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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第4章

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「灰色地帯(グレイゾーン)は、勝手に広がる」


灰色地帯グレイゾーンは宣伝しなかった。


旗も掲げない。

看板も出さない。

名前も決めない。


規則もなければ

理念をまとめた紙もない。


それでも――

人は見つける。


探している者には

目に見えない目印がある。


---


最初に変わったのは

来る人間の質だった。


最初は逃げてきた者ばかりだった。

制度に疲れた者。

命令に耐えられなかった者。

ただ居場所を求めた者。


だがある時から変わる。


「逃げ場」としてではなく

「選択」として来る者が現れた。


---


三人目の来訪者は丘を越えてきたとき

まっすぐこちらを見て言った。


「聞いたことがある」


「ここは」


「守られない場所だと」


ミレイアは落ち着いた声で頷く。


「ええ」


「それでも?」


男は迷わなかった。


「だからです」


守られない。


それを理解したうえで来た。


それは逃亡とは違う。


---


彼は若かった。


背は高いが体は細い。

剣の構えも甘く

振りも遅い。


魔力反応も弱い。


戦力として見れば並以下。


だが。


目だけは逃げていなかった。


誰かのせいにする目ではない。

自分で選んだと分かっている目だった。


---


夜。


焚き火の前でセラが言う。


「噂の質が変わりました」


ミレイアが薪を組み替えながら聞き返す。


「どういう意味?」


「以前は」


「“隠れ家”」


「今は」


「“試される場所”」


その違いは決定的だった。


---


灰色地帯グレイゾーンは試験をしない。


入るための条件もない。

能力検査もない。

忠誠も問わない。


だが。


来た者が自分を試す。


自分で決める。

自分で動く。

自分で失敗する。


それがこの場所の空気だった。


---


ある女は命令を待たずに動くことを覚えた。


誰も指示を出さないから

自分で考えるしかなかった。


最初は戸惑い

失敗し

焚き火の前で黙り込んだ。


だが誰も叱らない。


成功しても褒めない。


それが逆に

彼女を落ち着かせた。


---


ある男は守られない恐怖を受け入れた。


夜獣の遠吠えが聞こえる。

見張りはいない。

結界もない。


「自分で守るしかない」


その現実を体で覚えた。


それは怖い。


だが

命令で動くより

納得できた。


---


失敗しても叱られない。


成功しても評価されない。


昇格も降格もない。


それが奇妙な安心を生んだ。


切られない。


それだけで人は安定する。


---


数が少しずつ増える。


五人。

七人。

十人。


それ以上には増えない。


増やさない。


目が届くぎりぎり。


顔と名前を覚えられる範囲。


---


ミレイアは意図的に拡大を拒んだ。


「これ以上増やせば」


「制度になる」


人数が増えれば

役割が必要になる。


役割ができれば

規則が必要になる。


規則ができれば

違反者が生まれる。


違反者が出れば

切る必要が出る。


それは彼らが最も避けたい流れだった。


---


だが。


外が放っておかなかった。


---


王都で噂が少しずつ変わる。


「あそこ」


「男も」


「女も」


「区別されないらしい」


「危険じゃない?」


「でも」


「逃げた奴が戻ってきてない」


戻ってこない。


それは制度側から見れば異常だ。


戻されない場所がある。


その事実が波紋を広げる。


---


均衡派の会合。


広い部屋に落ち着いた声が響く。


「放置しすぎたか」


「ただの空き地のはずだ」


「なのに」


「“選択肢”として認識され始めている」


選択肢。


それが一番危険だ。


制度以外に道があると知られた瞬間

制度の前提が揺らぐ。


---


ヴァレリアも報告を受けていた。


「制度外の集積」


「数は?」


副官が答える。


「まだ少数です」


「ですが」


「思想が芽吹いています」


ヴァレリアは目を細める。


「彼は」


「死んだはずだ」


記録上は。


だが結果が残っている。


それが不気味だった。


---


王女アリシアも同じ報告を読む。


だが反応は違った。


「管理外区域」


「記録なし」


「でも」


「切られていない人間が増えている」


彼女は私的記録に書く。


灰色地帯グレイゾーンは思想になる前に触れなければならない》


思想になれば敵になる。


敵になれば排除される。


だからその前に。


どう扱うか。


---


灰色地帯グレイゾーンの中。


焚き火のそばで

名のない男が言った。


「増えすぎると」


「壊れます」


声は静かだがはっきりしている。


誰も否定しなかった。


全員分かっている。


ここは小さいから保てている。


---


セラが問いかける。


「どうすればいいですか」


彼は少し考えた。


焚き火の火を見つめながらゆっくり答える。


「選ばない」


「迎えない」


「拒まない」


「残るかどうかは本人に委ねる」


線引きをしない。


選抜しない。


追い出さない。


それだけ。


---


その夜。


一人の少年が何も言わず去っていった。


荷物を持ち丘を越える。


誰も追わない。


止めない。


---


翌朝。


彼は戻ってきた。


顔は少し疲れているが

目ははっきりしている。


「行って」


「考えました」


それだけだった。


誰も理由を聞かない。


---


灰色地帯グレイゾーンは守らない。


だが。


追い出しもしない。


その事実が外に伝わる。


少し歪んだ形で。


---


「あそこは自由らしい」


「規則がない?」


「なら」


「何をしてもいいんだ」


危険な誤解。


だが自然な流れ。


自由はしばしば誤解される。


---


ミレイアが低く言う。


「利用される」


名のない男は頷く。


「次は」


「“使おうとする者”が来ます」


守られない場所は

隠れたい者だけでなく

利用したい者も引き寄せる。


---


遠くで馬の蹄の音が響く。


規則正しい。


数も多い。


商隊だ。


大きい。


統制が取れている。


---


セラが目を細める。


「商人」


「ええ」


ミレイアが苦く笑う。


「一番匂いを嗅ぎつける連中」


価値のあるものを

誰よりも早く見つける。


---


商隊の先頭に女がいた。


艶やかな衣装。

動きは無駄がない。

笑みは柔らかいが目は冷静。


値踏みする目だ。


馬を止めゆっくりと辺りを見回す。


「面白い場所ね」


「噂より」


「ずっと無防備」


無防備。


その言葉は半分正しい。


---


名のない男は一歩前に出る。


姿勢は自然だが視線は外さない。


「何の用です」


女は穏やかに微笑む。


「商売よ」


「あなたたちと」


少し間を置き。


「そして」


「あなたと」


その視線ははっきりと。


名のない男を捉えていた。


灰色地帯グレイゾーンは見つかった。


今度は逃げてきた者ではない。


価値を見抜いた者に。


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