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最初の友達

「はぁ……もう、なんなのいきなり……。ドア開けてすぐ土下座とか」


 悠里が愚痴をこぼし始めた。だから俺は、無視して蘭と話を始めた。


「あ、そうそう蘭。この前の話なんだけど……」

「って、あたしを無視すんな!」

「なんだよ。今から真面目な話すんだから、邪魔するなよ」

「はぁ!? じゃあ、あたしはなんでここに連れてこられたよ! てか、さっさと説明しなさいよ。どうして真面目に学校来る気になったのか」


 まったく、質問の多い奴だ。


「まぁ、とりあえず、だ。お前ら二人とも自己紹介しろ」

「え? それはまぁ別にいいけど。それ、答えになってないんだけど?」

「いいから、ほらさっさとしろ」


 俺がそう急かすと、悠里はしぶしぶと言った様子で、自己紹介を始めた。




「それじゃあ、よろしくね。蘭くん」

「はい、こちらこそよろしくお願いします。愛崎さん」


 そうして自己紹介を終える。このとき、俺と蘭の知り合った理由とかも悠里が効いたため、蘭は説明していた。

 そこまできたところで、俺は「う、うん」とわざとらしく咳払いをした。


「えーそれじゃ本題に入るが……」

「あ。やっときた」


 俺がそう言うと悠里は俺に視線を向ける。


「まぁ、簡単に言うと、お前と蘭を会わせるってのが目的だったんだ」


 悠里は「はぁ?」と俺を呆れたように見てくる。

 でも、俺の目的は本当にそうだったのだ。

 俺は蘭に向き直り(といっても体を三十度ほど曲げるだけだが)話しかけた。


「お前、言ってただろ? お友達作り大作戦!! って」


 蘭は俺の言葉に、一瞬あっけに取られた表情をしたが。すぐに笑みを浮かべた。


「覚えててくれたんですね……」

「まあな」


 忘れるわけがない。そのせいで、お前を傷つけしまったのだから。

 今でも俺は友達を作ることには抵抗がある。直感が言った。

 真実にある俺の心に傷つけるものの記憶。

 俺のトラウマ。

 だが、誓ったのだ。俺は自分自身に。


『友達ってものに希望を持っていたいと思う』


 そうだ。俺は持ちたい。

 希望を。こいつらの友達でいることに誇りを。


「もう一つあった悠里の質問の答えも、これが関係してるんだ。俺は蘭と出会って、そして蘭のためになることをしたいと思った。そのためには、俺自身ちゃんとしなきゃって、そう思ったんだ。

 そして、その一環として蘭と悠里を友達にしてしまおうと考えて、連れて来た訳。友達の友達は友達とか言うしな」

「天皇寺さん……」

「咲夜……」


 いつになく柄にもないことを言った俺は、その気恥ずかしさから逃れるため話をそらすように話を進めた。


「とにかく! お友達大作戦の友達第一号として、悠里が友達になったわけだ! だから次は悠里も交えて、この作戦を続行するぞ」

「う~ん……なんか咲夜に指図されるのが癪に障るけど、そうね。蘭くんのためにあたしも頑張ってみるわ!」

「ああ、そのとおりだ悠里。頑張ろうぜ!」


 気合の入った、あまり意味のない会話をしたところで。蘭が「あの~」と申し訳なさげに、小さく手を上げた。


「うん? なんだ蘭」

「実はですね……その件に関して、もう少し話しておかなければならないことが……」


 話しておかなければならないこと? ……そういえば、前はその話をしている途中で俺が帰ったからな。まだそこまでちゃんとした説明は聞いてなかった。

 そうか。もう作戦とかできているのかな。大作戦とかいうくらいだし。それはさぞ、すごいものなんだろう。

 男特有のこの感覚。意味不明なことに熱くなったり。どうしようもないことの妄想をしたり。今の俺はまさしくそれだ。大作戦という名前に期待で胸を膨らませている。


「僕の過去のことなんですけど」


 ……ああ。違った。大作戦には関係ないのか。つまんねー。

 そりゃそうだ。こいつだもん。蘭だもん。そんな作戦とかいうものなんか考えているわけがないわ。


「っていっても過去のことねー……。それに何の関係があるわけ?」


 悠里がもっともらしいことを聞いた。

 実のところ俺もそれは気になっていた。

 実質的には何も聞かずに帰っているわけだし、俺も蘭のことを何も知らないのだ。

 まず、蘭が友達を持ってなかったのは、ここにいて誰とも会ってなかったからだろう。つまり、蘭がここにいる理由は、過去の何かに関連していると俺は推察する。


「はい。それで聞いてくれますか?」


 蘭が不安そうに聞いてくる。そんな蘭に俺は軽く笑って見せた。


「ああ。頼む」


 そうして蘭は、自分の過去について話を始めた。

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