彼女の影
会談が終わり、今は極夜統主と卓を囲んでいる。
「どうだったかね? 白夜統主と直接面会して、本物だと思うか?」
「……間違いありません。彼は在核を所持している。存在IDも確認しました。本人で間違いありません」
存在IDは隠蔽できない。
存在というものは不定形で抽象的なものだが、それでも存在はするし、絶対に変わらない情報がある。
その人がその人であるという情報だ。例えば完璧なクローンを作れても、存在IDが重複することはない。
「そうか……君がそういうのなら、そうなのだろうな」
「虚無には、死者を蘇生させる力があると思うかね?」
重要な話だろう。
「……できると思います。やり方次第ですが……」
この世界において、無の力は死の情報よりも強力なのだろう。死んだという事実を無かったことにしたのか、それとも本当に生き返っているのか。
冬にはそこまではわからなかった。
「死者の蘇生か。そのようなことが技術化されれば、世の中がひっくり返るだろうな」
どのような世界であれ、生きとし生きるものには死というものは多かれ少なかれ付き纏う、恐怖の対象だ。
それすら克服できる可能性があるなら、人は目を離せないだろう。
「白銀でも、ひそかに虚無の研究がなされている、と噂がある」
それを調べに自ら敵地に乗り込むか。危険を冒すのがよほど好きらしい。
「……君が、四季の開発者なのかね?」
「その質問にはお答えしません」
「そうか……」
答えないのであれば無理に聞くことはできない。話題を変える。
「冬、私の都市で雇われないか?」
率直な誘いだった。
「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。もうどこかに雇われる、というのはこりごりですので」
それに、自分にはやるべきことがある。
「ふむ、残念だよ」
本当に残念そうではありながら、予想できていた回答でもあるのだろう。
「君はこれからどうする?」
「街を調べます。この機を無駄にしたくはありませんので」
「そうか。だがくれぐれも」
「わかってます。少なくとも俺が俺だとバレることはないですよ」
「頼もしいな。それでは頼む」
調べなければならない。誰が生き返り、誰が死んだままなのか。その違いはなんなのか?
白銀は全員が生き返ったわけではないことがわかっている。それを調査しにいく。
その生き返った人物の中にいるかもしれない、とある人物のことがずっと頭から離れなかった。
街を歩く。かつてとは少しだけ変わった街並み。
そこで、ふとすれ違う女性。
はっとなる。
「麗……?」




