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ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第2章 【最後の善意解放作戦】

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33/46

憑神アカ・マナフ


「どいてください!」


あっ! ちょっと待て!

その静止の声を聞かずに すなおは駆け出す


外では銃声と痛ましい悲鳴が響き渡っていた

吐き気を催すような血と肉の混じり合った生々しい臭い

戦場の、臭い


「そ、んな…!」


「死ねぇ!」


飛び出してきた男に銃を向けられる すなおは体を丸めてその場にしゃがみ込むが、衝撃は襲ってこない

顔を上げると冬がいて、男を銃ごと切り飛ばしていた


一瞬だった


「何をやってる! 帰れといったはずだ!」


「でも… でも! 私が、私のせいで!」


「アホか! これだけの人数と武器を昨日今日で揃えられるものか! すでに準備が進んでて、それが君の演説と重なっただけだ! いいから帰れ! 君にできることはない!」

彼女の演説はついさっき タイミングが偶然重なっただけだ


すなおをおいて冬は駆け出す 


すなおはその場に立ち尽くす 

冬の言葉は耳に届いていなかった


私のせいで 私の…


自分が引き金を引いてしまったという想いが 彼女から帰るという、選択肢を奪っていた 

なんとかしないと… 何かをしないと!

その思いで彼女は駆け出す


「すなお!」

せいぎはすなおを追って外に出る すなおが走っていく 

追いかけようとするが


「ここにもいたぞ!殺せ!」


せいぎもまた、窮地に立たされていた




冬は駆ける 目指すは自宅だ ナツさん、ナギ、ヒマワリやヒナのいる元へ急ぐ ヒジリさんもそこにいるはずだ!


最短距離を走るために建物を走って登り、越える!


敵が集まってくるので左手を振るい、刃を飛ばす

しかしそれは思わぬ結果を招いた


「あっ!」


敵に向かって放ったはずの刃は確かに敵に直撃したはずだった なのにその刃は近くにいた別の女性に被弾し、彼女の胴体を真っ二つにした


「くっ!」


冬はその女性に近づき、敵を避けるように移動して彼女を治療する 存在維持の力で彼女を元に戻す


「あ、ありがとうございます!」


「礼はいい! 俺のせいだからな」


「でも、よかったのですか?」


「は? 何が?」


「私は、ダエワ、ですよ?」


「!!」


冬は即座にその場を飛びのいた

彼女をよく観測すると、確かにダエワだった

なぜ気づかなかった!


「ふしゃあ!」


彼女は獰猛な獣のように襲い掛ってくる


それを返す刃で切り伏せるが、なぜか自分の太ももに亀裂が走る

これは…!


「敵味方識別撹乱能力 だとするなら!」


冬は上空を見上げる かなりの高高度にそれはいた


「アカ・マナフ!」


刻紋が壊れた以上、外から人が入ってくるのはまだ分かる だがダエワがもう町に侵入してる いかな方法か分からないが、最後の善意の力でもダエワを識別できてないのか?


アカ・マナフの力は『敵味方識別撹乱能力+精神汚染』


これを市街地で使われたら厄介だったのに! 


……最悪の相手だ。

敵味方の境界を壊す憑神

単体では大した強さはないが、乱戦では無類の強さを誇る


しかも今は全員ほぼ身内での内戦 

そこにダエワが入り込み、カオスな状態 

最もアカ・マナフの得意な戦場ということだ! クソ!


敵味方識別ができない以上、日輪のような広範囲攻撃も味方への被弾が見込まれるため使えない 

まずはアカ・マナフをどうにかしないと味方同士で殺し合って全滅もありうる!


戦場はより混沌とかしていく




「冬さん、遅いな」

ヒマワリは自宅でマフラーを編んでいた まだまだ寒い時期だ 贈り物をしようと思い、密かに準備していた


「おねぇちゃん! 外からサイレンが!」

ヒマワリにもサイレンの音が聞こえた この音は敵襲があった時のもの! 急いで避難しないと!





「ナギちゃん!?」

手短に支度して逃げ出そうとするが、ナギはまるで夢遊病のように歩きだし、外にでる

追いかけて止めようとするが、扉を開けた瞬間、冷たい風に混じってナギの姿がふっと煙のように消えてしまった…


「え? どういう、こと? 消え…、なんで?」

扉の前に出て調べるけど誰もいない



「ごきげんよう お嬢さん方」

背後から声がする 


「!!」


扉を閉める前に足を挟み込まれる! 誰!?

そう思い、相手を見上げると、そこには人物の顔は


「冬さん? …じゃ、ない!」

そう言って逃げようとするが捕まる



「あれと一緒にされるのは不快だな あれはボクのもどきだ ボクが!本物のマシロなんだよ!」


「お姉ちゃん!」

叫ぶヒナ


「逃げて!」

ヒマワリは妹に逃げるように告げる!


そこには真っ白な髪に真っ白な肌 そして赤い眼光 

冬さんとは真逆の印象を与えるのに、冬さんと全く同じ容姿をしていたが、その瞳に含まれているものはあまりにも狂気を宿しているように感じた



「いけないな マシロ、いや、今はクロイ君だったね その子たちはまだ子供だ」


さらに別の男が出てきた 柔和な顔立ちだが、視線がどこか怪しい

「私は学園の教師をしていたこともあるんだ、子供が好きでね…」

その言葉とは裏腹に、ヒマワリたちを見る目は妙ないやらしさが混じっていた


「…オサナイ先生は、変わりませんね…」

クロイは冷めた目で彼をみやる


ヒマワリ達を見る目がとてつもなく危険な光を宿しているように感じた 

もうだめだ そう思ったとき


「オサナイ! その子たちに、触るな!」


駆けつけたナツが閃く白刃の刃でクロイとオサナイと呼ばれた者達を切り伏せようと迫る 二人はその場を離脱し、離れる


「冬? …じゃない? 誰?」

ナツはどこかで見たことのあるような 

記憶の縁を削られるような奇妙な感覚を味わった 

私は、この男を、知っている?


「ひどいな ボクだよ ボク! ボクがマシロなの!」


そう言うと、マシロの存在にノイズが走る


存在が揺らいでる…今はクロイとして定着しないと、この世界に残れないのだ

そのことにクロイは歯ぎしりする


「先生 わかってると思うけど、ナツはボクがもらうよ?」


「ん? ああ、かまわないよ 彼女はすでに、ボクにとっては守備範囲外だ 好きにするといい かわりにこの子たちはボクがもらっていくよ」


「好きにしてください」


「離して!」


ヒマワリはオサナイの脛を蹴り飛ばして逃げる だが


「おいおい どこに行こうってんだ〜?」

ぞろぞろと現れるチンピラのような侵入者達

結界用の刻紋が機能してない 壊された?


「いやマジで入れるじゃん〜 楽しくなってきた〜 冬の野郎にはムカついてたんだよね〜 お前らいたぶれば少しはスカっとすんだろ」


監査所で冬を煙たがっていた不良集団だった

男達はヒマワリ達を囲む

ナツはヒマワリを助けるために駆けるが、クロイに邪魔される


「君の相手はボク!」


「邪魔をするな! オサナイ! 殺す!!!」

ナツは復讐相手に吠える!



「ナツ、君にはもう興味はないんだ 君は醜くなってしまった 時の流れとは残酷だね ボクは刹那の時間を愛でる そう、彼女達のような、ね」


そう言ってまた、怪しくヒマワリ達をみやる


「殺してやる!」


「ナツ 君には少しおとなしくなってもらおう」


そういったクロイはそばにアカ・マナフを召喚する


「アカ・マナフ!!」


ナツは距離を取ろうとするが、すでに手遅れだった

聖寵や白撃の使えない今の彼女では防げない

アカ・マナフの精神汚染が始まる



「ハハハッ ハレル〜ヤ!!」

春は笑った。

これでいい これがこの世界のあるべき姿だ


冬の存在は、本来はノイズだった

彼は最初に会ったときから気に入らなかった 

ある種の同族嫌悪 

水と油のように交わらない不快さ


だが排除する必要はない(というかできない…)

だったら物語の一部として組み込み、利用すればいい

監査所の不良品共

鬱屈した町

解放軍という名の爆弾

そこにダエワのアカ・マナフ

内戦と乱戦が重なれば、冬は身動きが取れなくなる

動けなければ、私は自由になる

この混沌とした状況下ならば神の遺骸は、必ず現れる

この町のどこかに

それは私が戴く

少しばかり時期が早まったのは気になるが、すべてをコントロールはできない 充分 いや想定以上だ


「ハルナを、迎えに行かないと」

補完体?

違う

彼女はハルナ本人だ

春は神の家へと歩き出す

だが春は大事なことを取りこぼしていた 

うまくいっているときほど注意しなければならない、ということに

背後で、ロハネの遺物が――

笑ったように見えた





クソ……!

冬は走りながら撃つ。

ウィルスバレットは上空で弾かれ、虚しく散った。

高速でアカ・マナフの周りを旋回する反射板

反応速度が異常に高い

存在強度が足りない 貫通できない


「冬! ボクが援護する!」

冬真が駆けつけた!


「冬真! 粘着弾だ! 反射板を殺せ!」


「イエッサー!」

そう言い、冬真が銃撃態勢に入り、発砲する


粘着弾が貼り付く そのおかげで反射能力が落ちる


そこにバレットを叩き込む

反射板が一枚、また一枚と落ちる

――いける


本体に隙ができた そこに強力な存在強度を込めた強装バレットを撃ち込む しかし


本体に当たった弾丸が、弾かれた

「……効いてない」

硬い


冗談みたいに硬い!


上空に鎮座するそれにこれで攻撃が通らないなら手持ちの武装では相手を穿てない!


近づけない! 近接武器ならあるいは通るが…


日輪は使えない

透ける世界は撹乱されている

ウィルスバレットを本体に撃ち込んでも、反射板が時間経過で再生し、また旋回を始める それを壊してる間にウィルスを除去される… 移動、攻撃に処理能力を割かない分、相手のほうが処理能力に余裕がある

今の手持ちでは、決定打がない…!


万事休す、か…


だが事態はそれだけでは済まなかった…

新手が現れたのだ しかしその人物は 


「……ナツ、さん?」

顔を上げた彼女の顔は、妖しさを宿していた




ヒジリは町の中を駆け回っていた 

町の住民の避難誘導を請け負い、解放軍などと名乗る者達から必死になって住民を守っていた


「急げ! ここから先はまだ敵の手が伸びてない! みんなを連れて避難するんだ!」


ヒジリは体の不調を押して、町を走り回っていた

肩で息をしながら、頭はずっと危険信号を飛ばしていた

それを意思の力で跳ね除け、避難誘導を続ける


そこに男が道を塞ぐように現れた

その男には見覚えがあった


「最善…? じゃない! お前まさか、ひで うぐっ」


回避行動が遅れた ヒジリは弱った体で動いていたため判断にも精彩さを欠いてしまった


「ナツは、どこだ?」

最善はヒジリの兄であり、夫だ

現在は意識不明 なのにそれが歩いている つまり偽物 正確には体を乗っ取られている そんな能力を持つものは「憑依」の力を持つ憑神ナース

醜男ヒデオが最善の体を乗っ取っているのだ


「へっ 知る、か! 知ってても、てめぇにゃ教えねぇよ!」


首を絞められていても、ヒジリは一向に怯まない 


「お前に、うちの娘はやらん!」


ボキリ と、嫌な音が響き、ヒジリの身体がぐったりとなる


「あっそ ならお前は用済みだ 死んでろ」


そう言ってヒジリの体を投げ捨て、その場をあとにする



冬は身構えるが、攻撃態勢には入れない 

そんな中途半端な格好だった



ナツは微笑んだ

それは戦場には不釣り合いな、柔らかい笑顔だった

「ねぇ……そんな怖い顔しないで?」

一歩、距離を詰める


仕草はゆっくりで、敵意を感じさせない


それなのに――次の瞬間、刃が閃いた。

「ほら、私、ちゃんとやれるでしょ?」

言動と行動が一致していない!

アカ・マナフの精神汚染を受けてるのか?


ナツの声色が変わる

「……大丈夫、私、ちゃんと言うこと聞くから」

直後、別人のように冷たい声で――

「だから、ね?」

微笑んだまま、攻撃が飛んできた


「痛い、痛い!痛い! 私の体なの! 私の腕を返して 私の足を返して 私の目を返して 私の、私の 私の!」


ナツは自分の体をだきしめるように叫びだす



「ごめんなさいごめんなさい 許してください!

お願いします!大事な髪なんです!善ちゃんが綺麗だって言ってくれた 大事な髪なの! お願い 切らないで やめて! い、あ、ああ、もう、生えてこない…」

ナツは涙を流し始める

これは 過去と連動してるのか!


「先生… なんで なんで、ですか! なんで! いや!触らないで! 私を、私に、いや、いや、いや〜!!!」


錯乱するナツ


「冬、これって……」


「冬真! 見るな! お前は避難民を誘導しろ!」


「でも…」


「いけ!!」


「…わかった」



「冬さん……」

呼び方だけは、昔のままだった

それが、いちばん効いた

「ねぇ、私、ちゃんといい子でしょ? だから、痛くしないで、ね?」

そう、媚びるように彼女はまたも人格を変える


「マ、シ、ロォ〜!!! 許さない!殺す殺す殺す!善ちゃんの敵!!!」


沸騰しそうになる感情を強く押し込めて、俺は彼女と向き合う


今までで一番絶望的な、戦いが、始まる!





春はハルナと向かい合っていた


「春、さん… 今が、どういう状況か、わかっていますか?」


「ああ、もちろん さ、行こうか」


「何を、言ってるの? 私はここで皆さんを守ります どこにもいきません!」


パチンと乾いた音が鳴る 


「ここは危険なんだよ 善人ごっこなら現実でやればいい」



「現実って何ですか? これは現実です! また妄想の話をするつもりですか? 私はあなたの知るハルナさんではありません! いい加減に目を覚ましっ!」


またもぶたれる


「君は昔から強情だ もういい 少し、寝ていなさい」


そういったその時に


「おじゃまで〜す」


いいところに邪魔がはいる


「君か マシロ、いや、今はクロイか…? なぜこんなところに? 今は忙しい 君の相手をしている暇はないんだ」

今はクロイだと分かってて彼は挑発する


「お前の意見なんて聞いてねぇよ わかってたろ? 最初に会った頃から お前はボクが殺す 八つ裂きにしてやる」


お前を生かしていたのは、もどき(冬)をぶち殺すための条件を揃えるため! それはすでになった! アカ・マナフは今のやつには致命的に相性が悪い ケイオスとの話し合いでそれは分かっている! ナツまで向かわせた! 奴は終わりだ!

もう春を生かしている意味はない!


「自分の親(創造主)を殺すのかい?」

完全に挑発だった



「黙れ!ボクの親は母さんただ一人なんだよ!」

血走る眼で春を睨む


「はぁ マザコンって キモ」

私が作ったんだけどね


クロイのボルテージが上がる


「まぁ、所詮は真白の劣化品だもんな あ、ごめん 言い過ぎた」

確信犯だった


それはクロイにとって現在最大の禁句だった


「惨めだよな〜 真白にマシロの位置を奪われて、自分よりも上手く周りと馴染めてる姿を見るのは どんな気持ちだったの? 自分よりも優れた自分を見るのは? ナツと、うまくやってる真白の姿を見るのは、さ♪」



「ぶっ殺してやる!」



「勘違いするなよ?

お前は“不遇になった”んじゃない」 

煽る


「最初から救われない役として作った」

煽る


「読者が同情するための踏み台 主人公が輝くための影

それがお前の役割だ」

煽りたてる



「ナツがさ、最初に名前を呼んだの、誰だと思う?」



「お前は誰にも必要とされない だが私は必要としよう

お前は役にたった 充分な、脇役としてな」



「殺す殺す殺す殺す!!!!」


「安心しろ お前が壊れる展開も、ちゃんと用意してやる」

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