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第四話






 数日後、児玉は伊藤博文と料亭で会談をして伊藤を説得していた。


「今が御決断の時です伊藤さん!!」


 児玉は伊藤に歩み寄る。伊藤も伊藤で最後までロシヤと交渉をして打開を図りたい見込みであった。しかし、ロシヤはそもそも日本に対し打開をするつもりは毛頭なかった。


「不肖この児玉も戦場で血を流す覚悟です。ですが万一の場合、陛下自ら陣頭指揮を……勿論閣下も死んで頂きますッ」

「……分かった児玉君、この伊藤も出来る限りの事もしよう」


 児玉の説得は夜中の一時まで回る事になったが伊藤を説得する事が出来た。

 そして二月四日、御前会議が開かれた。


「……では史実通りに最早開戦しか無いのだな?」

「はい。二月一日にも直前交渉をしましたがなしのつぶてであります」


 この交渉は史実に無い交渉である。(少なくともW〇kiには載ってない)


「……決議通りで良い」


 陛下も開戦を決断した。そして二月六日、外務大臣の小村寿太郎はロシヤのローゼン公使を外務省に呼び、国交断絶を言い渡した。同日、駐露公使栗野慎一郎はラムスドルフ外相に国交断絶を通知するのだった。

 日本は前年前から出来る準備は可能な限り行っていた。陸軍は第一軍と第二軍を編成しており、それぞれ黒木為大将、奥保鞏大将が司令官に就任していた。

 海軍も第一艦隊と第二艦隊が佐世保に停泊、第三艦隊はこの時艦隊更に二つに分け、一方を佐渡島にもう一方を大湊に停泊していた。

 また、第二艦隊はそれぞれ第一艦隊と第三艦隊に組み込まれており臨時旗艦は『金剛』型コルベットの二番艦である『比叡』になっていた。

 この『比叡』はある予定が終わるまで佐世保に停泊し続ける。第二艦隊は第三戦隊第一小隊(『出雲』『磐手』『吾妻』)第二小隊(『八雲』『浅間』『常磐』『春日』)第三小隊(『日進』『青葉』『衣笠』『古鷹』)と分けて第一小隊が第一艦隊に第二、第三小隊が第三艦隊へ臨時配備された。

 同じく第四戦隊(『浪速』『高千穂』『明石』『新高』)も第三艦隊へ臨時配備。第四、第五駆逐隊は第一艦隊に臨時配備。第九、第二十艇隊は第三艦隊に臨時配備していた。

 あえて第二艦隊を一隻までしたのは将和からの具申によるウラジオストク、旅順艦隊の早期撃滅であった。

 そして将和にとある移動命令が来ていた。


「……特務参謀ですか?(まーた、前回と同じか……)」

「うむ。海軍と陸軍の連絡係に近いが……何かあった時は君に聞くようになっている」


 わざわざ将和を海軍省に呼び出して移動命令を受け渡した山本大臣はそう告げた。


「君の移動は開戦後だ。暫くは休んでくれ」

「分かりました」


 それから二月八日、日露開戦となった。(宣戦布告は十日)日本海軍は史実通りに駆逐艦の奇襲攻撃から始まった。

 日本海軍は第一〜第五駆逐隊を全て旅順港に差し向けた。史実通りであれば大連港に敵はいない。その為、聯合艦隊は思いっきり旅順港を叩けという大本営からの命令だった。

 命令を受領した聯合艦隊司令長官の東郷平八郎は眉唾物だと認識しながらも旅順港のみの攻撃を絞った。

 そしてそれが成功したのである。


「全艦突入せよ!!」


 第一駆逐隊司令の浅井正次郎大佐は旗艦『白雲』に座乗して突入命令を出した。

 駆逐隊は旗艦『白雲』を先頭に単縦陣で突入を開始する。総勢十九隻の駆逐艦は開戦前から鍛えに鍛えた操艦技術で航行をしている。

 途中の2050にロシヤ駆逐艦を発見して灯火を消した。史実では衝突しているが鍛えた操艦技術で衝突する事なくロシヤ駆逐艦を通過した。

 そして九日0020、港外に停泊していたロシヤ艦隊を発見した。


「敵艦発見!!」

「水雷戦用意!! ギリギリまで近づくぞ!!」


 史実では一万で攻撃をしたが、旅順を守備するロシヤ軍の油断もあり駆逐隊は距離4500まで近づいて必殺の魚雷を発射した。

 その結果、史実通りに戦艦『ツェサレーヴィチ』に四本、『レトヴィザン』三本、防護巡洋艦『パラーダ』に五本の魚雷が命中した。

 大破した戦艦『ツェサレーヴィチ』『レトヴィザン』は艦の助けにより何とか曳航されて湾内に入るも座礁擱座した。この攻撃で二隻は黄海海戦は元より戦争が終結するまで擱座するのであった。

 しかし防護巡洋艦『パラーダ』は他の二隻より運が悪かった。右舷に五本の魚雷が命中してパラーダは轟沈したのである。

 この攻撃で旅順艦隊は開戦初日で保有する戦艦の3分の1を事実上喪失するのである。




「開戦だ開戦だ!!」

「日本海軍が旅順を攻撃だよ攻撃!! この攻撃で戦艦2隻を撃破したよ!!」

「号外だ号外!!」


  旅順口攻撃から始まった日露戦争。これと並行するように同日、陸軍先遣部隊の第十二師団木越旅団が海軍の第四戦隊(旗艦『浪速』『高千穂』『明石』『新高』)、第九艇隊及び第十四艇隊の水雷艇八隻が護衛して仁川に上陸する任務を携えていた。

 そして史実通りに仁川沖海戦が勃発した。違う事と言えば、今回は装甲巡洋艦『浅間』は参戦していなかった。


「砲撃開始!!」

「撃ちぃ方始めェ!!」


 『浪速』の安式四十口径十五.二サンチ単装速射砲(四十口径か四五口径だが此処では四十口径に統一)が砲撃を始めて砲撃戦を展開した。

 『高千穂』『明石』『新高』と合流した『千代田』も砲撃を開始して防護巡洋艦『ヴァリャーグ』と航洋砲艦『コレーエツ』に至近弾を叩き込む。無数の水柱が『ヴァリャーグ』と『コレーエツ』を包むが二隻は無傷で二隻も砲撃を開始する。


「アゴーニ!!」


 『ヴァリャーグ』も負けじと1892年型十五.二サンチ単装速射砲で『浪速』の周囲に水柱を噴き上げさせた。

 しかし、二隻での反撃は乏しく『ヴァリャーグ』に八発が命中して炎上。炎上している『ヴァリャーグ』を視認した『コレーエツ』の艦長は楯になろうとヴァリャーグと瓜生艦隊の間に出た。

 『新高』『千代田』は『コレーエツ』に照準を合わせて砲撃を集中させた。十一発の命中弾を浴びた『コレーエツ』は大破、『コレーエツ』の艦長は弾薬庫に爆破を命令して『コレーエツ』は自沈した。


「……これまでだな。艦を自沈させる」


 『ヴァリャーグ』の艦長であるフセヴォロド・ルードネフ大佐は部下に命じて『コレーエツ』同様に弾薬庫を爆破して自沈したのであった。











「……予想外過ぎる程の戦果でごわす」


 聯合艦隊旗艦三笠の長官室で東郷はそう呟いた。特に旅順口攻撃で二隻の戦艦(『ツェサレーヴィチ』『レトヴィザン』)を座礁擱座して長期に渡る戦線離脱は日本海軍にとって幸先が良かった。

 この戦果で旅順艦隊の戦艦は五隻となった。


「……これからが問題でごわす。旅順艦隊もそうであるがウラジオストク艦隊……」


 開戦前に山本大臣からの厳命で第二艦隊を二分してウラジオストク艦隊に備える事に聯合艦隊司令部は少々混乱した。

 東郷は山本と面会して三好の事を聞いていた。東郷も「大臣は可笑しくなったのか?」と思ったが初戦の戦果に東郷は三好をとりあえず信用する事にした。


「三好が主張する歴史は変えなくてはな……」


 東郷はそう呟くのであった。そして二月十日、日本からロシヤに宣戦布告がなされた。

 そして翌日の二月十一日、津軽海峡付近をウラジオストク艦隊が航行していた。

 ウラジオストク艦隊は二月九日に開戦の報告が届くと砕氷艦の助けを得てウラジオストクから出撃した。

 ニコライ・レイツェンシュテイン大佐が指揮官で装甲巡洋艦『ロシヤ』『グロモボーイ』『リューリク』防護巡洋艦『ボガトィーリ』の四隻が参加していた。

 目的は日本の海上交通路での通商破壊戦である。ウラジオストク艦隊は旅順艦隊を支援するため津軽海峡へと向かったのだ。

 しかし、ウラジオストク艦隊は津軽海峡を目前にして捕捉された。


「右舷に敵艦隊!!」

「ヤポンスキーめ、我々の行動を知っていたか!!」


 旗艦『ロシヤ』でレイツェンシュテイン大佐はそう叫んだ。この時、ウラジオストク艦隊の前に現れたのは第二戦隊第二小隊の『八雲』『浅間』『常磐』である。


「全艦砲撃開始せよ!! ヤポンスキーの艦艇を沈めるのだ!!」

「アゴーニ!!」


 レイツェンシュテイン大佐は砲撃命令を下した。しかし、これはレイツェンシュテイン大佐のミスであった。第二小隊と遭遇した時点でレイツェンシュテイン大佐は反転させてウラジオストクに逃げるべきだった。


「奴等逃げずに立ち向かうようですな」

「宜しい。ならば砲撃開始せよ」

「撃ちぃ方始めェ!!」


 『八雲』に座乗していた第三艦隊司令長官の片岡中将は砲撃を命令し三隻はそれぞれの二十.三サンチ連装砲に砲弾を装填して射撃を開始した。


「時化ていますな」

「……波高しだな」


 片岡中将と参謀長の中村大佐はそう話していた。時化ていれば喫水線の穿孔から浸水が起きる。結果的に沈没しやすくなるのだ。


「何としても撃沈させるのだ。あの艦隊を逃がしてはならん!!」


 第二戦隊第二小隊は同航戦をとり、距離八千二百で猛烈な砲撃戦を展開した。

 そして砲撃開始してから二四分が経った時、浅間が放った二十.三サンチ砲弾が防護巡洋艦『ボガトィーリ』に命中した。


「命中弾!! 『浅間』の砲撃です!!」

「防護巡洋艦に命中させたぞ!! 俺達も負けるな!!」

「目標敵一番艦、撃ェ!!」


 『ボガトィーリ』の命中弾は日本艦隊を勢いづかせた。そしてそれに呼応するかのように『八雲』の十五サンチ単装砲弾が『ロシヤ』に命中した。


「距離を詰めろ!! もっと近づくのだ!!」


 片岡中将はそう命令して第二小隊は距離八千二百から六千八百まで近づこうとした。


「ヤポンスキーめ、勢いを増してきたか。だが数は此方が上だ」


 レイツェンシュテイン大佐はそう呟いたが、見張りの水兵の報告に顔を青ざめさせた。


「艦隊正面及び右四十度から複数の艦艇を発見!!」

「何!?」


 その艦隊は第三艦隊の所属艦艇だった。正面に現れたのは日清戦争時に黄海海戦で活躍した松島型防護巡洋艦の松島、厳島、橋立であった。そして右四十度に現れたのは日清戦争で日本軍に捕獲された二等戦艦『鎮遠』と第六戦隊の『和泉』『須磨』、第十艇隊だった。


「……まさか……謀られていたのか!?」


 レイツェンシュテイン大佐は唖然としていた。


「大佐、指示を!!」


 部下はレイツェンシュテイン大佐に指示を乞うが大佐自身もどうするべきか分からなかった。


「(どうすればいい……誰か教えてくれ!!)」







「漸く三二サンチ砲が真の意味で発揮されそうだな」


 『厳島』の艦橋で艦長の成田大佐はそう呟いた。


「砲撃準備完了!!」

「距離は?」

「一万二千!!」

「最大射程距離だが……まぁ良い。撃ちぃ方始めェ!!」

「撃ェ!!」


 厳島の三二サンチ砲が火を噴いた。ウラジオストク艦隊と向き合う形なので砲搭を旋回させなくていい。寧ろ旋回させて撃てば転覆する可能性もあった。

 そのため三突のように固定砲で撃つ事にしたのである。


「弾ちゃーく、今!!」


 『厳島』が放った三二サンチ砲弾は『ロシヤ』の右舷に水柱と吹き上がらせた。


「装填急げェ!!」

「『橋立』に修正を伝えろ!!」


 『厳島』が砲弾を再装填する中、修正を伝えられた『橋立』が三二サンチ砲を放つ。

 この砲弾も外れて水柱を吹き上がらせた。しかし、別の砲弾が『ロシヤ』に命中した。


「今の砲撃はどの艦だ!?」

「『鎮遠』の砲撃です!!」

「流石は『鎮遠』。旧式艦でも元は戦艦の意地か……」


 二隻の防護巡洋艦と水雷艇を率いていた『鎮遠』の三十.五サンチ砲弾がロシヤに命中したのである。


「我が艦の命中弾です!!」

「ハッハッハ、よくやった!! 砲術員達には俺からの奢りで一杯飲ませてやるぞ!!」


 二等戦艦『鎮遠』の艦橋で艦長の今井大佐は笑いながらそう叫ぶ。


「酒が飲めるぞ!!」

「三景艦より当ててやれ!!」

「撃ェ!!」


 艦長の奢り酒は直ぐに砲術員達に伝わり、砲術員達は士気をあげて再び『ロシヤ』を砲撃する。そのおかげなのか、三斉射目でまた命中弾をあげるのである。


「鎮遠ばかりに手柄を取らせるな!!」

「準備完了!!」

「撃ェ!!」


 『厳島』『橋立』は砲弾を装填して砲撃する。三二サンチ砲は一時間に一発の発射であったが、開戦前による乗組員の猛訓練により再装填時間を四十分まで縮小していたのだ。そして三景艦は距離二千七百という至近距離で砲撃したのだ。

 至近距離のおかげで『厳島』は『ロシヤ』に致命傷を負わせる事が出来た。『橋立』は『グロモボーイ』の艦橋に命中弾を浴びさせ、艦橋にいた艦長以下の乗員を吹き飛ばさせた。

 しかし、『厳島』『橋立』は集中砲撃を浴びて『厳島』は二十.三サンチ砲弾八発、『橋立』は二十.三サンチ砲弾九発が命中して戦闘不能になった。

 だが、二隻の三二サンチ砲弾はウラジオストク艦隊の士気を低下させるのには十分な存在だった。

 そして残る三景艦の『松島』は反転してウラジオストク艦隊の前方を航行して三二サンチ砲を砲撃していた。

 『松島』が逃げるようにしていたがこれは理由がある。『松島』の三二サンチ砲は後部甲板に搭載していたので後方から射撃する必要があったのだ。


「『厳島』と『橋立』ばかりに活躍させてはならん。三二サンチ砲は『松島』も搭載しているのだ!!」


 『松島』艦長の川島大佐は乗組員に檄を飛ばしつつ後方に航行しているウラジオストク艦隊を見つめる。

 ウラジオストク艦隊は三二サンチ砲の射線から外れようと左右に舵を切っていた。


「あの艦を狙え!!」


 川島大佐が指示したのは装甲巡洋艦『グロモボーイ』であった。『グロモボーイ』は『ロシヤ』が舵を切る理由を知らずに直進していた。いや直進するしかなかった。艦長以下艦橋にいた全員が戦死して操艦手も負傷していたのだ。


「撃ェ!!」


 『松島』の三二サンチ砲は距離三千八百で砲撃した。砲弾は『グロモボーイ』の煙突二本を吹き飛ばして命中した。それが『グロモボーイ』の致命傷となった。

 『グロモボーイ』は速度を落として艦隊から落伍していき、最期は水雷艇から放たれた三本の魚雷で撃沈となった。


「三景艦や二等戦艦に手柄を取らせるな!! 第三戦隊第二小隊の底力を見せてやれ!!」


 片岡中将は檄を飛ばす。『八雲』『浅間』は逃げようとしている『ロシヤ』に砲撃を集中させた。『常磐』は『リューリク』に砲撃を集中させて『リューリク』の前檣に砲弾が命中してメインマストを切断させた。

 そこへ第六戦隊の『和泉』『須磨』も自艦が搭載している四十口径十五.二サンチ砲及び四十五口径十五.二サンチ砲、四十口径十二サンチ砲を放ちリューリクに命中弾を与えて火災を生じさせた。

 一方、『ボガトィーリ』は戦場から離脱しようとしていたが『鎮遠』が『ボガトィーリ』を視認して砲撃。足止めをしている。

 そして致命傷を負っていた『ロシヤ』は穿孔からの浸水で傾斜が酷くなり遂にレイツェンシュテイン大佐は総員退艦を発令した。

 『ロシヤ』は戦闘が終了した1736に波間に消えていった。『ロシヤ』の総員退艦を視認した『リューリク』『ボガトィーリ』は砲撃を停止させ白旗と日章旗を掲げた。そしてゆっくりと停船したのである。


「片岡長官……!!」

「……勝ったか……」


 片岡中将はホッとしたような表情を中村参謀長に見せた。そして艦隊は二隻を臨検して接収する。

 それは海戦に日本が勝利した事を現していた。後にこの海戦は津軽海峡沖海戦と呼ばれるのであった。





ウラジオストク艦隊はネックなので早期撃滅は変わりないのは基本路線ですな。

御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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