エピローグ
「其の御魂よ、告ぐ」
「葛籠にありし古き子の目覚めを」
「現と死の境の伊邪那美神、伊邪那岐神へ。誠の生命の救いを祈らん」
「三途を渡し罪を祓い給え。栄光を求めた希望を救い給え。渇望に溺れた
あの一件から、一ヶ月の月日が流れた。湖の帝王の死は連日報道された。今ではその熱は落ち着きあるものの、五王の一角が死んだことは社会……国際情勢に大きく影響があった。それはまた、別の話。
とあるマンションのベランダ。
ハートランドはセーラー服のままタバコを吸う。隣には、ユメキリが居た。彼女らは空を見上げ、大きくため息をついた。タバコの煙が空へと昇る。
「まさか、死んじゃうとはね」
「そうっすね。あのバカ、何してんだか」
空にはおあつらえ向きな満天の星空。一ヶ月前、陰陽の極が家に来た。彼は胸に孔の空いた斬利を担いでいた。そして短く、「死んだ」と告げ、死体を持っていってしまった。
それ以来、情報は一切入り込んでいない。今頃死体はどうなっているのか、陰陽の極は何処にいるのか。全てが謎なのである。
「復讐以外どうでも良い、とは言ってたけどさ」
その声は、震えていた。
「……」
やはり、悲しい。一ヶ月経ったぐらいでこの痛みは消えない。彼女にとっては孫同然だったのだ。
「先、戻りますよ」
ユメキリは肌寒さを感じ、部屋の窓を開け、中に戻っていった。彼も悲しくはあるが、彼女ほどでは無い。
「……はぁ、クッソ。こっちは覚悟してねーんだよ」
一人、ソファに座り込んだ。
「?」
と、
ピンポーン。
インターホンが鳴った。彼が彼女の方を向くと、彼女は頷いた。意図を理解したユメキリは立ち上がり、玄関へと向かう。
「はーい、どちらさ……」
ユメキリは固まった。目の前の少年に。懐かしい匂いがした。それに気づいたハートランドも振り向いた。
二つの視線に気づいた少年は、無邪気に笑った。
「よ! 元気してた?」
──完。




