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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第2章 

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白銀白夜


白銀都市の会議室へ通された。


かつても何度か足を運んだ場所だったが、そこに入った冬は、思わず息を飲んだ。白銀白夜。

――かつて自分が殺した恩人が、あの時と変わらぬ姿で目の前に立っている。


極夜統主と白夜統主がテーブルを挟み、両者が向かい合う。冬は存在を消し、部屋の隅で影のように潜む。白夜統主には冬の姿は見えない。


「カッカッカ、よく来たよく来た、極夜坊! 久しいのぉ。」


白夜統主は豪快に笑い、椅子にどっしりと腰を下ろす。白髪が光に透け、年齢を感じさせぬ力強さが全身から滲む。その存在だけで空気を支配するカリスマ性があった。出会った頃から変わらない、不思議と人の視線を引きつけるカリスマ。


「坊はやめてください、白夜統主。私は都市の責任者として来ておりますので。」


極夜統主は背筋を伸ばし、若さをにじませつつも、都市トップとしての威厳と慎重さを保つ。


「つれないことを言うな、誰も口出しなどせんし、させんよ。」


さすがというべきか。傲慢にも聞こえかねないその言葉には、白銀都市の頂点に立つ者の余裕と説得力があった。


「なぜ性急にことを進めようとするのです。ロハネの遺跡攻略などと。世迷い言を。あれは手を付けたが最後、すべてを不幸にする。」


極夜統主は都市のトップとしての立場で、その危険性を告げる。


「わかっておる。しかしじゃ、あれは儂らが攻略せねばならんのじゃ。」


白夜統主は目を細め、力強く応じる。深くは語らずとも、その意思は微動だにしない。


「引く気はないと? 本当に都市としての意向なのですか? 赤錆都市アカガネ――いや、緋紋天ヒモンテンが黙ってはいないでしょう?」


極夜統主は都市間のリスクを理知的に指摘する。


「緋紋天なぞに口は出させんよ。」


白夜統主はにこやかに笑う。

威圧ではなく、自然と人を従わせるカリスマ性があった。


「この都市は一度滅んだ。誰のいたずらかは知らんが、儂らは生き返った。しかしそれが奇跡なのか呪いなのか、判然とはせん。」


「奇跡や呪いですか。……科学全盛の時代に、妙な表現をなさりますね。」


極夜統主は少し眉をひそめる。


「そうとでも言わねば、説明もつかん。じゃがな、なぜかこのことにはあの者の――真白が関わっておる気がしてならんのじゃ、わしゃ。」


白夜統主は肩を揺らし、笑う。

その言葉には確信が混ざる一方、どこか過去への複雑な思いも滲む。信頼か、それとも。


「15年、その間あやつは姿を現さなんだ。じゃが、それでもいずれあやつはわしらの前に立ちはだかる、そんな予感がするのじゃ。じゃから、準備をせねばならん。」


あやつとわしらはすでに袂をわかっておる。一度切れた縁は二度と戻らん。わしらは殺し合うしかない。


「それに、奇跡が起きたのは、今回が初めてではない。」


「では、あの噂は誠なのですか?」


「四季、儂らとあやつがぶつかった原因じゃ。」


「蘇ったのは彼の仕業だと?」


「それはないじゃろう。儂らを蘇生させて放置する意味がない。」


「彼のことを、憎んでますか?」


「あやつは儂のせがれを殺した。許すわけにはいくまいよ。」


そう言いながら、彼の瞳には憎しみだけではなかった。


「あやつは生まれからして恵まれとらん。異形の面貌で生まれ、親に教団へ売られ、人体実験のモルモット。そこから命からがら逃げ出しても、戸籍のない子供が、この都市で生きていけるわけがなかった。必然、流れ着くのは外区。あそこでもまともな子供は生き残れない。じゃがあやつは生き残った。儂の目に留まるほどの存在になってな。」


「外区でまともな精神は育たん。都市からすら見捨てられたものの吹き溜まり。あそこで育った奴はみな一様にどす黒い、濁った瞳をしてる。あやつは少々特殊じゃったがな。」


「あやつは憎しみを必死にうちへうちへと抑え込んだ。社会のなかで、なんとか適応して生きようとしたのじゃ。じゃがそれを環境が許さなかった。どれだけ努力しても認められぬ、結果を出しても僻まれる。そういうのはな、膿むんじゃよ。」


儂らがあやつを追い込んだ。追い込んで、追い込んで、追い込んで、破裂するまでな。


そう言って白夜は手のひらを握り拳から開いて見せた。


「話を戻そう。儂はあやつと決着をつける。今度は、負けんよ。」


そのための遺跡攻略。


極夜統主は短く息を吐き、慎重に頷く。


「……承知しました。準備段階での行動は控え、安全を最優先に進めましょう。ただし、行動に移す際は都市への被害を最小限に、慎重に計画を練ります。いいですね?」


その声には若さはあれども、都市への不利益は看過できぬ、白夜統主相手であろうと、その姿勢は崩さない。


白夜統主はにこやかに手を振る。


「うむ、焦りは禁物じゃ。失敗を恐れて前に進まぬのは臆病者じゃが、ここぞという時に踏み込めるものだけが英雄になる。極夜坊も覚悟しておけ。」


白夜統主と極夜統主。


調整のための会談は続く。白夜統主の溢れる豪胆さと、極夜統主の慎重さの緊張感の間で、冬は静かにその場を見守った。


短めです

切りのいいとこで一旦切りました

なので、続きを15時30分にもう一度投稿します

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