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3.入団試験 その1

「試験は全部で三つ。商人として基本的に必要なものからうちとして必要なものを試させてもらうよ」

 団長はそう言った。

 果たして私にそれをクリアできるのだろうか?


「まずは商人たる者、契約書を作成したり理解したり、それにお金の管理には計算も必要だから読みと計算をしてもらうよ」


 終わったかもしれない。

 計算はともかく、この世界の文字など読み書きできるわけがなかった。


「はい、これが試験ね。紙は貴重だから問題は使い回しでボロボロで申し訳ない。回答は口頭でお願いね」


 団長はそう言って試験問題を渡してきた。

 私を案内してくれた男もまだ部屋に残っている。私が不正しないか見張っているようだ。

 どうなるか分からないが今はやるしかない。


 問題を読む。


 ……読めるぞ、これ。

 転生者にありがちなご都合能力がちゃんと付与されているようだ。


 私は書いてある文字をそのまま読んだ。


「おー、しっかり読めるんだね。この国の識字率は六割くらいだけど、うちに入団希望なだけあって勉強はしてるみたいだね。計算はどうだい?」


 渡された紙には四則演算が書かれていた。

 元の世界で高校卒業していれば暗算できるレベルの問題だった。これなら私でも解答できる。


 とりあえず全部口頭で答えを伝えた。


「驚いたな……」

 団長はそう口にした。隣の男も同じような感想なのだろう。顔に驚きが出ている。


「そうですか?」


「何も道具を使わずに、しかもこの速さで全問正解できるなんて……この世界に何人いるか。もしかしたら魔法でも使った」


「いえ、魔法でも何でもないです」

 元の世界の教育水準に感謝だ。


「うーん、この計算能力だけでもすぐに合格でもいいんだけど、規則だから他の試験も続けさせてね」


「あっ、はい、分かりました」


「じゃあ、次の試験だけど君の自慢の特技があれば見せてもらいたい。室内でやるならこのまま続けたいけど屋外なら移動しよう。どうする?」


 私の能力は鑑定なはずだ。

 このまま室内でも問題ないだろう。


「私の特技は鑑定です。このまま室内でお願いします」


「ほぅ……鑑定ねぇ……確かに商人には必要な能力だ。しかし三等品ならまだしも偽物を掴まされても大損だ。厳しめに試験させてもらうよ」


 何かハードルが上がってるんですけど。


 団長は男に指示して宝石を三つ持って来させた。


「ここに三つの宝石がある。価値の高い順に並べてみてくれ」


「触っても大丈夫ですか?」


「もちろん、ただ壊したりしないでくれよ」

 団長はそう言って宝石を渡してくれた。


 私はそれを受け取ったものの鑑定スキルをどうやって発動させたらいいか分からなかった。

 とりあえず宝石を一つ手に取り鑑定の真似事をしてみる。


 すると宝石の周りに文字がでてきた。


名称:道端の石

価値:0

備考:宝石のように加工されているが、ただの石。認識を変化させる魔法で価値が操作されている。


 分かりやすい。

 この感じで他の二つも確認してみた。


 その結果に沿って価値が高いと表示された順に並べてみた。


「私から見て右から順に高いものになっています」


「本当にそれでいいのかい?」


「はい、大丈夫です」


「そうか、残念なが……」


 団長が言い掛けたが私はそれを遮った。


「すみません、ただしそれは認識操作魔法で操作された価値の順番です。実際は全て道端の石を宝石のように加工したもので、さらにそこに認識操作をする魔法で価値を誤認されるような細工がされていました。その細工された価値の順に並べました」


 私の言葉に団長と男はまたしても驚いた顔をしていた。


「驚いた……これは本当に驚きだ。魔法の細工を見破る鑑定士はいるが付けられていれ偽の価値まで正確に言い当てるのはよほどの鑑定眼がないと難しい。それにこの速さでそれをやるなんでよほどのことだ。最終試験は武装商団ならでは武器の使用練度を見させてもらうんだけど、さっきの計算能力と鑑定眼で鑑定士として雇うなら武器の試験は免除でいいけどどうする?」


 鑑定のスキルは本物だった。

 本来、私には分からないことまで見せてくれる。この能力があればこの世界で食べていくことにも困らなさそうだ。

 しかし、鑑定士で女神様に言われたことを果たせるのかが自信がない。


 武器の使用練度の試験なんて、武器なんて扱ったことのない私にできるのだろうか。

 だけど女神様に渡されたスキルで何とかなると信じて進むことにした。


「私はここで商人になりたいので次の試験もお願いします」


「その心意気はいいね。じゃあ、外へ行こうか」


 私は団長と男と一緒に三番目の試験へ向かった。

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