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黒き弾丸と白き学園の守り巫女  作者: 藤原ミヤビ
第3篇 ゼロから始まる学園祭
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第60.5話 聖夜、藤堂雅のクリスマスの災難

 雪が降る寒い12月24日、クリスマスイブの夜。子供のいる一般的な家庭ならこんな会話があるだろう。


「ねぇねぇお父さん!サンタさん、ちゃんと来るかな!?」

「そうだね。いい子にしてたら来るかもね~。」

「お兄ちゃんも子供ね。サンタさんなんて居るわけないじゃない。ね、お母さん。」

「あらあら。サンタさんはね信じる人には来るのよ。」


 じゃあ信じない人の所には行かなくていいんだな。そう思ってしまうお父さん。会話を楽しむ家族に奇跡が起こることを告げるかのようにインターホンが鳴らされる。


「ほら、誰か来たみたいよ。」


 そう言う母はサンタさんを信じていない妹に見に行かせる。妹は渋々玄関に向かい扉を開ける。そこには特徴的な髭に全身赤い服の大柄なおじさんが立っていた。


「ほぅほぅほぅ。メリークリスマス。お嬢さん。」

「え!?サンタさん!?」


 驚きを隠せないながらも嬉しさが滲み出ている妹は急いで親を呼びに行く。兄はサンタさんを見て興奮して、子供の両親も子供達の喜ぶ姿に頬が緩む。サンタさんは子供二人のプレゼントを渡して他の子供達のもとに向かうため家を去って行った。トナカイの引くソリに乗って。


「はぁ、やれやれ。何で僕がこんなことをやらされる羽目になったんだ。」


 僕は玲と煌とともに終業式までに冬休みの課題を終わらせて、終業式直後から京都の藤堂家本家に帰省中だ。年明けまではこっちで過ごす事にしている。あれは本家の屋敷に到着して翌日の事だった。ちなみに明日25日には生徒会メンバーが来てクリスマス会をやる予定だ。


「遠山さん、何をしてるんですか?」


 遠山さん、というのは藤堂家の家老で皆から老翁と呼ばれている人物だ。


「おや。雅様。これはサンタの準備ですよ。毎年この辺りの子供達にプレゼントを配ってるんです。」


 そこへ藤堂家当主にして叔母の深耶(通称姉さん)が玲とともにやってきた。


「老翁、もうクリスマスプレゼントの準備?」

「はい。何事も早めの準備が肝心でございますから。」


 袋の中にはゲーム機やソフト、おもちゃが多く入っていた。これは結構重そうだな。ソリもない中でどうやって届けるんだ?


「マスター、外にトラックが止まってませんでしたか?」


 あ、そういえば。夢がないな~。まあ仕方ない事なんだがな。


「それではこの袋を運んで-おぅあ!?」


 無理に持ち上げようとしたことでグキッという擬音が鳴るかのように腰が反れ、うめき声を上げながら彼は倒れ込んだ。


「遠山さん!」

「老翁!?」

「グランドマスター!!」


 三者三様の呼ばれ方をされた本人は腰を押さえて脂汗をかき、苦しそうな表情を浮かべている。これは明らかにやってしまった。ギックリ腰だ。


「奥様・・・大変申し訳ございません・・・。少々腰をやってしまいました・・・。」

「少々どころじゃ済んでないじゃない!大丈夫!?」


 声を聞き付けた他の使用人がやって来る。辺りは騒然としていた。


「結構痛いです・・・。しかしこのままではサンタを誰かに任せる訳には参りません・・・。」

「玲ちゃんにでも任せればいいじゃない!」

「グランドマスター、肩をお貸しします。今は早く医務室へ。」

「いえ、サンタは男性です・・・。できれば使用人の中から代役を・・・。」

「なら、私がやるわ!」

「「「えっ!?」」」


 全員が驚きの声を上げる。一応姉さんがサンタの格好をしたらという想像をしてみたが・・・。


『いらっしゃい。今日はお客さん一人?何かあった?』


 ダメだ・・・。完全にクリスマスでイベント開催中のキャバクラだ。全員がその想像をしたらしく、どうにもならない空気感が漂った。


「仕方ない。僕が行く。」


 といってサンタ役を買って出たのだった。リアリティを重視するため子供のイメージするサンタさんを検索して、廃車予定になっていた車を改造、エンジン搭載のソリと機械動物のトナカイを作り上げて、極めつけに独立武装大隊の最新兵器ゼロアーマーを拝借。クリスマス仕様に飾り付けている。


『マスター、残り三軒です。』

「了解した。マップにその三軒を表示、一気に終わらせる。」


 僕に鞭を打たれたトナカイはゆっくりと進みはじめた。

 次の家は他の家よりも少しだけ豪華な家だった。家全体にクリスマスのイルミネーションを施している所を見ると、クリスマスをおもいっきり楽しむ家族のようだ。


「・・・それがよりによって京都府警の本部長様のお宅だとは。」


 京都府内の全警察官に奇妙なソリとサンタの格好をした者を見ても絶対に手出ししないというお願いを京都府警本部長に言いに行った所快くOKしてくれたのだが、


「家に来てくれないか?」

「・・・え?」


 話を聞くと、小さな子供四人がサンタさんを心待ちにしているらしく、来てくれるなら要求を呑むと言われたのだ。


「現地に到着。子供達は寝ているようだ。」


 僕は子供達を起こさないように本部長にプレゼントを託してさっさと去った。子供達に会っていって欲しいと言われたが


「サンタさんはいい子に寝ている子供にはそっとプレゼントを置くのがルールなんです。」


 と上手いこと言って納得させた。子供達を無理に起こすのも嫌なんでね。


 サンタを乗せたソリはシャンシャンとスズを鳴らしながら進んでいく。

 さてと、次の家は普通の一軒家のようだ。子供一人がお留守番しているようだ。僕は家のインターホンを鳴らした。


「はい・・・な、何ですか?僕に何か用ですか?両親は今、出かけてていません!!」


 あの、何か凄い怯えられてるんですけど。サンタだよ?サンタクロース。クリスマスの赤いおじさん。まさか伝わってないのか?


「サンタクロース?サンタクロース・・・は!三大(さんた)殺ーす!?」


 どうやったらそんな風に解釈出来るんだよ!?被害妄想も大概にしてほしいわ!


「止めてください!殺さないで下さい!僕は三大(さんた)じゃなくて寛大(かんた)です!」


 地味に惜しいじゃないか。これでは埒が開かないのでプレゼントを置き、足早にその場を去った。全く、子供にサンタの存在を明言しておけよ!親!



 どうやらここが最後の家のようだな。集音機で音を拾うと、言い争っている声が聞こえて来る。


「・・・っと!どういう事なの!?私達との約束を破る気!?」

「仕方ないだろう!会社でトラブルなんだよ。俺が行かなきゃ会社の皆が誰も笑顔で明日のクリスマス当日を過ごせない。」

「だからってあの子との約束を破るっていうの!?会社の為に貴方が犠牲になることないじゃない・・・!」


 父母の言い争い、それを涙を堪えながら俯く少年。しかし彼からはぽろぽろと涙が零れはじめる。少年は願った。願うしかなかった。


(サンタさん、僕にクリスマスプレゼントはいりません。だからお父さんとお母さんが仲直りして一緒にクリスマスを過ごさせて下さい・・・!)


「全く、サンタは365日のうち一日しか働かないんだぞ?・・・しかし見てられないな。玲、頼めるか?」

『マスター。トラブルならすぐに解決します。どうやらコンピューターウイルスに感染したようですね。ワクチン作成に30秒、転送に10秒です。』

「マジかよ・・・。了解した。即座に実行せよ。」

『イエス、ユアマジェスティ。』


 きっかり40秒後、彼女からワクチンプログラムが転送された。僕はゼロアーマーの飛行システムとブースターを起動させて一気に飛び上がった。


「本当に最悪!」

「今度埋め合わせするから。」


 悪態をつく母親と悲しむ少年。車に乗り込もうとする父親に電話がかかる。


「何だ?え?トラブルが解決した?何!?空飛ぶサンタが来ただと!?」


 困惑した表情を浮かべている両親を余所に少年は玄関に赤い箱を見つける。


「お父さん!お母さん!サンタさんだよ!サンタさんがお父さんを助けてくれたんだよ!」


 喜ぶ少年。それを見た両親はきっと子供の言う通りかも知れないと思いながら笑顔で家へと入って行った。


 やれやれ。面倒な仕事だった。サンタが365日休む訳だ。街には雪が降りはじめて、何十年か振りのホワイトクリスマスとなったようだ。僕はソリを遠隔操作しながら空に文字を書くように飛んで行った。Merry Christmasと。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。時期外れのクリスマス編、いかがだったでしょうか?

次話の登場人物紹介の後、新篇に突入します。新年を迎えた雅達に待ち受けるものとは!?新キャラも登場します!現在必死に執筆中です。次篇もお楽しみに。

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