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異世界に行く前に ディストピア世界冒険記 ザインクラフト  作者: 白黒灰無
第1章 【アヴェスターゲーム】

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11/21

謎の男


「見つけた!」

生体工場プネウマ・バイオリアクター! こいつがあれば!!!

正直いって今回一番あってほしかった遺物だ こいつがあれば食料問題を一気に解決できる 量産できないのがネックだけど いまの人数ならしばらくは問題ないだろう強く安堵の息を漏らす 実物を見るまで安心はできなかったが、これで一息ついた

あとは持って帰るだけだ 


それから、こいつだ

『う。うひゃ~! なに、これ、ドラゴン?』

「ああ、こいつはドラゴンの遺骸 異世界からやったきたといわれる異世界の遺物だ」


『え?い、い、い、異世界!? いま、異世界って言った?』


「あくまで可能性の話だけどな こいつを研究したら、もしかしたら異世界のことも、わかるかもしれないぞ?」

ごくりと冬真は息を飲む


「ほんとはディラフトに渡すはずだったものだけどな...」

生きてるのか死んでるのかもわからない 宙から来たはた迷惑な奴 ふぅ 無事だといいがな 望みは薄いけど


ドラゴンの遺骸をみやる 巨大な芸術品 美しいと感じる この世のものではないといわれれば信じるだろう 遺骸だというのに、その肢体には傷一つついていない 劣化も欠損も見られない 今すぐにでも起きだして、動き出しそうなほどの存在感だ まるで眠っているだけにも見える 灰銀色の鱗が角度を変えるだけでその輝きを妖しく変える 視線を引き付けられる 畏怖とは、このような感情を指すのだろう 正直言って、ドラゴンまでこちら側に写されるとは思わなかった こいつは現実世界でさえ、異質な存在だ

現行技術では解析不能の存在 遺物としてのランクもつけられないほどに

ここにあるドラゴンはさすがに中身まで模倣されているとは思えない あくまで側だけだろう


『冬、これ...』


「今はここに置いておこう 君の妹君のこと、調べるにしても今の俺たちの最優先事項を見失ってはいけない だろう?」

どちらにせよ、こいつを調べても本物のドラゴンではないのだ 大した情報が出てくるとは思えない だが現実に戻って、ザインクラフトで存在を解析すればあるいは


その言葉は、異世界について、調べてくれる、手伝ってくれるというニュアンスが含まれているように冬真は感じた 少しだけ可能性が開けて、心がちょっとだけ軽くなった 今の自分達の状況は決して羨ましがられる状況ではないのに ちょっと泣きそうだった


冬はその後、自分の研究室?にもどってかちゃかちゃと何かを弄っている

『それなんなの?』

「アバターの雛型かな?」


『え?それが ただの人形かと思った 顔ものっぺらぼうだし、手足ももっと精巧な人形あるだろってくらい、簡素なんだけど...ほんとに~?』


「形はそこまで重要じゃないからね 四足歩行の奴なんかもあるけど、犬とか猫になってみるか?」


『いやそれは! 僕を犬扱いしていいのは美しい女性だけと、決めてますから!』

一瞬考えてしまって、それもいいかなとか いやいや ひざまずく相手はきつめのおねいさんでお願いします!


「...だからモテないんじゃない?」

ぼそりと毒を吐く冬


『モテないって、なんで決めつけるんだい? ん? 君が僕の何を知ってるんだい? ねぇ?』


「モテるの?」


『え?』


「モテるなら、俺の一方的な偏見なんだから謝るよ」


『それ、は、え、いや、ほら あれだよあれあれ!』


「付き合った女性の数は?」

冬のおちょくるわけでもない、無表情がなんか嫌だ


『ぐっ 付き合ったってのは、どこまでのものを指すかによって変わってくるっていうか~』


「いない奴の回答じゃんそれ ついでに友達もいなそう」

友達できそうな状況でも常に女性にがっついたり、途端の下ネタで相手にひかれてそう 印象の話だけど


『!!! ぐっ! じゃあ、冬はどうなのさ? 付き合った女性、いるの?』

どうしてそんなひどいことが言えるんだ! 事実ってのは時として人を傷つけるというのに 僕のトラウマエピソードをいつか聞かせて泣かせてやりたい


「もちろんいません」

冬真ってたくさんトラウマエピソードもってそ いつか聞いてもいないのに勝手に話しだしそうだし そんで別の意味で泣きそう かわいそすぎて


『いないんじゃないか! なんでそんなに偉そうなんだよ!』

ほれみろ! 絶対いないと思った!


「女性と付き合うことを人生の主目的においてないからじゃないかな」

俺の周りにいた女性って、正直いい印象ない奴ばかりだったから 女性に幻想持ってないんだよな あとどうでもいいけど、なんで勝ったみたいな雰囲気だすんだろう?

むなしくならないのかな?モテない奴同士で傷広げあって


『女性と付き合うこと以外に、オスの目指すべきものなんて、ない!』

冬真君って あれだよね~ そこはかとなく あれだよね!!ってほめる部分もけなす部分もない、みたいな顔されても僕はあきらめない 絶対に かわいくて僕だけを好きって言ってくれるお嫁さんを見つけるんだ!


「かなり偏見があるよそれ」

別にいいけどさ、人生の目的がどこにあろうと 俺には関係のない人間の人生だし

あと、どうでもいいけど、冬真って彼女よりも先にお嫁さん探しとかしそうで怖いんだよな 俺は男だから平気だけど、女性からしたら、引くんじゃないかな?いちいち想像だけで傷つけるようなことは言わないけど


『冬は一人で寂しくないの? 孤独死って知ってる?』


「俺は人の輪の中にいるほうが孤独を感じるタイプだし 人はいつか死ぬものだよ 一人で死のうと誰かがそばにいようと、死んだら終わり その先なんてないんだから 寂しいもくそもない」

一人でいることは当たり前すぎて孤独を意識しない 誰かがゲラゲラ笑ってて、他の奴も笑ってて、でも俺がそれを笑えない時、自分の異物感がすごい 比較する対象がいて初めて孤独を意識するのだ

それに特別劣等感はかんじないけれど、ここにいるのが申し訳なくはなる 


『なにそれ? 人といるのに孤独を感じるなんてこと、あるの?』

なにかのなぞかけか? ぼくには理解できなかった 誰かがそばにいてくれるだけでぼくは幸せだ

ぼくは誰かといないと寂しくて死んでしまう病なんだ


「とりあえず準備が整ったから 始めようか」

え?何を? 僕のモテモテ計画を立案することを?

冬真君はそんなことしか考えてなかった 


広い空間に戻ってきて、先ほどの人形を目の前に立てる

「これから、アバターの訓練を始めます」


『なんだ、アバターの訓練か』


「なんだと思ってたんだよ まぁいいや 少し説明をするよ こいつは初期型のアバターだから、存在情報をインプットするところまではいかない でも今回に限って言えば、それがいい」


『???』


「俺たちは互いを認知していないと、無に落ちる 互いを観測しあっている状態だからこそ、吊りあっている でもこれにも問題がある いや今後出てくると思われる」

この話はしておかないといけない お互いの命綱に関わることだから


『こ、怖いこというな~ それって?』


「今後、俺は自己の存在を強化していく 強くなればなるほど、処理できる情報も増大する 使える武器も増える でもね、俺だけ鍛えた場合、その存在の比重は傾く可能性がある」


『かた、むく?』


「筋肉で例えると左足だけムキムキ なのに右足は爪楊枝みたいだったら、バランス悪いだろう? 通常はそれでも死ぬことはない けれど俺たちは別々の骨組みを使って組み立てたツギハギのような状態なんだ その屋台骨の一部だけが肥大してしまうと、別の弱い骨組みがポッキリいってしまうかもしれない あくまでたとえの話だけど ようはバランスが悪くなるかもってこと」


ぞっとした 自分たちがバラバラに崩れる姿を ジェンガのように一部のバランスを崩した瞬間すべてが崩れ去るように そしてその先どうなるのかを、僕は知っていた


「だからお互いのバランスをとるために俺だけ鍛えても意味がないんだ 君も、ある程度強くなってもらわないと だからこれ」

そういって冬はアバターを指さす


「こいつにはひと一人の存在をダウンロードするほどの容量はない 読み込み式だからね だけど、登録した存在IDを読み込んで、その人物の思考通りに動かせるようになる 簡単に言うとゲームのコントローラーでキャラを操作するようなものと考えればいい」

俺達は同じ箱(部屋)の中にいて、同じテレビ画面を見ながらひとりがコントローラーを握ってゲームをしているイメージだ だからコントローラーを増やす サジャとウジャも似たようなことをやっていたと考えられる あれの場合は一人で二つのコントローラーだったろうけど


『僕が、これを動かすの?』


「そっ」

冬は肯定する


「登録は先ほど済ませた 君の存在IDに反応してこいつは動く 最初は苦労するだろうけど、慣れていけば手足みたいに動かせるようになるから まずは、起動アクティヴェイトって言ってみて 君の声紋で起動するよ


起動アクティヴェイト

すると、さきほどまではのっぺらぼうだったアバターは冬と同じ顔に変わる

ただし、髪と瞳の色が異なる 冬は漆黒な艶のある黒髪に青色の瞳だが、こちらのアバターは灰銀色アッシュグレイの瞳と髪色になった それにちょっと苦笑いする 冬はさきほどいった アバターはその人物のもつ願望やありたい形をとることもあるって

灰銀色の髪色に瞳、それは母と凪、二人だけの絆の色だった 二人とも灰銀色の瞳と髪色で、僕だけが黒髪黒目だった それが僕にはコンプレックスだった  

ネズミ色に近い、くすんだ銀色の髪を妹は嫌がっていたが、それでも僕はこの色が好きだった



「まずは右手を挙げてみて」

冬に促されて僕は手を挙げてみる なかなかうまくいかない 

10秒ほどかけて右腕が重そうに持ち上がる


『くはぁ! これ、結構難しいね』

手足を上げたり下げたり、しゃがんでみたり、指を握ったり、開いたり、外から見ると間抜けな行動にも見えるかもしれないけれど、これが結構難しい



「本来存在しない回路をつないでいるからね 最初は大変だよ 君の思考をアバター側も理解してる段階だ、君の思考速度や癖なんかもアバターになじませて覚えさせる作業だから 動かしていけばどんどん君専用の形に形成されていくよ」

小一時間練習したが、精神的に疲れるだけで、ほとんど進歩は見られなかった

せいぜい歩ける程度だ


『ごめん 全然うまくできなくて...』

体を動かしてるわけじゃないのに、精神的な疲労が襲ってくる

今まで感じたことのない疲労だ まるで新しい神経を形成しているような感覚


「謝る必要はないよ 大けがしてリハビリする人だって、何か月もかかるだろう? さすがにこの作業に何か月もかかりはしないけど、それでも一週間もあればそこそこ普通の動作はできると思う 戦闘は無理だろうけど 日常生活ができるなら、例えば俺が戦闘するときにヒマワリ達を他所に逃がすとか、助け呼ぶとか、武器持ってきてもらうとか 手数は増やせる ナギ君だって、守れるようになるさ できることを一つ一つ増やしていこう」


冬は不甲斐ない僕を責めることもなく、なんてことはないようにふるまった

それが気恥ずかしくも、少しだけうれしかった



「今日はこのくらいにしよう まずはこの遺物を...」

突然言葉を切り、冬の気配が殺気だっていく


『冬、なに?どうし...』

しっ と静かにするよう促す冬


「でてこい 俺に用があるんだろう」

冬は突然虚空にそんなことを言った

しかし虚空からの返事は何もなかった なのに僕にもその空間には何者かの存在がほのかに感じられる気がした

そんな緊張感が高まった次の瞬間 冬が動いた

正面に向かって前転する すると先ほどまで冬のいた場所に

ぶわりっと風を切るような音が響く

冬は刻紋を励起させ、無頼二式を取り出す

左腕を振るい、虚空を撫でる

ギィン!と大きな火花を立てて、無頼を押し返す音がする

フォースエッジは物理・物性に干渉する 敵の持つ迷彩機能にまで傷をつける

光をうまく曲げられなくなったのか、空間が歪んでいるように見えた先に人の顔のようなものが伺えた

相手はうまく動かなくなった迷彩フードを脱ぐ

そこには金髪に何本か黒髪がメッシュで入っているような男が大きな鎌を持って立っていた

かなりの優男だ 


「ご挨拶だな その髪、黒金の人間か? いやありえないな 誰だお前?」

ゲーム本遍では見たことのない容姿だ 整っている容姿だから創作物のキャラだといわれればそうかと思うかもしれないが、違和感があった こいつ、在核が存在する!現実の人間だ どうやって入ってきた?



「それは私のほうが聞きたいな 君、誰?」


「質問に質問とはな いいよ 半殺しにしてから聞き出す」

ぶっそうなことを平然と言う冬


『ちょちょ いきなり喧嘩腰? まずは話し合いを』

「こいつはこちら側が出てくるように言ったら、後ろから切りつけてきた それも、迷彩機能まで使ってな 明確な敵だ これでも譲歩はした 名乗りもしない 目的も言わない奴に容赦はするな これ教訓な」

言っても聞きそうにない雰囲気に 深いため息を吐いて、押し黙る もう僕のできることはない あとは見守るのみ


男は大きな鎌を片手で持ちながら、まるで筆みたいな軽やかさで横一線に振るう

するとそこから目に見えない波動が飛んでくる 冬はまるでそれが見えてるかのようにかわす


「見えてるのか?」

冬は答えずに男へ一撃を叩き込む 相手はそれを受けるが、衝撃を殺しきれずに後退する 

すかさず追撃し、踏み込む 地面にめり込むほどの踏み込みから首を狙う

相手はそれを柄で受け止め、翻るように刃をこちらに差し向けた

俺はさらに踏み込んで距離をほとんど殺した状態で相手に組み付き、腹にフォースエッジで突き刺すが、火花を散らして弾かれる 蹴りを食らって距離を開けられる


冬に大鎌が上段から振り下ろされる 冬はそれに刃を交差させるように合わせて受け流しながら同時に一撃を叩き込む しかしそれも甲高い音を鳴らして刃は相手の肉体を貫通せずに弾かれる

それで冬は距離を取る


「フォースフィールドか」

今殴った感触からどの程度のレベルのシールドなのかは分かった ランクとしてはC

あの迷彩も同様 ようするに、大したことない だいたいの硬度、軟度、弾性力、熱冷変動値、構造情報と反応アルゴリズムはわかった 市販品仕様だ 規則的で反応が特定しやすい B以上だったら対応しようがなかったが、次は調整して貫通させる 攻撃速度も目に追える程度 対応は可能 ただし、あの大鎌は


「遺物だな その大鎌 となると、お前、やはり現実の世界の人間か」

目測程度だが、ランクはB以上といったところか


「...」

男はにこりと笑って何も答えない だがその表情からは肯定しているように思えた


遺物のランクというのは各企業都市の技術・発展をどの程度貢献できるかで決まる

遺跡・遺物の攻略難度も加味される 


遺跡・遺物ランク

Dランク 都市の技術で作れるものよりも低い遺物

Cランク 都市で再現可能な遺物 遺物ランクはこのランクが基準になる

Bランク 都市で再現不可能な遺物だが、機能解析が可能 複数採掘されるもの 都市への貢献度は低い


Aランク 都市で再現不可能、機能解析が不可能 複数採掘されるもの 都市への貢献度が高い このランクまでは都市の生産能力が上がれば事実上いずれは再現できるのではないかと言われている範囲


Sランク 都市で再現不可能 解析不能 複数採掘される このランクからはこの惑星では資源的にも技術的にも再現できないものと言われている



EXランク 都市で再現不可能 解析不能 使用方法がわかるものもわからないものもある そして一点物であること 


各企業間で技術力が違うので、一概には言えないが、白銀と黒金を除けばほかの都市はほとんどどんぐりの背比べだ そのため、このランク付けは下位都市の技術力に準拠して作られている


ランクBというのは、現都市にとって、自分達の技術よりも上の技術ということだ 一線級のサルベージャーならともかく、都市の中で一般人がBランクの遺物を持つことはない 性能によっては危険だからだ さすがにBランク程度で都市が沈むなんてことはないが、ランク詐欺のような遺物も中にはある 自分達の技術より上の技術を一般人が持っていたら、場合によっては対応できない ならこいつはサルベージャーか、もしくは都市の中でもそれなりの家柄の人間ということになる 都市がこの世界に干渉してきれる? どうやって? 


「生体波動に干渉する遺物か 厄介だな」


「へぇ わかるの? 君すごいね」


男は驚いた様子でつぶやく 男が驚くのも無理はない 生体波動技術

これを技術転換しようとする動きは各都市に存在する だがうまくいった事例がない

というより、人間の持つ生体波動程度では大したエネルギー源になりえないから安定した研究ができていないというのが実情だ


海獣のような巨大生物ならまだしも 人間のようなちっぽけな存在の生体エネルギーなど底が知れてる あの大鎌も冬から見ればかなりちぐはぐだ まず通常の対人を想定してるとは思えない造形 海獣相手ならまだしも人間相手では無用の長物

また仮に海獣を相手にするのならば、銃や大砲クラスのものを使ったほうが効率的だ


実際やりあった感想としても、こちらが弾いた瞬間かなり隙ができたし、一度からぶると致命的だ このまま戦闘を続けても長時間の戦闘にはならない これでもかなりの戦闘を経験してる 自分で言うのもなんだがはっきり言って百戦錬磨だ 

だから一度打ち合うとどの程度そいつが積んでるのか、わかる 攻撃の受け方、衝撃の逃がし方、視線の動かし方、フェイントの不自然さ 

自分から見て、相手の戦闘能力は正直大したことない 弱体化した今の自分でもあと数回打ち合えば決着がつくだろう 気配の消し方も中途半端だった 迷彩を使ってさえ、簡単に感知できるレベル あの程度の隠密技術ではザインを使わなくても気づく 雑魚とまでは言わないまでも戦闘訓練を多少積みましたって程度

白銀の精鋭と比べると、比較にならない 


「まだ続けるか?」

降伏勧告を促す このままやっても男に勝ち目はない 最初の一撃で決めきれなかったのがいたい 稀有な性能だが、あの波動に触れさえしなければわけはない そしてあんな大振りの武器 初動が大きすぎて目をつぶっていても躱せるだろう 隠し玉があったとしても、今以上の遺物をほいほい持ってるやつがここにいるとも思えなかった


しかし男は笑う 


「まだ、やれることがあるからね」

鎌を前に突き出す すると鎌についてる奇怪な口が開く にやりと笑うように

危機を察知して、距離を離そうとするが


「もう遅いよ」

この世のものとは思えない不吉の音を聞いた 

空間さえその旋律にひきつっているようだ 聴覚兵器か!


「まさか、これ...ロハネの遺物!」

ランクBなんて、もんじゃない

災厄の遺物の一つ ロハネの遺産を持ち出したのか バカが!

あれは、使用者も無関係な周囲の者も見境なく蝕む災厄そのものだ

そう心の中で口汚くののしりながらも、意識を刈り取られそうになる

まずい! 今のレベルでこの領域の遺物は弾ききれない

ロハネの奏でる不吉の旋律が精神をゴリゴリ削る

こちらの存在の見え方を変えるような感覚 存在攻撃を受けている気分だ

生体エネルギーへの攻撃などかわいく思えてくる

存在維持を使って防御に徹するが、時間の問題だろう


「形勢、逆転だね それにしてもすごいな、ロハネの遺物でも倒れないんだ?」

やはりロハネの遺物!


「ロハネの遺物には手を出すな そう口すっぱく言われなかったのか? 親の顔が見てみたいな」

各都市においてもロハネ関連は最大の鬼門だ 遺物を持っているだけで極刑になるほど 特級の禁忌指定遺跡(遺物)として登録され、既に発掘されてしまったものは厳正に保管されている 破壊できないからだ 遺跡・遺物の発掘品すべてがSランク以上、都市の中には全部EX扱いでもいいんじゃないかとさえ言われているほどだ


プネウマシュトラスに比類するこの惑星圏で最低と最高の象徴だ

望んでたわけじゃないが、結果的に一度だけかかわったことがあるがろくなもんじゃなかった 


「あいにくとそれは無理だね とっくにぶっ殺してしまった あ、墓前でも見に行く? 首だけになってからだけど」

なんともないかのようにさらっと物騒なことをのたまう男 


『な、なんなのこいつ!』

おちゃらけた陽気さにも見えるほどに その表情は終始余裕で、その笑顔を見れば、女性はころっといってしまうかもしれないがその内に秘める狂気が少しだけ顔をのぞかせたことにぞっとする冬真


「やっぱそれ、ザインクラフト、だね 形状は違うけど」


「あ?」

まさか その言葉が飛び出してくるとは思っていなかった


「ずっと違和感があった 君を見たときから マシロにしては言動も行動も私の中で一致しない」

こいつ、何言ってるんだ?


「極めつけはこの下水道にある隠し通路だ あ、私がここにこれたのは偶然だよ 偶然ここにこれただけ」

遺物か 確率を操作する系統の遺物もある この迷路の中でもあたりを引き続ける、ということは可能だ 揺り戻しもキツいタイプだけどな その手の遺物は 

問題はどうやってこいつがこの世界にきたか、そして何者なのか 目的はなんだ?


「私はこの世界に下水道や地下拠点なんて、作った覚えはない」

男はこつこつと冬の近くまで歩みを進める

こいつ まさか....


「マシロもこんなに強いわけがない なにより性格が違いすぎる そして、極めつけが、これ」

そう言って冬の首にかかったザインクラフトに触る

冬は振りほどく力も出せない それほどに存在維持に力を振らなければ弾けないほどの存在攻撃を受けている 気を抜けば、作り替えられるだろう


「私は春、三星 春 アヴェスターゲームの原作創作者だ」

彼は初めて自分の情報をこぼした 自分の優位な状況で


「お前、ザインクラフト、現実で作ったろ?」

耳元で男はそうつぶやき、にやりと笑って、その言葉を最後に振り下ろされる大鎌に意識を持っていかれる


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