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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第2章 

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監査所の実態


あちら側では、今日はもうやることもない。


こちら側でやるべきことをやろう。


俺は今から監査所に向かう。避難民として。


監査所は人で溢れていた。


たくさんの不満、不安、恐怖、懇願、救いを求めて皆がここに集まってきている。


俺にはどうすることもできない。


今、自分にできることをやるしかない。


中に入り、手続きを済ませて教室に向かう。


学園というものはいい思い出がない。嫌な感じだ。


教室の前で中に入ろうとしたその時、中から声が聞こえてくる。


「ねぇ~、なっちゃん先生ってぇ、恋人とかいないの~?」


どこかで聞いたことのあるような女の声だ。


まるで本当の学生のような会話をしている。この町に入り込みに来たという自覚がないのだろうか。


「お答えできません。監査に必要のない質問です」


「え~、つまんな~い。なっちゃん先生、顔は良いし~、ひわいなお胸ぶらさげちゃって~。もしかして、ここの生徒さん狙ってたりするの~? きゃ~、職権乱用~」


下品な女だな。品性もなければ知性も感じないタイプの女だ。この短い会話だけで、こいつは好きになれないなと思った。


「てかさ、なっちゃん先生ってなんでそんなダサいカッコなの? 女なんだから着飾らなきゃ」


この女、一体どこから来たんだ? この世界でこんな会話をするバカがいるのか。


「私の服のことはいい。あなたのことを話してくれる? どうしてこの町にきたの?」


「え~、だってもうこの町くらいじゃない? まともな生活できそうなのって。ほかのとこって辛気臭いし~、かわいくないし~。私って、かわいくないの好きじゃないの。ずっとかわいくいたいの」


徹頭徹尾、理解不能だった。


この世界でどのように暮らしてたら、こんなポンコツが出来上がるのか。


白銀の上級市民並みに現実認知度が低い。


あいつらは自分たちの経済が逼迫している時でも散財をやめられなかったし、見栄を張ることが自分の人生だと言わんばかりに狂ってた。


この世界にも、もしかしたらごく微小に存在していた富裕層の生き残りか。

この世界は崩壊してからまだ1年は経っていない。


備蓄をため込んでいた連中なら、多少は私腹を肥やせていた可能性はある。嫌な奴らだ。


世界が終わりに向かっている状況でさえこれとは、醜悪と言える。

周りの取り巻きもけらけら笑っている声が聞こえる。


この手の人種って、なんでこんなに醜い笑い方ができるのだろうか。


質問が終わったのか、ナツさんの疲れたような声で中に入るように言われる。


それで俺は教室に入る。そこで俺は嫌なものを見た。そして、不思議と納得もいった。


そういうことか。見覚えのある顔がちらほらいた。

その筆頭がモエミ。白銀都市にいたクソ女の一人だ。


養成所にはたまに中級民も来る。

こいつは上級民の親と中級民の親を両親に持つ。


その後、離婚して中級層に戻ってきた。


親に連れられて養成所に来たらしい。


経歴的にはよくあることだ。


そして、そういう奴はだいたい認知が歪んでいる。


未だに自分は選ばれた存在だと思っており、優遇されることが当然だと思い込んでいる。


人が自分の足元に落ちてきた消しゴムを拾ったら、こいつは盛大に泣き出して、まるで自分は世界で一番かわいそうな人間のように語りだした。


悪いとさえ思っていない。

自分がこの世の中心で、自分に都合の悪いことが起これば、それは全て相手が悪い。


顔がいいこと、それがこいつのアイデンティティらしい。


そして、それで何でも許されてきた人種。補完体だ。よりにもよってコイツとは……嫌な奴が来てしまった。


ナツさんが俺の紹介をしようとしたその時、被せるようにモエミが口を開く。


「きゃ~っ!!! カッコよぉ!!!」


被せるように、甲高い声。


「マジ好み! どまんなか!!!」


教室が一瞬、ざわつく。視線が一斉に俺に集まる。


……指指すな。


「ねぇねぇ! お名前、なんていうの?」


「お前に名乗る名前はねぇよ」


「きゃ~! 声もカッコよ〜! そこも好きぃ~♡ マジ好み! どまんなか!!!」


ループしている。


不快指数が、静かに天井を突き抜けていく。


「名前を、名乗ってもらえますか?」


ナツさんはそう告げた。こちらもつらそうな顔だ。


「冬だ。よろしくはしないでいいよ」

こいつらには俺がこの町の『冬』だとは認識できないから、この名前で問題ない。

ナツは頭痛がするように額を押さえる。


「きゃ~、カッコよ~なおなまえ~♡ ねぇねぇ、好きな女性のタイプは? どんな子が好み?」


「お前みたいな下品じゃない女の子」


「え~? じゃあ清楚系~? ふ~ん……」


そこで、モエミの視線がナツさんに向く。


「……なっちゃん先生みたいな?」

教室の空気が、ぴくりと動く。


「でもさぁ~、先生ってさ~、顔だけはいいけど地味じゃん?」


「ちょっとモエミ……」


「だってぇ~! その歳で彼氏いないって、逆にヤバくない?」


周囲から、くすくすと笑い声。完全に晒しにかかっている。


「真面目ぶってる女ってさ~、どうせ裏で男に媚びてるんでしょ~?」


ナツさんの肩が、ほんの少し強張った。


その瞬間、胸の奥が冷えた。


「じゃあ、お前みたいに正面から媚びてくるやつはなんなのよ? 裏じゃなければ適用範囲外か? ずいぶん自分に都合のいい解釈だな」


ひくりとモエミの表情が歪む。


「え? なにそれ~? 意味わかんなくてこわ~い♡」

無理に笑顔を作っている感が伝わってくる。


「ねぇ、どうやったらモエミのこと、好きになってくれる?」


「ならねぇよ」


「モエミ、尽くすタイプだよ~、どんなふうにでも変われちゃうっ! ふふっ、なっちゃん先生みたいなのが好みなの~?」


「存在ごと作り替えて変わった上で、この世から消えてほしい」


「こわわっ! どうしてそんなひどいこというの!」


「自分より顔がいい奴見つけた瞬間にやることが、陰口と晒しとか。しょうもねぇやつ、好きにならねぇよ」


「……なにそれ? ひどくない?」


「知るか」


「もう! なんでそんなことばかり言うの! モエミには優しくして! モエミはいい子いい子してほしいタイプなんだから!」


さっき尽くすタイプって言ってなかったか? もうすでにかまってちゃんモードに入っているけど。


「はぁ、綺麗なおかおに綺麗なおめめぇ~。ねぇ、モエミを好きになって!」


「嫌です」


「あなたのことが生理的に好きなの! 運命的に付き合って!」


「あなたのことが生理的に嫌いです。破滅的に死んでくれ」


話せば話すほどに嫌いになれる。

味がしまくるパクチー味のガム。

自発的ではなく、強制的に噛まされる苦痛は、まさに公害級の口臭と同じだ。なぜ嫌いなのか?


脊髄反射で嫌いだと言えるのなら、理由なんていらないだろ。


「モエミの何が嫌いなの?」


「全部」

教室が、完全に静まり返る。


「いい加減にして、二人とも」


ナツさんの声だけが、場を切り取った。


「ここは、そういう場所ではないわ」


それで一度はお開きになった。


最も、モエミは納得していない。


ずっと、こちらを見ていた。


この視線、犯罪だろ。


講習が終わり、俺はモエミに捕まる前にさっさと教室を出て、辺りを回る。


モエミは追いかけてきたが、雑魚の鈍足などすぐにまいた。


その後、いろんな講習生を見て回る。建物の死角になりそうな場所を確認して、密談が行えそうなところには刻紋をサイレントモードで刻む。


周りからは見えないように監視するためだ。


次の講習が始まる時に、教室の前でナツさんと話す。


「冬、目立ちすぎ。もう少し控えて」


「気をつけます」

無理そうだけどな、あの女がいる限り。


その後もモエミのスキスキビームは止まらず飛んできて、イライラは加速した。


次の休みも速攻で逃げ出し、別の講習生の教室で調査を行おうとした時に、男に話しかけられた。ホストみたいな男だ。タレ目で薄い金髪。


「ねぇねぇ、君ってナツさんと仲いいの?」

は? なんだこいつ。


「講習生と監査官が仲いいわけないだろ」


「そうだよね、ありがとう。それが聞けてよかったよ」


俺はうざいのに絡まれたかもしれない。

ナツさんにちょっかいかけたいのだろうことはすぐに感じ取れた。先ほどナツさんと話しているのを見られたか。ナツさんも大変だな、こんなのもいる。


俺が横を通り過ぎようとすると、足を踏まれ、肩を掴まれた。


「ナツさんにちょっかいかけないでくれる? あんま、調子に乗らないでよ。じゃないと、つぶしちゃうぞ♪」


はぁ、と俺は息を吐いて、男の手をつまみ上げ、腹に拳を叩き込む。くの字に折れ曲がった男の鼻に指を突っ込んで引き寄せる。


「喧嘩売る相手は選びなよ、うぬぼれ君。続けるか?」


相手は顔を青くして、弱々しく首を横に振る。


カスのせいで無駄に時間を費やした。マジで講習生ってのはこんなんばっかなのか。


これらが町に入ってくる。問題だな。


改めて外の連中を入れる危険性を考えるようになった。


次の講習が始まるので教室に戻ると、俺の席に見知らぬ女が座っていた。見た目がギャルみたいな子だ。


確か名前はミサキだ。柄の悪いタイプのお友達とつるんでいるギャル、といえばいいだろうか。周りの友達とゲラゲラ笑っている。


「そこ、俺の席なんだけど?」

女はこちらを一度振り返って、


「は? 地面にでも座れば(笑)?」

鼻で笑って元の会話に戻っていく。


それを見て、周りの連中は爆笑。何が面白いのか理解不能だな。


俺は仕方ないので、女の背を蹴り飛ばし、椅子からどけた。


「なにすんのよ!」


「いやぁありがとう、快くどいてくれて」

俺は感謝が言えるタイプだよ? モエミ風にいうなら、ほめて?


そう言って椅子に座った次の瞬間、冬はその椅子から飛び退いた。


椅子が飛ぶ。後ろから蹴り飛ばされたのだ。


「おめぇ、後ろに目でもついてんのか?」


「後ろに目がついてたら、お前のマヌケ面とご対面してないとおかしいだろ。後ろから見てるんなら気づけよ、ニワトリ君」


トサカ頭にそう言った。


こいつの名前は確かトリサカ。


ブチ切れた男が、自分の机を蹴っ飛ばして起き上がる。肩を怒らせているところに、「ぼくつよいって見られたいですアピール」が見え隠れして、恥ずかしいからやめたほうがいいと思う。


自分の椅子を持ち上げて冬に振り下ろす。冬は避けるでもなく、慌てるでもなく、それを片手で軽くつかむ。


まるで壁でも殴ったかのように返ってくる自身への衝撃に、トサカ頭は一瞬、体を硬直させる。力を入れてもびくともしない。まるで万力に掴まれているようだ。子供と大人、いや、そんなものでは済まないほどの膂力の差がある。


一瞬で悟ったようだ。あ、勝てない、と。


次の瞬間、トサカ頭の顔が青くなる。


だが、その迷妄は意味をなくす。腹に走る衝撃で身体がくの字に曲がり、地面に倒れ伏す。


本気ではない。

本気でやっていれば後ろの壁まで吹っ飛んで、衝撃で肉体が破裂していただろう。


それでも、胃の内容物を全てぶちまけてしまいそうな程にむせかえる。


冬は椅子を投げ捨てて、トサカの腕を掴んで起き上がらせる。そして、腹にもう一度拳を叩き込む。


凄まじい激痛が襲ってくる。


「も、もう、かんべんしてくれ…」


さらに一撃が入る。また入る。また入る。


周りは息を呑んで動けなくなる。先ほどのギャルが、


「ね、ねぇ? もうそれくらいにしてよ……」


「す、すみ、すみません。俺がわるかったです。もう許してください」


「なんで?」


俺がなんでお前らのお願い事を聞いてやらないといけないの?


トサカ頭も周りの人間も、総じて顔を青くした。

まずい局面に喧嘩を売ったのだと、ようやく理解した。


トサカ頭は泣き始める。みっともなく、先ほどのやる気はどこへやら。自分の保身で心がいっぱいになる。


「何泣いてんの? キモいよ」

相手には通じず、欠片も同情などしていない。

潰れるまでやる。心も、身体も。そう言っているように思えた。


ズタズタのボロ雑巾になる自分の姿がありありと想像できた。嗜虐心なんて欠片もない。


美しい鮮やかな青色の瞳は、しかし、こちらの全てを見透かすように覗き込む。見下しているわけではない。だが、優しさもまた見られなかった。


「何を、しているの?」

そこでナツさんが入ってきて、冬は手を離した。


「何も? な?」

そう言って、冬はトサカ頭に視線を向けた。

何もないと言え、そうしなければ殺すと言われているように思った。だから、


「何も、ありません」

そう、言葉にした。周りも何も言わなかった。


言えなかった。場の空気が冬一人に支配されていた。


「何もないなんてこと、ないでしょう? 泣いてるわ」


「思い出し泣きですよ。こいつ、悲しい事があって思い出し泣きしてるんだ。な?」


「……はい」


「……冬、あとで話があります。いいですね?」


「ええ、後で」


クラス中がまるでいたたまれない空気になったのに、冬はまるで気にした様子もなく講習を受けた。


たった一日、それだけで冬はこのクラスに君臨した。


「どういうつもり?」


「聞き取り調査を兼ねた交流です」


「ふざけてるの? あんな交流の仕方がありますか?」

ナツさんには珍しく声を荒げた。常識的なことを言うが、あれらは良識の内側にいる人種ではないということが分かっていないらしい。


「ミサキとトリサカは黒ですよ」


「え?」


「他のクラスはまだ全て調べてないので、これから調べます。思ったよりも無駄なことに時間を取られているので、予定よりも進んでないです。俺は講習を抜けますので、そこはよろしく」


「……なぜ、わかるの?」


「調べました」

刻紋であいつらの頭の中身を見た。


「……どう、やって?」

もちろん刻紋を使って、あいつらの頭の情報を抜き取った。


「説明すると長くなるので省きますが、俺は相手から情報を直接抜き出せます。あいつらは犯罪者集団の幹部連中と思しき者と接触してる。少し泳がせて全員見つけて潰します」


こちらが時間をかけて調査して、疑わしくてもなかなか尻尾を見せなかったものたちのことを、初日の、それもこれだけの時間で次のステージに進める。

頼もしいとともに、計り知れない畏怖を覚える。


「それでも、暴力を加える必要があったの?」


「ありますよ。世の中には話し合いというのが、暴力で成立する人種もいる。上と下、こいつは舐めていいのか、敵にしちゃ悪いのか、それを常に見定めている獣みたいな奴ら。不良社会なんてバリバリの縦社会だ。俺やあいつらはそういう生き物です。そうじゃない奴らに暴力なんて振りませんよ、俺は」


「だからといって……」


「ナツさん、我々の目的はなんですか?」


「え?」


「ここで、学園ごっこをすることではないはずですよ」


「! それ、は……」


カウンセラーという職業は、俺たちの時代にもこの世界にも存在する。


その中には、不良との対話で更生を促す仕事もある。


教師も教育を為す存在と考えれば、無関係とはいえないだろう。


時間をかけて不良と対話をして、更生させる。

そのほとんどが無駄に終わる、悲しい職業だ。


必要なものだが、人間はそんな簡単に変われないし、性格や質というものは治るものではない。


教育で狂うものもいれば、元から本当に終わってる奴だっている。


時間があるのなら、そういうことに時を費やすことにも価値はあると思う。


だが、そんな時間は俺たちに存在しない。


俺らは神じゃない。


人を思い通りになんてできない。


もしかしたら、話し合いで分かり合えたかもしれないという可能性は、今の俺たちには過ぎた代物だ。


俺たちが今やるべきことは、たくさんあるのだから。


そう言って、その場は解散した。


講習の本日の課程が終わり、帰路につくとき、ナツさんが先ほどのホストくんに絡まれているのを見る。


「ねぇ、ナツさん。いいでしょ? このあとでも」


「ごめんなさい、忙しくて時間を作れそうにないの。それじゃ」


言葉を選んでいるが、断りを入れる常套句のようだ。しかし相手も諦めない。道を塞いで逃さないようにする。


「ね? ほんと、少しだけの時間でいいんだ」


「無理だとお伝えしたはずよ?」


そろそろ手助けするか。自力だと時間がかかりそうだ。


そう考えて男をスキャンし、武器を持っていないか確認すると、不審な物を持っていることに気づいた。


冬から表情が消えて、ホスト君に近づき、玉を蹴り上げ潰す。


苦痛に歪んで悲鳴を上げる前に顎を割って黙らせる。頭を掴んで地面に叩きつける。 


「な! 何を!」

困惑するナツさんに、俺は男の懐から不審なものを取り出す。


「これはレイプドラッグだ」

ナツさんからも表情が消えた。


この町に薬物を持ち込もうとしている。

許すつもりはない。


男はその他にも物騒なものを複数所持していた。


これを持ちながら中に入れた、ということが問題だ。


警備は何をしている。後で警備も調べないと。


小さく唸る男の耳元で、「お前、楽には死ねないよ」と脅す。俺はこの手の輩が一番嫌いだ。


震え上がるホストくんを、俺は警備に渡さずに直接屯所にぶち込んだ。


「はぁ、まったく。ろくでもないのばかりだな」


「ごめんなさい。私が気づくべきだった」


「いや、懐に入ってるのをどうやって見破るの。俺くらいしかできないよ、こんなの」


「妙な気配はしてたの。嫌な感じが。けど、証拠がない以上、厳しく取り締まるわけにもいかなかったから……」


後悔の念が生まれている。自分の判断を信じきれずに見逃してしまったものが中に入る。そして罪を犯す。それは苦しいものだ。


「ナツさん、反省はあとにしましょう。優先順位は今です」


「……うん。そうね」


苦しいことを thereそこに飲み込むことは誰にとっても難しいが、それでも苦しいことを無理矢理押し込んで、今を踏ん張ることができる人だ。


俺みたいなのはそれを支えればいい。


麻薬を所持したまま入れた担当警備官を調べたが、すでに逃げたあとだった。


どうしても人手が足らずに入れたノルマの人員がいたそうだ。厄介だな、人が足りないということは。


だが、そいつと顔見知りの一人が妙な事を言った。


──『冬が、許可を出した』と。


冬はそれを聞いて深刻な顔をする。

何か、まずいことが起こっている。

それだけは確かだ。


仮に俺の偽物がいたとして、そいつが許可を出そうが、麻薬を持ち込む奴を許していいわけがない。


そんなことは分かっているはずだ。


にもかかわらず、それらは通されている。


二重の意味で、何か複合的な問題が発生していることを俺は理解した。


人手は足りないのに、人は増えているという矛盾。


人が増えれば問題も増える。個人の裁量を超えて。


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