼を変形させる


「それは?」

晴は不可思議にみやる


「多重次面球盾」


シンは先ほどと同じようにこちらの観測を振り切るように次元を屈折し続けるが


バコン 


進路途中で球盾に突き当たり、はたき落とされる



こちらの観測網から逃げるだけの速さがあるのなら、そもそも逃げられるような角度を与えない 


相手の動きを予測して、先に移動先へ、盾を"置く"



「いいね 素晴らしい」

晴は恍惚とするように笑顔で拍手する



複数のシンを相手取りながら、球盾で叩き落とし続けた


だが


相手の数も強度も今の俺には厳しい


ビシリ 


数度の攻撃で盾に亀裂が入る 


クソ! 強度が足りない! 処理能力が追いつかない!


「ぐっ!」


シンの体当たりが直撃する


『冬!』


冬真が心配そうに声をかける


「平気、だ!」


致命傷はない 


存在情報の処理能力が遅い


身体能力の低下発生


判断にいちいち"ラグ"ができる


いつもほど、身体が思う通りに動かない!


立ち上がろうとするが、足が崩れる


ぐらりと揺れた体勢を、シンは見逃さずに飛び込んでくる


なんてな


冬はほくそ笑む


対処が追いつかなくなるよりも前に、わざと隙を作り飛び込んできた相手に球盾をぶち込む


「ギュピ!」


変な悲鳴を上げて吹き飛ぶシン


無駄に大きく展開しても的がデカくなるだけで意味がない


なので、球盾を小さく圧縮することで存在強度を担保し、複数の球盾を相手の脛、首、腰の3点にぶつけ、相手の突進力を制限する


こちらを警戒し、ならばと晴を狙うが、晴の直前でまたも球盾に弾かれ ピギャと悲鳴をあげる


「OK  もう充分だよ」


晴がそう言うとシンの動きが鈍る


シンの攻撃が空振る 避けた訳じゃない いない敵でもいるかのように空に爪を放る


互いに傷つけあい、そして……フリーズした!


まるで酸欠にでもなったかのようにガクガクと震え、ジリジリと存在の処理フレームが圧迫されて固まっている

しかも…!


「持続してるな」


煙がブランクを自動で取り込みながら半継続的に相手の存在処理能力を圧迫している


俺のブランクバレットよりも継続時間も長ければ、扱える情報量も遥かに上だ 


変な笑みが出る 

色々と、学びが多いな


「ありがと〜 君のおかげで彼らを捕らえることができたよ〜 ボク一人だと、直接の戦闘ができなくてね〜 ぼくの能力は補助よりだからさ」


そう言って晴は ふぅ〜と息を吐く

本当にあまり戦闘は得意ではないのだろう 緊張している空気が伝わってくる


「これについては、あとで色々聞くとして〜 とりあえず、もう一個の問題について話そうか」


「もう一個?」


今度は何があるんだよ


「つい先日急に出現した塔のこと、話そうか」


塔… 嫌なことを思い出す


「これを」

晴は懐から出した香水を冬に渡す


「塔が突然出現したことでいっとき騒ぎになったけど、そのときは謎の霧がでてたし、私が即座に存在を隠蔽したから、みんな幻だと思ってすぐに忘れた でもね、塔は存在してる その香水をつければ、感じられるようになるよ」


冬は受け取った香水を己に振りかける


そして


「マジかよ…」

隠れていたものが姿を現す


それは界顕体の作った塔だった

とんだ置き土産だ…


俺は次の波乱を予感して、人心地つくことさえできなかった



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