第72話 正体、そしてギター
「凄いよ!本物のガバメント持ってるなんて!しかもベレッタとかコルトパイソンまで!」
「お気に召したようで良かったです。しかしそれは本物の武器ですのでご注意を。」
本物の銃を見て、はしゃぐ猫耳髪の少女は愛美先輩だ。玲に対応を任せている。所謂丸投げだ。
「・・・何かごめんなさい。いろいろ。」
「今に始まった事じゃないでしょう?」
するとドアが開き、チリンチリンと鈴が待ち人の来店を告げる。
「いらっしゃいませ。堂島先生、それに雪菜ちゃん。カウンター席へどうぞ。」
二人がカウンター席へ座った事を確認して、僕は話しはじめる。一応二人には今から僕らの秘密を告げる事は言ってある。
「・・・単刀直入に言う。僕は桜林学園生徒会副会長だ。ゾンビ事件が解決したら桜林学園に戻ることになっている。その事は最初に話した。そして、僕が銃の扱いに慣れていて人殺しを躊躇わないのかは、昔の事が関わっている。」
そう言って僕は9年前に起きた銀行強盗の話を始めた。話す前にこの事件を知っているか確認したところ、全員知っていた。まあ、その事件の日になると報道特番のような番組などで事件の概要から、この事件後に起こった論争まで、振り返るという形で報道しているのだから無理もないのかもしれない。彼女達も同様だが、世間の人々は、この事件を、10年間の中で唯一特殊部隊が発砲して、銃を持っていた犯人を射殺したというふうに認知されていた。その事実を否定して僕が犯人の銃を奪い取り、射殺したという事実を伝えると生徒会メンバーは声が出なかった。
「僕の紅眼はその時に宿ったものだ。そして僕は自衛隊の独立武装大隊の隊長でもある。」
勿論、生徒会メンバーは困惑した。無理もない。ならば、
「総員、敬礼!」
僕の指示で玲、堂島、雪菜が僕に対して敬礼する。メンバーは驚愕した。まさか自分達の顧問、綾音にとっては自分の担任がまさか本当は軍人だとは思わないだろう。
「...ずっと、騙していたんですか?」
綾音の悲痛な小声が静寂しきった喫茶店に響き渡る。しかし堂島はしっかりとした口調で反論した。
「騙していたわけではない。本職が軍人でそれを隠すために教師をやっていたんだ。...だが、黙っていたのは事実。騙していたと言われても無理はないがな。」
綾音はこぼれ落ちそうになった涙を拭い、決意を固めたような顔をした。いや、怒ったような顔でもあった。
「私には両親がいません。ブリュッセルブラッサムという組織に殺されました。」
大粒の涙をこぼしながら言い放った言葉が出なかった。まさか、実害を出す組織だったとは・・・。
「ブリュッセルブラッサムは壊滅した。というか僕らが壊滅させた。」
僕の事実を聞いた綾音はキョトンとした顔をした後、ずっと溜め込んでいたのだろう。抑え込んでいた感情が一気に溢れ、嗚咽となる。僕は何も言わずに彼女の顔を僕の胸に押し込んだ。綾音は安心したのかわからないが、子供のように声を上げて泣いた。
「・・・ごめんなさい。私、子供みたいに泣いて・・・。」
「いや、良いよ。気にしなくて。」
数分後、落ち着いた綾音は顔を赤くして俯いてしまった。...何か美咲みたいで可愛いな。
「ヘックション!」
「どうしたの?風邪?」
「何か誰かに噂された気がするわ...。きっとあいつね。」
「あいつ?ああ。ミヤビの事ね。本当、美咲は彼のこと好きよね~。」
「う、うん...。早く戻ってきて欲しいわ...。って何言わせるのよ!」
「まったく。あんたは恋愛の事になるとウブよねぇ~。」
シャルロットと美咲は生徒会室で女子会をしていた。一応、シャルロットは生徒会メンバー全員が雅の恋人である事は知っている。ちなみに明日香達二年生のメンバーは篠宮先生に呼ばれている。お菓子を広げてだべりながらポテチやチョコなどを食べる二人は平和だなあと思っていることだろう。閑話休題。
「このことは他言無用で頼む。オフレコっていう感じで。」
「まあ、良いでしょう。助けてもらった訳ですし。」
「誰も信じる人もいないだろうし。」
確かに誰も信じないでしょうけど、言われると結構傷つきますよ・・・?
「これは・・・エレキギター?」
愛美先輩が見つけたのは紅黒のギター。GALAXY STARのライブの時に使った僕のギターだ。
「ああ。僕、学園に居たときはバンド組んでたんですよ。まあ文化祭限定の生徒会バンドですけどね。アンプもスタンバイしてあるし、久しぶりにやるか。」
と言って僕はギターをアンプに繋げ、短めの曲を一曲弾いた。調子に乗ってギターソロを弾いたりもした。やがて愛美先輩も参戦して、どっちが上手いかのギターバトルになっていた。
「やりますね、愛美先輩。」
「君もやるね~、雅君。」
生徒会メンバーは絶句していたが玲だけはドラムで参戦し、堂島や雪菜も近くにあったエレクトーンとベースをアンプに繋げ、いつしか即興でバンドが完成してしまった。
「まさか、参戦して来るとはね。堂島、雪菜。」
「久しぶりに血が騒ぎます。」
「ええ。愛美先輩に教えてもらって、隊長にも教わってましたから。」
そういってアニソンを中心に何曲か弾いていると、外に人だかりができ、演奏が一段落すると拍手とともに人がなだれ込んだ。この機を逃さんと言わんばかりに玲が
「空いてる席にお座り下さい。ご注文をお伺いします。マスター、手伝ってくださいね?」
「あ、ああ。分かった。堂島、雪菜。マニュアル読んできて。」
僕ら四人は喫茶店に入ってきた全ての客の注文を取り、時に紅眼を使いながら、完全な営業スマイルと玲手作りのスイーツでお客さんの心を掴み、リクエストでギターを弾きながら全力で動きまくった。最後のお客が帰ったときにはもう18時半を回り、生徒会メンバーもそのときには一人を除いて全員帰っていった。
「疲れた・・・。明日が休みで良かった。堂島、雪菜。後で割引券やるわ・・・。」
「「あ、ありがとうございます・・・。」」
そういって僕らは2階のリビングに入った瞬間、力尽きたように意識を手放したのだった。ちなみに堂島と雪菜の二人が、割引券なんて貰ってもあまり嬉しくないと思ったことは言うまでもない。




