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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第2章 【最後の善意解放作戦】

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存在不証明


町の復興は正直言って芳しくない

刻紋による防衛がほとんど意味をなさなかった

ナギは行方不明 ヒマワリとヒジリさんは死亡し

神の遺骸も結局見つからなかった 誰かに先に奪われたか、そもそも現れなかったのか


行方不明者、負傷者、そして死者……


たくさんのものを失った 終わった後でさえ、わかっていないことも多い 


唯一の救いは最後の善意が解放されたこと 

こいつのお陰で、聖都でなくとも浄化の光が届くようになった

ヒカルも解放された これは朗報だろう


最もそれですべてが片付くわけでもないが……

漆深 黒…

ナツから聞いた話だ

俺と髪や瞳、肌の色こそ違ったが全く同じ容姿だったと

本来のクロイはマシロと全く容姿が異なる

俺の中で、一つの嫌な妄想が踊った

本物のマシロが何らかの手段でクロイの存在を奪ったのではないかと…

現状敵のやったことから逆算して考えられる方法は2つ

敵もザインを使えるか もしくは虚無と何らかの繋がりができたか 


引っかかる部分はあるが、こちらに気取られず大量のダエワを中に招き入れたのも、ヒマワリ達を襲撃できたのも、適所の刻紋を破壊して回ったのも含め、完全に後手に回っている状況だ ここまでの事態を引き起こした以上、もう四の五のは言ってられない 探し出して、殺す




そんな折に

凪が見つかったと報を受けた


「冬…… ボクが、先に話すから」


冬真は冬に向かって慎重にこぼす

だが、冬真もまた、落ち着かない様子だ 自分の妹だ

それに冬真は内乱の際に、知人が行方知れずになってしまい、先日までずっと町を探し回っていた 結局見つかっていないようだ 焦燥の色が見える


「……ああ」


冬は渋々それを受け入れた ナギについては、最初の頃から普通ではないことは分かっていた だが今回のことは看過できない



暴徒鎮圧・制圧用の刻紋がことごとく破壊されていた

アカ・マナフの敵味方識別撹乱能力のせいもあるが

おかげで、王国権能がほとんど意味をなさなかった



問題はその配置を知っていたことだ

刻紋の位置は町民には公表していない だが一人で回り切れる数でもないので、手分けをした 

ヒマワリやヒメ、ナギ 彼女達には安全地帯をいくつも指示してあった 逆に言えば、彼女達は刻紋の位置を知っていたということだ 

内部に裏切り者がいた可能性があること

だがそうすると別の疑問もある 仮に知っていても破壊することは通常の手段では不可能

だとするのなら……



屋上に出る 

端にいる小さな後ろ姿が見える 灰銀色の髪をした少女 ナギだ


「ナギ……」

冬真が前に出て話しかけると、ナギが振り返る 

いつものような、無邪気さは見られない 無表情で、どこまでも無機質な、人形のような顔だった


「ナギ…… その、えっと…無事、だったんだな どこに行ってたん、だ?」


「みんな、心配、してたんだぜ?」


冬真は当たり障りのないようなことを言って、一向に前に進まない 冬は冬真を押しのけて前に出る


「冬! まっ!」


「何だんまり決め込んでるんだ? 何が起こったか、お前は知ってるんじゃないのか?」


ナギはそれでも無表情で、何も言わない


「何か言えよ」


「覚えてないのです」

冬真はその表情が誰かに似てると思ってたが合点がいった 冬に似てるのだ 冬も話せないことがあるときにこういう何を考えているのかわからないような表情をする


「ヒマワリは死んだ、ヒジリさんもだ!」


ビクリと、かすかにナギの指先が震える


「刻紋を破壊したのは、お前なのか? お前は、虚無、なのか? クロイと繋がってるのか?」


核心の質問をぶつける もはや避けることはできない


「覚えて、ないのです…」


嘘の“間”だった

先ほどの能面のような表情は鳴りを潜め、感情がこぼれる


近くのものを蹴り飛ばす冬


「んなこと聞いてねぇんだよ! お前、ヒマワリとは仲良かったよな? ヒジリさんにも懐いてたろ? あれも、全部演技か? 何も思わねぇのかって聞いてんだ!」


「冬……」

冬真は冬がギリリと歯を鳴らす姿を見て、何も言えなくなった 


「……ないくせに」


「あ?」


「何も知らないくせに」


ナギは先ほどとは違った表情を浮かべる



「だったら言えよ! 何を抱えてる? 何をお前は隠してるんだ!」


「だったら……てよ」



「助けて、なのです……」


ナギに異変が起きる ナギの顔の縁を沿うように線が入っていき、そしてポロリと、顔が落ちる その向こうには

どこまでも落ちていきそうな虚空があった


そして、ナギは薄くなり消えていく


「なん、なんだよ……」


声が震える

自分でも意外なほど、声が小さく、頼りなく響いた


そこに残ったのは、空気のひび割れのような静寂と、淡い光の揺らぎだけ


ナギの顔が落ちた場所には、何もない

あるのは、底知れぬ虚空

まるで世界そのものが裂けたかのように

冬は手を伸ばす


「ナギ……!」


だが、手は空をかき消すだけで、何も掴めなかった

冬の胸の奥で、無力感が渦巻く

刻紋の破壊、ヒマワリやヒジリさんの死、そして目の前のナギ――

すべてが繋がらず、理解できないまま、現実の輪郭がぐらつく


「……どういうことだ、ナギ……」

問いかけても、答えは返ってこない

世界は、確かにここにあるのに、手を伸ばすと何もない

冬はその感覚に、底知れぬ虚脱を覚えた

そして、屋上の縁に残るわずかな痕跡

微かに揺れる灰銀の髪の残影――

それを見つめたまま、冬は静かに呟く



風が答えを持ってくるわけではなかった

ただ、空の虚空が、冬の胸の奥を冷たく抉るだけだった。




「何が、どうなってるんだ…」


冬真はこぼす


「わかんねぇよ 俺が知りたいくらいだ」

冬は顔を手で覆い、そうこぼす


「……ナギのことは後回しだ 今は何もわかんねぇ わかることから先に片付ける」


その言葉に冬真は少しカチンときてしまった


「……ずいぶん、簡単にすますんだね」


「あ? なんだよそれは」


「ナギがどうなったのか? 分かんないんだよ! なのに……今は、置いとくって……」


「……じゃあどうすればいいのか教えてくれよ ナギは消えちまった  どこに行ったのかもわかんねぇ どうやるんだよ!」


虚無は存在エネルギーのある世界では世界に空いた穴のように見える 

だが、ナギは違う 

あの顔の虚空には本当に何もなかった 見えなかった まるで空っぽの何かが皮だけナギを被ってるかのように


「知らないよ!でもだからってそんな簡単に切り捨てるなんて!」


「切り捨ててんじゃねぇ! できることからやるって言ってんだ! 反論すんなら代替案を出せよ!」


「冬はどうせ ナツやアニマのことで頭がいっぱいなんだろ!ナギのことは後回しにできるくらい!」


「ああ!? んなこと言ってねぇだろ そういうお前だって他人のこと言えんのか? 女の尻を追っかけて、気が気じゃないって顔しやがって! ナギがどうたら言ってるが、そっちのほうが気になってんじゃねぇのか? てめぇの不出来で俺に当たってんじゃねぇよ!」



俺だってできるなら今すぐにでも麗や凛の下に向かいたい衝動はある だが実際どうやってやる?

船は? 住む場所は? なんて言って連れ出す? よしんば連れ出したとして、どうやって匿う? 黒金に連れて行っても弱みになるだけだ 白銀と首がすげかわっただけで意味がない 

ならより危険な空想世界へ連れてくるか? 論外だ 今のここは戦場とかわりはない 気持ちだけあれば事態が解決するわけでもない 

思いつきや衝動で動いて事が解決するほど世の中、甘くできてねぇよ

第一今はすなおのこともあって赤錆との関係も悪化してる 黒金は今多くの都市から監視されてる 身動きするのさえ難しい

今下手に動けば余計な揉め事を起こす それは彼女達のためにはならない こっちもたくさんのもんを我慢してる それをこいつは!


「取り消せ!」


「てめぇが先にフってきたんだろ!」


互いに睨み合う 仲は険悪だった 

こんなことが言い合いたいわけじゃなかったのに



「ふ〜ゆくん♡」



そんな険悪な空気さえ気にしないような、聞き覚えのある嫌な声が聞こえた なんでてめぇが生きてんだよ!

大量に人が死んだ 死ななくてもいい人たちが! お前こそ死んでろよ


「話しかけんな 今取り込み中だ」

パクチー女の相手なんてしてられない


「も〜 真白くんは、あの頃から、変わらないね♡」


一瞬の空白 こいつ、いま、なんて、俺をよんだ?

この世界で俺を真白と呼ぶ奴はいない 


冬は振り返る そしてその姿に一瞬固まった


白銀の髪に普段はしないようなおとなしめの服

まるで、ナツさんを意識したかのようなその立ち姿にゾッとした 見た目だけならかなり寄せていたからなおさら不愉快だった 白銀の髪 ナツさんの純白とは微妙に異なる まるで白銀都市の連中のように、淡い青色に光っているかのような銀髪……? 

そこで冬は違和感を覚えた

その髪……


「お前、その髪、誰のだ?」


モエミの髪は栗色だ 脱色した色ではない どこでその髪を手に入れた? 俺は悪寒が走る 白銀の薄く発光している髪は、白銀の土地特有の現象だ この世界で技術的に再現できるわけがない


ナツさんのではない 色合いが微妙に異なるし、存在情報の残滓から俺の知り合いではないのだけはわかる 恐怖と安堵 しかし、あの髪は

一体誰の? 


冬真が俺を乱暴に押しのけて


「ま、ふゆ? それ、まさか、真冬の髪、か?」


真冬?


「てめぇ! 真冬に何しやがった!」


冬真がモエミに掴みかかる!


「ほんとはね、なっちゃん先生の髪にしようと思ってたんだけどね 町で見かけた女の子のこの髪、すごくきれいで こっちのほうがいいなって! みてみて! 白銀都市にいた頃を思い出さない?」 


モエミは冬真に詰められているにもかかわらずこちらにばかり話しかけてくる 冬真のことなど端から見えてないかのように微笑んでいる


「冬真、一旦離れろ!そいつは普通じゃない!」


「うるさい!」


ブスリ、と嫌な音がして、冬真の動きが止まる


「キャハ!」


モエミが笑う



モエミの身体から、まるで蜘蛛のように関節の多い、薄く青く発光した手が伸びていた


「う〜ん、君はね、なんか違うんだよねぇ〜 なんでだろ?真白君と顔は同じなんだけど、なんか違うの なにかな〜 う〜ん 表情(笑)? なんかマヌケ面に見えるよね♪」


その腕を振り払い、冬真の身体が宙を舞った


「冬真! てめぇ!」


冬はモエミに向き直る 冬真は死んだわけじゃない 本体は俺と共にあるのだ 問題はない 今は、こいつの相手を優先する


「キャハッ やっぱりぃいい! やっぱり真白君のが好き! 顔も髪も声も!全部全部! 好き!スキスキスキスキ!!!!」


彼女の狂気が噴出する 自分の感情に酔ってるのか?


「お前は一体何なんだ!」



「私に興味ある? 興味出てきた? うれしい〜!! もっと興味持って? 私を見て! 私を知ろうとして! 私だけを見て!!!」



「なんなんだ……この生き物は」



理解不能の怪物モンスター


「私のこと知りたい? でもまだ教えてあ〜げない♡」


「お前は俺を覚えているのか? というより、わかるのか?」


顔、というより身体が明らかに別人なのに


「わかるよ〜 白銀の養成所で一緒だった真白君でしょ〜? 監査所でも出会うなんて、私達って、運命の赤い糸でつながってるんだね♡」


やはり、記憶があるのか! 補完体のイレギュラー!

こいつもまたナギと同じ特性を持ってる!


冬は刻紋を展開、フォースエッジで斬撃をモエミに向けて飛ばす 


しかし攻撃はすり抜け、背後の壁をきり裂く


「攻撃が、当たらない!?」


「キャハ☆」



モエミが糸を飛ばしてくる 本当に蜘蛛みたいだ


全力で回避に専念する 建物を巻き込みながら巣を形成するかのように自分の領域を広げていく


何で出来てるんだ? あの糸は?

まるで観測できない 謎すぎて触れること自体躊躇われる 逃げるようにその場を離脱する 


自分の糸を束ねて攻撃に転化してくる


回避と同時に反撃をするが、こちらの攻撃はやはり機能しない 糸に斬撃が触れてもノイズが走るようにまともに干渉・機能しない

まるでこの世の物質ではないかのようだ

だがこちらへの干渉はできている 建物には触れている 

触れた箇所から観測が困難になってるが、それでも干渉はできてる 実在はしてる、はず なら必ずどこかの領域に存在の根は張っているはずだが… 戦闘をしながら相手の滞在領域を解析するのは難しい

動きがそこまで速くないのが救いだが

このまま行くとまずいなという感触があった 


その時



光の柱が頭上からモエミを直撃する 


「アババババババババッ!!!」


下品な叫声を上げてモエミが吹き飛ぶ


そこに降り立つのは、光 晃!


「わたくしの町で、勝手な暴力行為の確認 処罰に値します」


ヒカルの攻撃は当たるのか? ヒカルだからなのか、空想世界の住人の攻撃だからなのか、あるいは別の理由があるのか? 冬を目を眇めて注意深く観察する その時



「して あなた」


…え? 俺?


「なにか?」


「わたくしへの挨拶がありませんね わたくしが帰還してからまだ一度も」


……ええ? まさか、根に持たれてる?

状況を気にもせずそんな話ができるあたり、さすがというか、なんというか 表現に困るな


「マシロとあなたを混同し、わたくしが襲いかかるとお思いですか? それはありません わたくしは空からでも地上の様子は伺っておりましたので警戒する必要はありません」


「……いや、単に他にやることがありすぎただけだ 別に気を使ったわけじゃない」


苦手なんだよな、この子 常に上から発言するし

悪気ないのはわかんだけど……


「なら、いつならよろしいのですか?」


「……今夜、町の中心人物集めて話し合いをする そこに参加してもらえる? 場所は聖都の中央にある執務室」


「わかりました して、あれは、どうするのです?」


「私を差し置いて、楽しく会話してる〜(怨) 許せないっ!!」


モエミが睨み殺すかのようにヒカルをみてるが彼女自身はどこ吹く風だ


「存外、しぶといのですね 評価します」


傲岸に上から称賛した


「ぶっ殺す、と言いたいとこだけど、そいつには聞きたいことがある できれば生け捕り できなければ殺しても構わない」


むしろうっかり死んでくれると助かる


「ああ〜、ムカつく(怒) 私と真白君の再会を邪魔をするお邪魔虫さん… ぶち殺しますわよ☆」


「その可能性はありえません 絶無です」


当然のように彼女は言い放つ


冬は静かに解析を開始する



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