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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第三章

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復讐の帰還者


町が騒がしい

これだけの戦闘が起きれば当然だ


またダエワが攻めてきたのか 


戦闘が行われたのは市民区の外、というよりも先日のノルマの反乱とアカ・マナフとの戦闘でかなりの死者が出たせいで、ほとんど人がいなくなってしまったせいもあり、決して嬉しくはないが住民に直接の被害は出ていない


しかしこれほど激しい戦闘だ


残ったアニマ達も武器を取り、続々と出てくる




赤錆の代表は焦っていた


まさか、負けるとは思っていなかった


だからこそ、誘いに乗ったのだ


それは町の破壊状況をみれば一目瞭然 


ディラフトシュラッケン、ノインツェン両名はこの惑星の都市程度の戦力なら単独で殲滅できるだろう


その戦力を赤錆都市に向けられたらと思うと背筋がゾッとした 


そして、その戦力をすら上回る存在が今、こちらに向かってきている


生意気な小僧、なんて言葉はもう使えない 

彼にとっては死神の行進にしか見えなかった


なんとかせねば、私だけでも、なんとか生き残らなければ! 


彼の頭にあるものはそんなことばかりだった


だから…



青鉛統主に協力を仰いだ うれしそうに頷き、笑った

三日月のように口元を緩ませて




「君は、僕のことを、その、知って、るの?」


「…」


「間、怖っ な、何か言ってくれる?」


「あんたが本当に冬真なのかどうか、判断に迷ってるのよ 話していいのかどうか…」


「え? それってどういう…」


「まぁ、いいわ」


「いいの? いや、よくないでしょ!? どゆこと?」


かなり重要なことでしょうが!


「真白冬は、ほっときな」


「え?」


意外な名前が出た


「あんたがいなくても死にやしないわよ それこそ、ゴルジラフでもない限りね」


その言葉にピクリと反応した


「彼は、何者、なの?」



「超越者」


「え?」


「ようは理屈の通じない相手ってこと」


「それなら冬だって、そうだよ」


ちょっとムキになってしまった 冬が負ける姿が僕には想像できなかった でも、ゴルジラフ 彼を見たあとだと、彼女の言葉を否定しきれない僕がいた


「そこはいいわよ 別に ゴルジラフが負ける姿なんて想像できないけど あたしにとって重要なことじゃないもの あたしにとって重要なのは、あんた」


「…なんで?」


僕なんてなんの取り柄もない ただたまたま冬の近くにいただけの凡人だ


「あんたはあたしとここにいるの あそこに行ってもあんたは何の役にも立たない 邪魔になるだけよ 無駄死にはしたくないでしょ?」


「…確かに僕は超人じゃない でも、何かの役には」


「立たないわよ」


!!!


「わかってるでしょ? あそこらへんの連中ってのは、もう別の生き物なの あんたがいくら頑張って、血の滲むような努力をしたところで、到達できる領域じゃない 誰も彼もが努力で世界をひっくり返せるようなら、世の中もっと大変なことになってる」


「…それは」


僕は反論できなかった


「努力が無駄とは言わないわよ でも、競う相手を間違えても、苦しむだけよ」


「もう一度だけ言うわ 真白冬はほっときなさい どうせ死なないわ」


その言葉に僕は引っかかりを覚えた


「冬は死なない? なら、ほかの人は?」


「……」


マナツは押し黙った


「マナツ… マナツ、さん 僕はやっぱり行くよ」


「あんたね!」


「冬はできると思ってるから頑張るんじゃない 頑張りたいから頑張るんだ」


ホントはわかってる 冬はナギのことも、ほかのことも、どうでもいいって投げ出してるわけじゃない


今できることを、一つ一つ全力で向き合ってる


頭ではわかってる わかってるつもりになってた


それなのに僕は…


「あんた、何言って…」



「冬はさ、怖いし、厳しいし、キレると手が付けられないし、普通だったらまず関わらないと思う でもね どういう因果か、僕らはここにいる 冬は僕を無視しなかった 僕の気持ちをちゃんと聞いてくれた 向き合ってくれたよ 話が通じないわけじゃないんだ」


「…」


「才能がないとか、そういうのはどうでもいいんだと思う 誰にわからなくても僕は知ってるし、見てきた 誰よりも近くで だから行くんだ 役に立つからじゃない もう、ナギの時のような失敗はしたくない 僕は、冬の相棒だ」


今の僕の役割は彼を突き放すことじゃない 

ましてや僕だけ逃げるなんてできない


「…死ぬわよ あんた」


「死なないさ 死にそうになったら 冬に泣きつくさ」


僕は冬を信じてる 


例えそれがどれだけズレていた発言でも 


僕は今ここでそう言い切らないといけないと思った


「…あんたは、大馬鹿野郎 昔から、ずっと…」


背後で足音がした


「そうだね〜 あれに釣られる連中の気がしれないな」


見知らぬ声が響く


いつの間にかそこに男が立っていた


そこに立っていたのは——

「ナギ!」


ナギと見たことのない男が立っていた

尖った髪は白く、メガネをかけている 

整った顔立ちではあるけれど、あまり印象に残らない

そんな感じの少年がいた 


「あんたがなんでここにいるわけ? 許可は、とってないでしょ? アルカディアは何してんの?」


アルカディア? 聞き慣れない言葉だった


「あんた、誰なんだ?」


「僕? 僕はね、真黒」


「真黒 冬始… いや、真黒 冬って名乗ろうか」


「ふざけてるのか?」


なんなんだこいつは… 冬って…


「真白の友人だよって言ったら、もちろん信じてくれるよね?」


何がもちろんなのか カケラも信じられなかった

嘘っぽい笑顔も含めて、胡散臭すぎる


「それにしても君、この娘の知り合いなの?」


「僕の妹だ!」


ビクリとナギが震える


「へぇ〜 そうなんだぁ〜」


その表情を見て、僕は選択を間違えたのだと悟った


「君、お兄さんがいたんだねぇ〜」


それは粘りつくような声音


いじめっ子がいじめられっ子の大事にしてるものを見つけた時の喜悦 


それに似ていた


「やめて、ください お願いします」


ぶるぶると震えだし、下を見ながら小さな拳を握って懇願するナギ


「命令だ、ナギ 喰らえ」


真黒はそれを一切聞かずにそう告げた


ナギの身体がガタガタと揺れ出す


「逃げて、お兄ちゃん…!」


ナギの顔が剥がれ落ちる

そして青い炎をまとった異形の姿に変身する


「なんだよこれ なんなんだよ!」



「てめぇ! ナギに何しやがった!」


「え? 知りたいの? 本当に?」


ゾクリとした


「彼女に何があったのか 何をされたのか 本当に知りたいのかい?」


三日月に笑う男の瞳は赤く、そして瞳孔が縦に割れていた 


まるで爬虫類だが、それよりもおぞましいものを感じた


僕はこいつのことを何も知らない 


けれど、間違いなく敵だと判断した


「冬真! 逃げなさい! あんたじゃどうにもならない!」


「でも…!」


「わかんないやつね! 逃げろって言ってんの!」


マナツは僕を突き飛ばす


「手を引きなさい これ以上やるつもり? それなら、開戦宣言ととる」


「君ひとりで僕らの相手、するつもりかい?」


険悪な雰囲気がひりつく あと一歩 踏み込めば…!


「いい加減にしろ真黒 まだ彼女達と事を構えるつもりはない」


漆黒の髪の驚くほど透き通る肌をした、美しい男が出てきた


「ここで彼を削れば、真白はさらに弱体化する 安全に、狩れるだろう?」


「一理ある だがここにいる彼は本体ではないだろう? それに彼女達がいるのではな」


「…ま、だね 銀さん わかったよ 手間な敵は作るなってね」


とても謝ってはいない口調だ


「ノインツェン伯爵が敗北いたしました どうなさいますか? 真黒様」


青い髪の大柄な男が真黒と呼ばれた男に頭を下げる

いかにも屈強そうな男が頭を恭しく垂れているのを見て違和感を覚えるほど


「ま、だろうね あのブサイクが負けるとは思ってないよ 腕っぷしだけはゴリラなんだから 蒼龍 準備は、当然いいだろうな? アレを、狩る 麗との再会の前に邪魔者は消しておかないとね」



「仰せのままに、真黒様」


聞き捨てならないな


「冬を、狙っているのか!」


「冬ねぇ〜 冬■だろう?」


ノイズが走って聞こえなかった 今、なんて言った?


「は?」


「ああ、やっぱり名前が消えてるのか いいよ 今ので大体わかったから むしろ好都合だ 弱ってるならやりやすい」


! コイツらッ


だがマナツは僕の前に手を出す


「勝手に前に出ないで まだ大したことはできないだろうけど、それでもあんたじゃ、素の殴り合いでも勝てないわよ」


…それは、なんとなくわかる というか人のように見えるが、彼らからは何か違和感を感じる 得体のしれない何かを感じるのだ そう 灰銀竜に近い感じを


そう思っていると右手が疼いた 冬は灰銀竜を刻紋化して僕に刻んでいた 僕が持っていたほうがいいだろうと


しかしあれ以来一切反応がなかったが、彼らに反応してる?


「こっちは三人と一匹 そっちは一人と一匹 やる?」


この野郎! 


「なら妾も参戦しようかの〜」


「俺も当然、混ぜてくれるよな?」


ゴルジラフと名乗った大男が帰ってきた そして一緒にいる紫色の髪の女性は…


「これで、数の上では同数ね 今度はこっちから聞くわ 数的有理が消えた状態でも、やる?」


「奴らは堂々と正面から戦い、決着はついた その疲弊している奴を狙おうなぞ、見過ごせんな」


ゴルジラフの圧が増す 


先ほどまで晃と戦っており、決して軽い怪我ではないというのに、まだまだ余力を残しているようにさえ感じる


「はぁ あんなののどこがいいんだか、君等もスキモノだね〜 みんな趣味が悪くてイヤんなるよ」


肩をすくませる真黒


「ま、いいさ 今はまだね 冬真って言ったっけ?」


「…なに?」


「ナギを助けようとか思ってるのならそれは勘違いだよ」


「どういう意味だ!?」


「もう、手遅れだって意味さ」


「!!!」


顔が蒼白になった その言葉の意味を、僕は、飲み込めなかった…


「ふふっ 真白によろしくね あっ 名前言えば伝わるから それじゃね」


「麗は——今度こそ、僕がもらう」



そう言って彼らは薄くなり、そして空気のように消えていった

最後の瞬間、彼の瞳が微かに虹色に輝いているように見えた



「なんなんだよ一体…! なんなんだ!」


僕は強く拳を握った 



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