表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

90/90

エピローグ「名を残さない選択」


名のない男は橋の上に立っていた。


川幅は広く水はゆっくりと流れている。

石造りの橋はところどころ欠けているがまだ十分に人を通せる。


ここはかつて刃が振るわれた場所だ。

誰かが怒りに任せて剣を抜き

誰かがその場で決断を迫られた。


生きるか切るか。

守るか見捨てるか。


あの日はそういう場所だった。


だが今は違う。


ただの橋だ。

荷車が通り商人が歩き子どもが走る。

特別な意味はどこにもない。


---


名のない男は立ち止まらない。


橋の中央で景色を振り返ることもしない。


立ち止まればそこに「物語」が生まれる。

あの日を思い出し意味を与え

自分を中心にしてしまう。


それを彼は選ばなかった。


---


世界は彼を待っていない。


彼がいなくても橋は使われる。

彼が判断しなくても人は決める。


それが救いだった。


もし世界が彼を必要としていたら

彼はまた象徴になってしまう。


---


灰色地帯グレイゾーンはもう彼のものではない。


丘の上のあの場所も

焚き火の跡も

彼の手から離れている。


だが消えてはいない。


制度の外に

ほんの少しだけ決めきれない空間が残っている。


---


誰かが判断に迷った時。


誰にも命令されていない時。


「こうしなければならない」という声が聞こえない瞬間。


その時名もない選択肢がそこにある。


逃げてもいい。

残ってもいい。

助けてもいい。

何もしなくてもいい。


その余地が消えていない。


それで十分だった。


---


王都。


王女アリシアは机の上の書類を閉じる。


裁かなかった決定。

曖昧な「保留」。

政治的な敗北。


議会で通らなかった提案。

削られた文言。

減らされた権限。


負けたのは事実だ。


---


それでも。


切らなかった。


その一点だけが残っている。


誰かを切り捨てることで整合性を保つ道を選ばなかった。


それが彼女の決定だった。


---


アリシアはもう「正しさ」を声高に語らない。


正しいかどうかは立場によって変わると知ったからだ。


代わりに問いを残す。


「誰が判断するのか」


制度か。

王族か。

民衆か。

それとも目の前の個人か。


答えは書類には書かれない。


---


遠く。


別の場所でセラは剣を持っていない。


腰には何も下げていない。

指示も任務もない。


だが目は曇っていない。


自分が何をしてきたかを知り

それでも今日をどう生きるかを考えている目だ。


---


彼女は命令を待たない。


贖罪も求めない。


誰かに許されることで安心しようともしない。


ただ今日を選ぶ。


今目の前で起きていることに対して

自分で判断する。


それが彼女の生き方になった。


---


かつて灰色地帯グレイゾーンにいた者たちはそれぞれの場所に散った。


町へ戻った者。

制度に再び身を置いた者。

失敗を重ねた者。

壊れて姿を消した者。


全員がうまくいったわけではない。


むしろうまくいかなかった者の方が多い。


---


だが。


誰も「正解」を持ち帰らなかった。


「あれが答えだ」と言い切れる者はいない。


それが名のない男には救いだった。


---


彼はその報告を聞いてほんの少しだけ息を吐く。


(よかった)


誰も彼を基準にしなかった。


誰も彼の真似を正解だと言わなかった。


---


彼は英雄にならなかった。


象徴にもならなかった。

制度にも組み込まれなかった。

物語の中心にもならなかった。


だから。


誰かの代わりに判断し続ける必要がない。


---


彼は名を名乗らない。


墓も残さない。

碑も立てない。

称号も受け取らない。


自分が何者だったかを固定しない。


---


だがある日。


誰かが迷った時。


「どうせ決められない」と立ち尽くした時。


その人がふと。


「自分で決めてもいいのかもしれない」


そう思えたなら。


それが彼の全てだった。


---


風が吹く。


橋を渡る人々は彼に気づかない。


誰も振り返らない。

誰も名前を呼ばない。


それでいい。


---


名のない男は橋を渡りきる。


振り返らない。


橋は再びただの橋になる。


---


世界は今日も判断を続けている。


完璧ではなく。

正解でもなく。

それでも止まらずに。


---


終わりに。


灰色地帯グレイゾーンとは

残しておく場所のことではない。


誰かが

「自分で選べる」と思える

ほんの一瞬のことだ。


それがある限り。


世界はまだ閉じていない。


——完


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

名のない男の物語はこれにてバッドエンドで閉じました。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


もし作品を気に入っていただけましたら、

下部の☆☆☆☆☆より評価をいただけると大変励みになります。


★★★★★を入れていただけると作者のやる気が大幅に上がります!


また、ブックマークや感想も今後の執筆の支えになります。


少しでも楽しんでいただけたなら、これ以上嬉しいことはありません。

引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ