海上都市の凋落
「殺せ!」
白銀都市は、たった一人の人間に蹂躙されていた
怒号が飛ぶ
だがその声は、次の瞬間には轟音に飲み込まれて消えた
爆ぜた衝撃が街区を削り取り、精鋭部隊の一角が跡形もなく消し飛ぶ
ありえない
「こんなことが……あってたまるか!」
たった一人だ
たった一人の人間に、我々は追い詰められている
この白銀都市は、この星において二大都市と呼ばれた存在だ
超人部隊、超能力部隊——いずれも選りすぐりの精鋭
一人を育てるだけで弱小都市の予算を軽く超える、切り札中の切り札
それが
戦闘開始から、わずか数分で壊滅した
理解が追いつかない
常識が追いつかない
個人の力で、ここまでできるはずがない
「どれだけの遺物を隠し持っている……!」
否、そんな次元ではない
——怪物
その言葉が、脳裏をよぎる
我々に落ち度はなかった
部隊は万全、装備は十全
敗北など、ありえないはずだった
なのに
「……滅ぶのか?」
喉が、ひどく乾く
せめて、一矢
せめて一撃だけでも入れる
それが私の役割であり、ここにいる意味だ
そう覚悟を決めた、その瞬間
隣にいた同僚が、何の前触れもなく吹き飛んだ
血と肉片が、遅れて宙に舞う
——あっけない
その光景を見て、ようやく理解した
我々は虫だ
意味など、最初からなかった
「……ああ」
終わりだ
そう思った瞬間、視界の端に“それ”が映る
人の形をした何か
悪魔め——
そう吐き捨てた、次の瞬間
「悪魔はお前らだろ」
理解できない言葉とともに、世界が途切れた
◇
夢を見た
「君にも見つかるといいね 自分以外の大切なものが ■君」
ゆっくりと目を開ける
最後に見た、彼女の夢
額に手を当て、さする ゆっくりと体を起こし、先ほど見た最後の夢を思い出す
「麗...」
いまだ続く悔恨が 俺の朝を憂鬱にした 気分は最悪だったが、さらに事態が最悪になることが起きた
「まっしっろっく〜ん!!! 朝ですよ〜」
最悪な声で目が覚めた
無視しよう 嫌な奴の声が聞こえたが、聞こえなかったことにする
ベットから降りて居留守を決め込もうとしたが
「おはよ~♪ あっ朝食はもう済ませたから、気を使わなくていいよ」
すでに家に上がり込み、人の食材で勝手に朝食を作り、先に食べるというおよそ人としては信じられないことを平然とやるこの男の名はディラフトシュラッケンという
頭の中身まで、宇宙人のようなやつだ…
「尻から引き裂かれるのと口から引き裂かれるの、どっちがいい?」
「え?もしかして私って... 怒られてる?」
怒らせたことなどないかのように言われた
こいつは本気でわかってないのだ
他人がどう感じるかを考える能力が致命的に欠けている
そのくせ人懐っこい性格のため、人に近づいては人を怒らせる
「人の家に勝手に上がって、人の飯を食って——」
「怒られないと思ったのか?」
「そっか」
そういって神妙な顔をしたディラフトは次の言葉を紡いだ
「それで、今日は何しよっか?」
ディラフトを宣言通り、尻から引き裂いて海に投げ捨てた
相互理解などを宇宙人に求めてはいけない
同じ人間ですらできないのに、異星人と分かり合うなど、人間には無理な話だ 実力行使ただ一択
「いてて、ひどいじゃないか 尻から引き裂くなんて 人のすることじゃないよ」
「しぶといな」
ディメンションフィールド
宙の技術を持つディラフトに、この惑星の技術では太刀打ちできないだろう
どうやったら殺せるんだろう? 疑問だ
「これから海底遺跡の探索をする」
俺らの惑星には遺跡や遺物が存在する
この惑星には遺跡や遺物が宙から突然降ってくる
理由は不明
宙には宙の事情があるのだろう
なんにせよ、俺等にとっては天の恵みだ
生きるためには、文明を維持するには
宙の技術が必要なのだから
「えぇ またぁ? 潜るのが好きだねぇ 真白は」
「さっさと帰ればいいのに」
はっきり聞こえるように言った
「え? なんか言った」
はっきり聞こえるように言って、聞いてないふりされた
この男はほっておこう 相手にするのは時間の無駄だ
俺は意識を変える
この惑星はもうだめだ 急速に終わりへと向かってる
その前に… 俺はおさらばさせてもらう
もうすぐアレが完成する そうすれば…
【天国計画】
それは、世界に“他者の価値を問うための試み”だ




