エピローグ
帰りのホームルームのチャイムが鳴り、生徒達が教室を後にする。
周りの生徒達が友達同士で話しながら帰る中、一人で帰り支度をするメガネをかけた、黒髪で、お下げの少女、朝顔美雨がいた。
美雨は一人で教室を後にする。
あの地獄のような一日から既に数ヶ月が経つ。
脱出してすぐ、舞と美雨は感染してないか検査を受けた。
美雨はもちろん、噛まれた舞にも感染の兆候は見られなかった。
何故、噛まれたのに感染しなかったのか、医師に聞かれた舞はこう答えた。
『好きな女にキスしてもらったんだ』
舞は隣にいた美雨にウインクする。
その一言で周りにいた人間はみんな赤面。
特に当事者の美雨が一番赤くなっていた。
(もう。あんな人がいるところで、言わなくてもいいのに)
美雨は思い出すとつい顔が緩んでしまう。
「舞。いつ帰ってくるんだろう」
今、舞は彼女のそばにはいない。
あれから美雨の血で作られたワクチンを散布し、爽栄市のゾンビは全て活動を停止。
その後、運良く感染しなかった生存者達を自衛隊が救助した。
ニュースでは、新種の伝染病と報道され、今も街は閉鎖されている。
救助された中に、あの柴犬の勝太郎と海崎夫婦も助かった事を知って、美雨はとても嬉しかった。
美雨が両親と最後のお別れをした後、舞がこう言ってきた。
『美雨。私はしばらく君の元を離れる。離れたくないが、S-ウィルスを悪用されるわけにはいかないんだ』
正直に言えば美雨は寂しかったけど、舞とは連絡を取り合っているので弱音は吐かないと決めていた。
でもやっぱり寂しいので、スマホを起動させる。
待ち受けは舞の寝顔だった。
入院してた時にこっそり撮ったものだ。
と思ったらその後に写真を撮った事がバレていたりする。
でも美雨はこの待ち受けを消す気はなかった。
舞の無防備な寝顔は、自分だけしか見れないと思うと、もったいなくて消せなかった。
その時、待ち受けに白いものが落ちる。
「あっ、雪。綺麗……」
季節はもう冬。空から雪の粒が降ってきた。
「舞もどこかでこれを見てるのかな?」
美雨は愛しい人が一緒の光景を見ていることを願って帰り道を歩く。
横断歩道が赤だったので美雨は歩みを止める。
横断歩道には美雨しかいない。
一台のトラックが通り過ぎたその時だった。
反対側の横断歩道に見覚えのある制服姿の女子がいつの間にか立っていた。
「あっ……!」
それは美雨が一番会いたかった女。
紅い髪を持つ気高い狼のような、美しい少女だった。




