第69話 喫茶店、武装大隊会議
その後、なあなあになった編入の手続きを全て済ませた僕は拠点である喫茶店に帰った。
その名もカフェ・シェリエ・ドルチェ。玲が拠点として買い取った元喫茶店の空き家をこのゴタゴタな年末年始に諜報部隊総出で改修したらしい。2階に住居空間を完備した結構本格的な家に僕は満足した。そして僕は明日開店するという喫茶店に二人を呼び出した。
「まさか雪菜がここの学校だとは思わなかった。」
「すいません隊長。流石に学校内でこの関係を知られる訳には行きませんから。」
「そうですね。私も余程の事がない限りこの辺りでの行動は避けるようにします。」
「いや、明日この喫茶店、開店するからさ。別に常連で来てもらって構わないんだが。」
そう。堂島と玲のみならず、この柊雪菜も独立武装大隊の隊員なのだ。衛生兵で戦いには向かないが一応の護身術は叩き込んである。
「それでは夕飯も兼ねてるが会議を始める。」
玲が絶対に表には出さないメニュー。鶏のサッパリポン酢焼き定食を用意した。
「分かっているとは思うがシャルル・シードが今、日本に来日している。」
「え?隊長、私聞いてないんですけど?」
「そりゃそーだ。俺と玲、堂島とかの上層の人間しか知らない。」
米軍最強とうたわれるシャルル・シードが日本にいる事が下士官にでも知られたら興味本位で近づいて返り討ちに遭うとも分からんからな。
「つまり私はまだ下士官なんですね・・・。あ、これ美味しい。」
「いくら神秘の聖女とはいえ、軍曹だからな。尉官にはならないと。さすが玲。美味い。」
「ありがとうございます。これも出してみますか・・・。」
「いや、それじゃあ喫茶店が料理屋になっちまうよ。カフェなんだろ?」
好評だったメニューで玲が変な構想をし始める前に話を続ける。
「お前らの問題もあるが、こっちの方が重要且つ危険だ。」
「・・・何があったのですか?」
遠慮がちに堂島が聞いてくる。彼も覚悟の上で聞いているのだろう。
「シャルルからの情報だが、大陸紛争の生き残りがテロを計画している。」
案の定三人は絶句した。まあ無理もない。雪菜はテレビで、堂島は現場でその時のことを見ているからな。
「シャルルはそのことの調査で日本に来たんだと。」
「なるほど。事情は分かりました。しかし、何故私達が危険に晒されるのですか?」
「僕は今回のゾンビ事件、そいつが関わっていると睨んでいる。」
まあ、そいつがゾンビの元を作れるあの人を脱獄なり何なり手引きして暗躍してるんだろうな。仕方ない、またゼロをやるかな・・・。
会議を終わらせ、二人と別れた僕は玲とともに自室で明日の準備をし、明日以降に憂鬱になりながら、僕は眠りに着いた。
一方、シャルロットは順風満帆なスタートを切っていた。金髪碧眼でスタイル抜群、アメリカ人にしては日本語が上手いらしく、あっという間に友達ができた。しかしクラスにはどこか影があった。そのことを無視できるほどシャルロットは大人ではなかった。
「ねえ絵里香、みんな暗いわね。何かあったの?」
ピクッと眉が動く絵里香。シャルロットは訝しい目でもう一度聞くと絵里香は観念したように両手を上げ、口を開いた。
「みんな心配してるのよ。藤堂君が行方不明になってね。」
「藤堂君?」
シャルロットは雅の事を知っているのだが敢えて知らないフリをした。
「貴方とちょうど入れ違いで行方不明になってね。」
シャルロットは興味本位に雅が学校でどういう風に生活しているかを聞いてみる事にした。そうして数日が経過した。生徒会副会長の仕事も終わらせて調査も忘れない。今日は桜林学園のデータベースに侵入した。
図書館の個室にあるパソコンでカタカタとキーボードを叩く音だけが響く。
「これは・・・!?」
シャルロットが見つけたのは桜林学園で去年の4月に起こったゾーンと呼ばれる人形がこの学園に侵入、それを生徒会中心に撃破したという旨の報告書。そして明日香が書いたとされるゾーンの弱点や性能等をまとめたレポート。そして
「7月のアルカディア王家の来日とその時に起こった旧騎士団の襲撃の時に遭遇した反乱鎮圧の英雄、“黒き弾丸ゼロ“?」
紅の暗殺者ゼロとうり二つの写真と通り名が違うゼロ。シャルロットは混乱した。
「でも私の推測とは合致するわね。今回の任務と雅の依頼、完璧に繋がってる。」
そうとしか思えなかった。彼女はとりあえず、USBにデータをコピーし、誰かが作っておいてくれたバックドアに感謝しながら図書館を後にした。この先の学校生活にほんの少し不安を覚えながら。
薄暗い倉庫。ここはかつてブリュッセルブラッサムが拠点としていたところだ。そこに思い出したくない記憶を思い出して歯軋りする一人の女。
女の前に現れた一人の年配の男。
「無事に出れたようだね。おめでとう。」
「あんたのお陰だ。流石、大陸紛争の時に、化学兵器を復活させたと言われる死の化学者、アブラダ・パトリック・ゲルマン。」
アブラダはフッと笑いながら、出所祝いと言いながらアタッシュケースを渡した。
「扱い方は分かるだろう。むしろ扱う方に関しては君の方がプロだろ?瀬名霧夏。」
「ああ。助かるよ。」
女はそう言ってスイッチを入れると壁や倉庫の至る所にあった人形の目に赤く光が宿った。
「待ってろよ、黒き弾丸。今、貴様を、憎しみと復讐で殺してやる・・・!」




