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異世界に行く前に ディストピア世界冒険記 ザインクラフト  作者: 白黒灰無
0章 ザインクラフト

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海上都市の凋落


「殺せ!」

怒号が鳴り響く しかしそれ以上の轟音が声の主を消し飛ばす


「こんな、こんなことがあってたまるか!」

たった一人に、たった一人の人間に この白銀都市が敗北するというのか?

この星において、二大都市と言われた我々が あのようなガキに


勝利はゆるぎなく 敗北などありえない

戦闘が始まる前から戦勝ムードが漂っていた 


しかしその幻想はたやすく打ち崩された 戦闘が始まってものの数分で超人部隊と超能力部隊が壊滅させられた 彼らは我々の都市において切り札だ

超能力部隊は100人 超人部隊は200人もいたのだ 一人一人がこの都市の選りすぐりの存在だ 開発されるコストは弱小都市の予算を軽く超える 


いくらなんでも常識外れだ 個人の能力の域を超えすぎている どれほどの遺物を隠し持っていたというのだ! 


この都市の精鋭部隊がここまでの被害を被ったのは黒金都市との戦争以来、初めてのことだ 戦闘が始まってまだ半日も立っていないというのに、すでに半壊状態にまで追い込まれている


怪物


その言葉が脳裏をよぎった

こちらに落ち度はなかった 部隊は万全 装備は十全 敗北などありえない 


滅ぶのか?

一抹の不安がよぎる 

せめて せめて せめて! 一矢報いなければ 一撃を入れる それが私の役割

それが私の生まれた意味! それが私がここにいる意味!

そう覚悟を決めた次の瞬間に私の横にいた同僚が死んだ あっけなく死んだ


その瞬間心が折れた 


我々は虫だ 


産まれてきた意味? 意味なんてない

それがわかってしまったらもう心の均衡など持てなかった ああ、私は死ぬのだ 


悪魔め

「悪魔はお前らだろ」

最後に私が聞いた言葉は私には意味のわからない言葉だった 




◇それは、夢?


「あんたみたいな醜い子供、値が付いただけ、大助かりよ これで薬が買えるわ」


女は顔を醜悪に歪ませ、はやくはやくとせがむように男の腕にしがみつく 禁断症状が出ているのか、瞳は濁ったどぶのようだった これは一番古い記憶 


場面が変わる こちらは俺がまだ養成所にいたころの記憶


「なんで触るの! もうそれいらない!!」


泣き出す少女 その泣いている少女をかばう回りの人間たち これは幼少期の記憶

皆口々に俺への罵詈雑言を浴びせる まるで自分達にこそ、正義があるとでも言わんばかりに


「■■君、謝りなさい」


新任の女養育官も俺に反省を促した

「あんたさ、口はついてんでしょ!謝りなさいよ もえみちゃん、かわいそう!」


だが俺は謝らなかった。 

ただ落ちた消しゴムを拾ったことを、謝らなければならない理由が、俺には理解できなかったから。 


またも暗転 


「この世には何をやっても許される人間がいる 強いやつは何をやっても許されるんだよ■■」

綺麗な顔を醜くゆがめて持論を展開する男 俺は何をやっても許される そういう星の元に生まれてきたのだと思いあがっている男だった


また場面が変わる。比較的新しい記憶 白銀都市の最後の記憶


「この都市も終わりか 不思議と心は穏やかじゃがの おぬしはどうじゃ?■■」

「さぁ なぜでしょうね...」


滅ぶべくして滅んだものに、たいした感慨などわかなかった 淡々と語る心にあるものは無音 ただただ心の中を虚しさだけが突き抜けていく あれだけの虐殺を行ったというのにかけらも罪悪感はわかない 喧噪も怒号も悲鳴も絶叫も 等しく、ただの音の羅列にしか聞こえなかった 聞こえなくなった


何が楽しいのか、その人は喉を鳴らすように笑っていた いまでも彼の気持ちは理解できない

「さようなら、白銀白夜さん あなたには感謝してます 恨みはありません だから…」



次々と変わるツギハギのシーンをただ、ぼーっと何の感慨もなく、眺めていた

記憶の整理をしているのだろう 全て覚えている その時の光景はもちろん、色も匂いも、感情も いいことも、いやなことも 一つ残らず

特に語るべくもない 自分がたどった人生の痕跡 つまらない事実確認をしているようなものだ しょうもない人生だと思う 



そろそろ目が覚める そんな予感がした その時 



「いつか、君にも見つかるといいね 自分以外の大切なものが ■君」



ゆっくりと目を開ける。 最後に見た、彼女の夢

額に手を当て、さする ゆっくりと体を起こし、先ほど見た最後の夢を思い出す

「麗...」


いまだ続く悔恨が 俺の朝を憂鬱にした 気分は最悪だったが、さらに事態が最悪になることが起きた


「まっしっろっく~ん!!! 朝ですよ〜」

大きな声が聞こえてくる


無視しよう 嫌な奴の声が聞こえたが、聞こえなかったことにする 

ベットから降りて居留守を決め込もうとしたが

「おはよ~♪ あっ朝食はもう済ませたから、気を使わなくていいよ」



すでに家に上がり込み、人の食材で勝手に朝食を作り、先に食べるというおよそ人としては信じられないことを平然とやるこの男の名はディラフトシュラッケンという


驚くことにこいつは宇宙人だ 宇宙人みたいな頭の持ち主という意味ではなく(頭の中身も宇宙人だが)、文字通りの意味で宇宙人だ 


「君さ、俺が何言いたいかわかる?」


「え?何それ?めんどい系の恋人ごっこしたいの?仕方ないな~ ちょっとだけだぞ? 付き合うのは」


「尻から引き裂かれるのと口から引き裂かれるの、どっちがいい?」


「え?もしかして私って、怒られてる?」


怒らせたことなどないかのように言われた

こいつは本気でわかってないのだ ノンデリの極致みたいなやつで自分のやることなすこと、他人がどう感じるかを考える能力が致命的に欠けている

そのくせ人懐っこい性格のため、人に近づいては人を怒らせる


「人の家に勝手に上がって、人の飯を勝手に食って、怒られないとでも思ったのか?恥知らず」

「そっか」

そういって神妙な顔をしたディラフトは次の言葉を紡いだ


「じゃ、今日は何しよっか?」

ディラフトを宣言通り、尻から引き裂いて海に投げ捨てた

相互理解などを宇宙人に求めてはいけない 同じ人間ですらできないのに、異星人と分かり合うなど、人間には無理な話だ 実力行使ただ一択


「いてて、ひどいじゃないか 尻から引き裂くなんて 人のすることじゃないよ」

「君ってさ、ほんとに不思議な生物だよね 人間の形してるのに、なんで尻から引き裂いて生きてるんだよ」


しばらくしたら平然と復活して戻ってきた 不死身かこいつは


「で、いつ真白はさ、一緒に宇宙に行ってくれるの?」

「いかねっつったろ」


「強情だな~ ほかの惑星にはいろいろ見たことのないものが結構あるんだよぉ 幽霊みたいな機械軍団とか、精神改造で強化された...」

とうとうと宇宙の魅力について語るが、聞いてるだけで満足だ 行く必要性を感じない 


「何がそんなに不満なんだい?」

「君が一緒にいること」

「で?本音は?」

「君が生きてること」


「またまたぁ 真白君は面白いなぁ!」

「面白くねぇよ」

「じゃあ何があったら一緒に行ってくれる?」


「君の殺し方を教えてくれるなら」


「そうだね びっくりするかもしれないけど 頭と心臓を潰したら死ぬんだ 気をつけてほしい」

とても本気とは思えない回答だ まぁまともな回答が返ってくると思ってした質問ではなかったけれど


「頭つぶしても、心臓ぶち抜いても、死なないじゃん 君」

過去に実証済だ

ディメンションフィールド

こいつの体表面には常にディメンションフィールドが展開しており、切断されようが潰されようが切断面に発生する次元領域が空間跳躍の応用で接合部を繋げる いや、次元裏で繋がっているのだ 潰すのも同じ 空間そのものが伸縮されるため、ダメージが与えられない


こいつが宙から降ってきたあの日、助けなればよかったと何度も思った


「で?今日はどうするの?」

質問に答えないと、いつまでも同じ質問を繰り返しそうだ

「今日は海底遺跡に潜って、素材集め」


俺らの惑星には遺跡や遺物が存在する 過去この惑星に文明があった、のかは知らないが 俺がこれから向かうのは比較的新しい遺跡だ 新しい遺跡と聞くと、違和感があるだろうが 俺たちの惑星には遺跡や遺物が宙から突然降ってくる

意味が分からないだろうが 本当にそのままの意味で宙から降ってくる

どんな理由で自分達の遺物や遺跡を飛ばしているのかは不明 ディラフトに聞いてもう~ん、一緒に宇宙に上がってくれるなら教えられるよというので、聞くのをやめた

何らかの切実な理由があるのはニュアンスから伝わるが、宙に上がるつもりのない自分には関係のない話だ 


遺跡や遺物は年に結構な頻度で降ってくる この惑星には海しかない はじめてこの惑星に我々人類の祖先が移民してきたとき、周りには海、海、海 海しかないのでさぁたいへん

資源も当然ないので、どうするかと途方に暮れていたらしいが 宙からなぜか遺跡が降ってくる そしてその遺跡を調べると現存の人類の技術力をはるかに超える技術が大量に見つかったらしい その中でも希少かつ、我々が最も求めていたものが含まれていた その遺物の名前は『人工大地』 大地とはいっても土や砂とは違った何の素材でできているのかもわからない真っ白なタイル状の大地が突然海上に出来上がった その後もいくつもの遺物を攻略しながら、人類はいまだに何とか忌々しくも生き残っている所存だ 


「えぇ またぁ? 前にも言ったじゃ~ん 素材に困ってるなら私の船で用意するって」

口をすぼめて抗議してくる 全然かわいくない 


「君の手は借りない 返せない借りは作らない主義だから」


この惑星はもうだめだ 急速に終わりへと向かってる

その前に…

もうすぐアレが完成する 俺の本当の人生が、ようやく始められる


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