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異世界に行く前に ディストピア世界冒険記 ザインクラフト  作者: 白黒灰無
0章 ザインクラフト

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3/21

終わりの始まり


人生、いつもうまくいきそうなときほど、うまくいかない 

何かがうまくいきかけると、まったく関係のなさそうなところで問題が起きて、ドミノ式に襲い掛かってくる この日も俺はどこかでそんな空気を感じていた 



「真白、ゲームをしようか」

こいつはまた、唐突に


「一人でやって」

付き合ってられない 


「アヴェスターゲームって名前のゲーム」

冷や汗出るかと思った

「なんて言った?今」


「アヴェスターゲームっていうゲーム、一緒にやろうぜ!」

「...なぜ?」

こいつ、いや、まさか、知ってるわけない 

「...断る」


「このゲームさ、結構手に入れるの苦労したんだよね 同人ゲームだから数も少ないし、市場にもあまり出回ってない 人気低いんだよね まぁ凌辱系の成人ゲームなんて人選ぶしね というわけで一緒にやろう」

「前後文全然つながってないよ 一人でやれっていったろ」

気づいてる?気づいてない? 抵抗を続ける俺


「もう会えなくなるんでしょ?」

「だから?」

ほんとにだから?


「最後の思い出」

「嫌な言い方するな 野郎同士が気持ち悪い」

そのまま、その場を後にしようとすると


「ザインクラフト」

頬がひくつく

「なんだって?」

無駄な抵抗を続ける俺


「このゲームの中にザインクラフトっていう存在の力を操る超科学の力があるんだって!」

きらきらした目でこちらをみるディラフト 観念した


「はぁ...わかったよ 付き合おう」


ディラフトの持つ宇宙船に向かう こいつの船は規格の異なるゲームでもできる万能型のデバイスが置いてある



「最後の日によりにもよって、そのゲームをやることになるなんて 因果なもんだ」

そう吐き捨てた ことの発端 俺がザインクラフトを作るに至った理由が、このゲームにはあった



◆アヴェスターゲーム

アニマとダエワとノルマの三民族間による戦争もの

神々がかつて滅ぼしてしまった人類を再び創り上げるために人に似せた亜人を使い代理戦争をする話だ


「いわゆるバットエンドの作品だ」


「意外だな~ 真白はバットエンド系嫌いだと思っていたよ しかもこれ成人向け」

ちょいちょいこちらをあおってくるディラフト


「嫌いだよ実際」

メインどころはほとんど悲惨に死ぬ


「なんでこのゲームやろうって思ったの? これかなり入手困難だと思うけど」


「昔、俺がまだ低学制の養育所にいたころ、同学生が俺にこいつを持ってきた 俺は中身が何なのかわからなかったけど、嫌な予感がしてね その場でたたき割った そもそも普段話したこともない奴が急に話しかけてきたんだ 勘ぐりもする」


「うわぁ 昔から警戒心強かったんだ 私が宇宙船の設備貸すって言ってもかたくなだもんね」


「だがそいつは次の日に俺の知り合いの女の子を連れて、俺の家に勝手に遊びにきた アポもなくね」

「え?何々? 真白に女の子の知り合い? 詳しく聞きたいな!」

いるよな この手の話に食いつく奴 何が楽しいのかわかんない


「別に君が期待するような浮いた話なんてありません ちょっと特殊な理由で接触の機会がほかよりも多かったってだけ てか俺が女性とどうこうなるわけないでしょ この顔だ」

他人に笑い話にされることほど不快な話もない


「もしかしてその女の子ってのがこの話のネックになる? その同学生の男の子がその女の子のこと好きで、君を挟んで伝手作りたかった的な あっ 以前言っていた欲が出たってやつ この子?」

うんざりするくらいに感がいいな、こいつは 実際つながってるから仕方ないけれど


「君の想像通りだよ その同学の男ってのが、彼女に懸想してて、ちょっかい欠けたいけど、ガードが堅い だから俺のほうから詰め寄ろう さらにいうなら俺に趣味の悪いえろげの趣味があるってことを暴露させて仲違いさせようって魂胆だったわけ」


「うっわ 性格悪いな その子」

「ああ 実際あいつとは最終的には殺し合いになるくらいもめたしな」

いまでも許してないし、これから先も許すことはない


「君はいつも誰かと殺し合いになってるね」


「治安の悪い地区に住んでたもんでね まぁ今の時代、誰が死んでもおかしくない」

殺す殺さないなんて話がでても平然と聞いてられる時点でディラフトも大概だけど


「で?その後どうなったの?」


「そのあとが割と痛快だったな そいつは俺にディスクをたたき割られたのに 別の作品だったのか、同じものを持っていたのかは知らないがもう一組のえろげをおれの家に持ってきて、そいつが客にお茶もださないのかい?って言ってくる 俺は何かやるなと思いつつも、問題起こせば殺せばいいやくらいの気持ちだったから お茶を持ってきた そしたら俺の部屋でにやにや笑って俺のベットの下からえろげが出てきたって話しててさ まぁ当然そいつの画策なんだけどね いい加減目障りだなこいつと思っていた時に 彼女が あっ それ私が彼に貸したやつだっていったのよ」

ぴしゃりと冷えあがったね 部屋の空気が


「えぇええええ!!! なにそれ!!」

「あの時のあいつの顔、今思い出してもウケる 想定外のことが起こりましたって顔してたよ」


あの後、なんであんなこといったんだと聞いたら、だって彼 あなたをはめようとしてたんでしょ 見たらわかるよ だってまともにお話したこともないのに、急に遊びに誘ってくるような人だもの あなたからも彼と親しいなんて聞いたことないのに彼はあなたと仲が良くて、今から遊びに行くからって言って、一緒に遊びに行かないかっていうし でも口を開けばあなたの悪口ばかり 私にお近づきになりたい あなたのことが目障り わかりやすいほどわかりやすい人だもの

その後はあいつも居心地悪かったんだろうな そそくさと帰っていったよ 例のゲーム置いてってね そんで彼女と一緒にせっかくだからどんなゲームか見てみるかってんで始めたのがきっかけでアヴェスターゲームを触った いやまじで女性とやるゲーム内容ではなかったな


頭のいい女性だった 芯も強く、自分の考えをあのころから持っていた 浮世絵離れしたような容姿に、どこか人生諦めているような独特の雰囲気 あの歳であんな女性が同学生にいればそりゃ注目も集まるだろうなと今振り返ればそう思う あんな女性はこの歳になっても少し上の年代にもなかなかいない



「みたかったな~ その場面 で?次は次は?」


「あいつはさらにみっともないことを言い出した いいのかい? いいとこのご令嬢がこんなものやってたって噂がたって とか」


「そいつ馬鹿? 噂が流れたら間違いなく自分が流したってバレるでしょ」


「まごうことなく馬鹿だよ 彼女は別に気にしないよ~っていってたけどな でも俺としては俺の問題で彼女が面倒な噂流されるのも面白くなかったわけ だから

あれの腕をへし折ってこういった 彼女の噂を流したらお前を殺すって 腕のことは高いとこで遊んでたらはしゃぎすぎて落ちて骨折したっていっとけ もし、変な噂が流れたり、腕の骨折を正直に話したその時点でお前がこちらとの取引を反故にしたと判断して、殺しにいく いつもお前の腰巾着してるあのデカブツをつけるのもいいけど、俺相手に意味があるかは、お前が決めろ 俺を敵に回してでも、やるメリットがあると判断したのならやってみろ」

俺は別に失うものなんてなかったしな それはあいつもわかっていたから、俺が本気だってことは伝わった


「ふぅ~ 怖いもの知らずだね~」

「そう脅したら、あいつは次の日、俺がいったように高いとこから落ちて骨折したって言ってたな こちらを必死の形相でにらんでいたよ」

あいつとの因縁はここから始まったともいえる


「そりゃ相当屈辱だったろうね」

「ああ、プライドだけは無駄に高い奴だったからな 顔がよくて、運動ができて、まぁお勉強もできたほうなんじゃないか?頭はよさそうには見えなかったけどな とにもかくにも有象無象を味方につけるのだけはうまかった 仲のいい奴を仲違いさせて、その間に自分が入り込む そんで自分の信者や手下を増やす そんなことを年がら年中やっていた 趣味だったんだろうな そしてできてしまうがゆえにどんどん増長していったわけだ 俺は養成所は途中でやめたが、そのころにはもう養成所の人間関係はほぼ壊滅状態だったよ どうでもいいけどな」



「うんうん 君の幼少時代の話が聞けてよかったよ 君のことがまた一つわかってうれしい でもね 私が聞いたのはその女の子とはどうなったのかってことだよ」


「...」


「嫌なこと、聞いちゃった?」


「彼女は死んだ」


「え?」


「この事件が直接の原因だったわけじゃない だが今から見ると、全ての因縁はここから始まっていたんだろうな」


沈黙するディラフトに少し笑ってしまいそうになった ああ、こいつにも気を遣うってことができるんだなって もっともこの話をちゃかされたらマジで許さなかったけどな



「話が重くなったな 俺の過去の話なんて聞かないほうがいいよ 話すのもしんどいしね」

アヴェスターゲームの中身もかなりしんどいけどね 現実も世知辛いのに、ゲームの中もしんどいとか、どんな罰ゲームだよ


「話戻そうか 真白はどのこが好みなの?」

「誰でもいいだろ別に」


「大事なとこだろ」

「好みなんていないよ 俺に好かれてるなんてそいつがかわいそうだろ」


「うわ 卑屈 ゲームキャラにすらそんななの? そういう奴はモテないよ」

「結構です」

人に好かれて 何の得があるのかわからない ぎゃあぎゃあうるさいだけだろ


「私はね~」

「きいてない」


「夏、って言ったら、どうする?」

「あ?」


「なんとな~く、真白はこの子が気になるんじゃないかと思って」

「理由は?」

「彼女が幼少のころ、敵側の醜男ひでおってキャラがいじめられてる場面で助けに入るシーンで、いつもより表情が柔らかい気がしたから 醜男も顔で悩んでそうだ シンパシー感じた?」


「お前のそういうところ、嫌いだよ 俺は醜男と違って横恋慕なんてしない 彼女が好きなのは主人公の善君だ 彼女のことを思うならこんな鬼畜外道な手段で奪おうとはしない」


これと同じ扱いをされると不快だね

夏というキャラクターの生き方や考え方、行動が俺にとっての人生の指針になったのは確かだけど


醜男は本当に鬼畜外道だ 昔助けてもらったことから夏に度を越えた執着をし、彼女を手に入れるために、どんどん彼女の周りにいる人間関係を、そして彼女自身を貶め、穢し、破壊し続ける

ダエワ側の醜男はあの手、この手を尽くす その内容がすべて悪辣だ 

また夏自身の持っている聖寵ギフトが特殊な能力で それは敵側にも恩恵を与えてしまうものだった これ考えた作者の性格が滅茶苦茶悪いのだけは確かだ


そして最後には、主人公である善の体を乗っ取り、夏を無理矢理手に入れるという胸糞展開 彼女が善を返してほしいといっても返すはずもなく

いうことを聞かなければ、愛する善に何をするかもわからない まさしく絶望だ


「真白はさ、ザインクラフトを使ってこのゲーム世界に入って、バットエンドを救うぜってな風にはならなかったの?」

いやらしい質問をする


「マッチポンプだろ、それ ひどい世界をわざわざ作って、そこに入って行って自分で救う 虚しいよ」

幼少のみぎり、人生観に影響を与える作品、というのは大なり小なりあると思う

俺にとってはこれだったというだけ


「さようで」


ディラフトは別のルートも進め始める ちゃんと全ルートやるまでは解放しないとまで言われた

このゲーム同人なのに、めちゃくちゃ難易度高いから面倒なんだよな


「いや~ 最初に聞いてはいたけど、全ルート、すべてバットエンドの名に恥じない出来だったね」


まぁ!そういうゲームだからね


「ザインクラフト、でてきたね」

主人公の善が持っている超技術でできた個人武装デバイス  

ダエワ側の神、アンリマー・タルヤを作った製作者でもあり、ザインクラフトを作った製作者でもある朱禪院 晴より託された 存在の力を操るための個人兵装


「それで作っちゃたんだぁ… 現実で」

「は?何か問題でも?」

問題でも? は? 問題でも?(圧)


「いぃやぁ?」

にやけ面が鼻につく 喧嘩するか?



「くっくっく ゲーム作った作者もひっくり返る思いだろうね これ聞くと」

ザインクラフトはゲーム内でも空想上の技術だ

そりゃ驚くかもね


「ラストシーンだね このマシロってキャラさ」

「...」

「名前が同じだと、思うとこあったりする? イケメンだし」

マシロ、という名前にも関わらずマシロは黒髪褐色の美少年だ 漆黒の髪を編んで結って肩から垂らしている、女性的な顔をしているので、好きな奴は好きだろうな


「いうなっていったろ こいつ、自分の才能とか顔とか、鼻にかけてて、気に食わないんだよな」 

主人公とヒロインの幼馴染という圧倒的負けポジなのに、マザコンこじらせてヒロインに言い寄って、フラれ、逆切れして敵に寝返り、主人公とヒロインを売り渡す そのあと、敵にも裏切られ、目の前で夏をいたぶられているのを見せつけられて、ブチ切れて、善の体を乗っ取った醜男を刺し殺すし ネタばれだから言わないけどね

しかもこのエンディング、善の体を乗っ取っているだけなので、醜男は死んではいないことがわかる


「いよいよラストだ 眠くなってきたな もういい時間だし 雪も降ってきてる」


窓の外ではぽつぽつと雪が降り始めてる ちなみに人工大地の上には雪はつもらない

雪が大地に落ちたらすぐに消える 蒸発してるのか、吸収しているのか 知るものはいない ディラフトの船の中は適温が保たれているから寒くはないが、ここに泊まるつもりもない 


「雪嫌いなのに、ザインクラフトのデザインは雪結晶なんだ 屈折してるね」


「寒いのが嫌いなんだよ 環境適応スキンをこれくらいの寒さで無駄使いはしたくないから、この時期はきつい」 

あと、雪結晶は自然の芸術品だっつーの


もう何日もねずにザインクラフトの臨床実験をしていたうえ、ディラフトに突き合わされて貫徹でゲーム全クリを横で見せられるわけだから、別の意味で疲れた

こくりこくりとしながら 

「真白」

ディラフトが唐突に俺の名前を呼ぶ

「なに?」

「ありがとね いろいろ付き合ってくれて」

「...何急に?」


「いや、いつもいやそうにしながら、それでもかまってくれてさ ほんとにうれしかったんだ いままでいろんな星を渡ってきたんだけど、こんなに話せる相手ってなかなかいなかったんだよね 君の話を聞くのが、好きだ ザインクラフト いい作品だよ 感動した 生きてきてよかった 君に出会えてよかった 本当に いいものを見せてもらったよ」


「大げさな」

「大げさなんかじゃないさ! 君は自分を過少評価しすぎだ これはね、すごいものだよ 今までいろんな技術を見てきたが、これは断トツだ」


「それはほんとに大げさ まぁリップサービスってことで受けとくよ あんがと」

ディラフトの宇宙船を見てればわかる あれほどの技術力を持つものが、ザインクラフト程度の技術で騒ぐ理由が理解できない なぜならザインクラフトの材料は、子供の小遣いで買い集められる程度の素材でできているから

そこにディラフトと真白の認識の乖離が発生していた 遺跡に潜る必要があったのは現在白銀都市は壊滅して工業が動いていないから 当然別都市とも交流はしていない

 


「私はね、異世界に行きたいんだ」

「それは、いい夢だな」

「ほんとにそう思ってる?」

「思ってるよ 叶いそうにないのが残念だ」

「ほら、やっぱりそう思ってる 皮肉屋」

「真白は異世界に、行ってみたいとは思わない?」

「う~ん 興味ないわけじゃないけど、君の言う異世界ってのは剣とか魔法とかある世界だろう? 本で読む分にはいいんだけど、いざリアルに行けるってなったら、結局暴力を前提にした世界に飛び込みたいかって話になる、俺はノーだ 現実でさえ、俺の周りは暴力暴力オア暴力の世界だ あこがれるには、そこそこ歳を重ねすぎた」


他の惑星だろうが、異世界だろうが、同じこと おれはどこに行っても結局なじめないだろう それが根底にある 暴力にあふれた世界は現実だけで充分だ 

それに、と続けて


「ほしいものがあれば、自分で創るさ」

ディラフトがこちらを見て、すこし微笑む


「俺は、自分が欲しいものは自分で創る」

他人の手は借りたくないし、口をはさんでもほしくない ほっといてほしい

自分の望むものを 自分の望む世界を 自分のために 築く

今も昔も そしてこれからも変わることのない 俺の願いであり、生き方だ


「そっか」

さびしそうに、ディラフトはこぼす


「かなうといいな」

「え?」

「異世界、行けるといいなって」

ディラフトは少し意外そうな顔をして、うれしそうに笑う


「異世界に興味があるなら、一つ、俺から贈り物をしようか」

「え?」


「竜の遺骸 やるよ」

「竜の、遺骸?」


「俺が産まれるより少し前に、ある日突然空から落ちてきた そいつはいつもの遺物や遺跡のように宙から落ちてきたわけじゃなかった それならレーダーに引っかかる でも竜の遺骸は突然空に出現し、白銀都市に落ちてきた 当時は大騒ぎだったらしい それからいろいろ調査があったらしいが、結論は何が何だか、わからないってことだった 何でできてるのか、どこから来たのか、全部不明 少なくともこの惑星の技術では解析できなかった」


「なにそれ... ほんとうに?」

半信半疑という感じだ そりゃそうだろうな


「そいつは今、ここにはないからすぐにとは言えないけれど、明日場所を教える 興味があるなら取りに行くといい」

本来は白銀管理のもと、厳重に保管されていたものだが、奴らは俺が滅ぼした もう誰も保管できる奴もいないから俺が回収して、白銀都市にある俺の保有する地下ロッジに隠した

「めちゃくちゃ興味あるよ なにそれ! なにそれ!!」

しかし興奮はやみ、真剣な顔で 君は こないの?と問う


「俺は、明日には旅立つ もうここには帰ってこない 二度と」

ディラフトは悲しそうな顔をするが


「異世界に行きたい奴が持つなら、彼も本望だろう 持つべきものが、価値を理解できる者が 持つべきだよ」

俺は成金の骨董品収集が嫌いな人間だ 道具とは持つ人間にもそれなりの格があるべきだ 金さえ積めば、いい物が手に入る クソみたいなシステムだ 使うに足る人間、調査するに足る熱意、持つべき覚悟 見世物小屋の珍品をそろえるがごとく並べられる貴重品を 俺にはいい気分で見られなかった 竜の遺骸ほどのものは、白銀都市はもちろん、俺が持っていても宝の持ち腐れだ ディラフトが持つなら決して粗雑には扱わないだろう


ふるふると震えるディラフトになにかいやなものを感じてその場から離れようとしたが

「ありがとう!!!!」

そう言って抱きつかれたので殴り飛ばした


「うぜぇ」


その後は物語も終盤で嫌な場面だというのに、どこか物語そっちのけで、別の話に移行していった 


「真白はさ、今まで一番好きな作品はなんだった?」

「『緋色の軌跡』」


「いい脊髄反射だね 『アヴェスターゲーム』じゃないんだ」

「最初の作品は良くも悪くも記憶に残るけど、さすがにこの作品を上げる奴はいないだろうね」


「私はね、『七つの業罪』だ」

「え?本気で言ってる?」

「え?喧嘩する?」

あの作品は序盤の入りがいいのに、突然謎のインフレして台無しにしちゃっったからな


「君って、この星の作品も抑えてるんだ」

「そうじゃないと、わからないでしょ? ちなみにほかの惑星含めてなら私が一番好きなのは終末物語だよ」


「しらね」

「だろうね」


「ほかには何が好き? 最近読んだのでもいいよ」

「最近で好きなのは、トリニヒード・シャッハルのグリムガーデンシリーズ、『赤ずきん』がよかったな」

「ははっ あれ純愛過激派御用達じゃん」


「別に純愛過激派じゃないけどな 独特の世界観してて、俺は好きだよ 変に癖になる」


「私は『愛の賞味期限』や『恋は消耗品』かな?」

「それどっちもトリニヒード・シャッハルの作品だから」

お互い笑った 久しく笑っていなかったように感じる くだらないことを話して くだらない話で盛り上がって なんとなく終わりを感じていたのだろう 


園もたけなわというのだろうか、眠くなってきた ウトウトして 結局うちに帰ることなく、ここで寝落ちか、そう思っていると

「真白 私は必ず見つけるよ 異世界を」

そこで俺の意識は途切れた まどろむように眠りに落ちていく

多分、笑えていたと思う


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目が覚める

体が臨戦態勢に入る 何か、来る!

あたりを見渡す ディラフトはいない あかりが消えているが、モニター画面だけはついていて、エンドロールが終えた後に、善(IN醜男)を刺し殺したマシロを見た夏が発狂し、マシロをさらに刺し殺す 陰鬱なエンドだ これを真エンディングにした作者の正気を疑うが、今はそれを気にしている場合ではない


手持ちに何か取られたものがないか調べるが ザインクラフトはちゃんと首にかかっている 刻紋武装も問題なく起動する 左腕の紋様が発行する 体に異常は見られない いつでもやれる


通常の情報収集器であたりをサーチするが、敵影は見えない 既存の索敵機ではお話にならないのか、ザインクラフトで存在を探る 

しかし感じたのは不可解さだ

「なんだこれは」

周囲には何もない いや何もない空間が存在するといったほうが正しい

俺の周囲を回るように何もない空間が動き回っている

ディラフトかとも思ったが、どうにもしっくりこない 俺を殺すならいつでもタイミングはあったように思う 周りくどすぎる


刻紋起動アクティブコール 無頼』

そう呟いて、体に刻んだ紋様を指でなぞる その紋様は剥がれ、剣が実体化する 

敵の見た目は図鑑で見たかつていたとされる爬虫類と魚類を足したような姿だった 龍の、ようにも見えなくはないが 俺の知る竜とも異なる 異形な形だ


俺は何もない空間に向かって無頼を振るう 

すると謎の反発感が発生する いままで感じたことのない感覚だ 物理現象とも異なる

目では負えない ザインの索敵だけが頼りだ 見えなくはあるが、幸い存在の力が存在しない空間を知覚させる 殴ることも可能だ 世界に開いた穴を殴る、というのも変な話だが


敵が襲い掛かってきた かわすと地面がえぐられる 消滅、してるのか えぐれた地面はまるで最初からそこになかったかのように抵抗もなく消失した

まともに喰らったら、ひとたまりもないな

それに

「無頼の存在値が削れてる?ありえない」

自然消費でこのような削れ方は絶対にしない となれば必然


「試してみるか」

音さえ置き去りにして目にもとまらぬ速度で敵に近づき 無頼を振るう

無頼へ存在エネルギーを流し込んで敵にたたきつける

ジリジリとノイズのようなものが走り、敵が少しだけ実体化する

「お前、反存在兵器アンチウェポンか」



「まるで、虚無 世界の穴だな」

仮称敵の名前を虚無と命名 こちらの存在エネルギーを削ってくるが、こちらの存在エネルギーを食らうことで、存在化させられる 属性が反対だが、なんとか攻撃は通じそうだ 実体化したところを叩く!


二度、三度の直撃で沈黙 手ごたえが、ない? 倒せたのか?

動きは珍妙だが、決して速くはないし、直撃さえしなければ敵ではない だが


ぞわりとする まだ終わっていないと俺の感が言っている

部屋中に充満し始める観測不可能領域 

数が、増えてる! 

一斉に襲い掛かってくるそれらを撃ち落とし続ける だが、これは


こちらの武装が、存在エネルギーがすさまじい勢いで消耗し続ける


一体一体は大した強さじゃない だが、このままではじり貧になる しかし外に出ようにも周りを囲まれていて出口がない! 根気の勝負ってか



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「はぁ はぁ はぁっ

どれほど戦っていたのだろうか

こちらの存在エネルギーはガス欠だ 敵の数が 減った気がしない! ここまで、か

あきらめるわけではないが、残酷な現実が事実として俺に終わりを告げている そう思ったとき


「冬!」

そう呼ぶ声が聞こえた その方向を見ると、見知らぬ少年が立っていた 誰だ?

ディラフトではない 見たこともない人物だった

それにそもそも、なぜ、その名前で俺を呼ぶ?

そう呼ぶ人物はたった一人しかいないのに


「よけろ!」

俺は少年にそう叫んだ しかし


「え?」

少年の体が胴体から切り別れる

少年の後ろには虚無?がいる 新手か ほかのとは姿が違う

少年はこちらに手を向ける だが

虚無に襲われ、ばらばらに裂かれた 何者だったのか それすらわからず少年は死を迎える


「クソッ」

足に力を入れて立ち上がる まだやれる! そう思った瞬間

無頼を持っていた左腕が消失した 

即座にその場を飛びのくが、今度は右腕が消失した

そして音もなく、胸に穴があく


ジリジリと頭が痛い 心臓がやられた


「ここまで、か」


その時、妙なものが見えた ジリジリと脳が乱れる あのいつもの感覚が来て

俺の正面にあるはずのないものを、見せた


「誰だ? お前ら?」

全身黒い影のような人物 全身真っ白な少女 全身が灰色の髑髏 そして全身が透けていて、まるでクリスタルのような 人、なのか? 虚無の仲間? こいつらも他とは形が違う 人型だ


「n,ewprk320-wfkaw]vk]p@vskv:;l,l m]a@sv,]@okv]asov」

!!!!ずぐりといつも以上に頭が痛い なんだこれは 理解できない概念が頭に流れ込む 


「oiji0emjvai@nmevoiwernv9wr93gi49ugfj@8034jvm3lmvm;:,erl」pjkvebthjヴぁ7」

「やめろ!しゃべるな!!」


こいつはだめだ 理解してはいけない概念だ いつも変な電波を受信する俺の頭もこればかりは受け入れてはいけないことがわかるのか 必死で抵抗しているように感じる


中央にいる全身透明な長髪の男がこちらににやりと笑い、近づいてくる


「はぁ はぁ はぁ」

「MOVM}OIP,./*}~=OO)?」

「だから、わかんねぇって!」

いい加減にしろ! 頭が割れそうだ!


「IIVNBM 接続者?」

最後の一文だけが、かろうじて翻訳可能だった


「お前が我々の探し物か?」

最後の最後にそう言って透明な男は 俺の頭を 

ばくりと頭部を食らわれる



そうして世界は暗転した




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