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異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第4章

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70/90

「完成してしまう正しさ」


均衡派は急がなかった。

焦りは失敗を生む。

彼らはそれをよく知っている。

だから選んだのは

世論が“自然に”結論へ向かう形だった。

________________________________________


最初に出たのは論文だった。

《例外的成功事例が社会に与える心理的影響》

内容は冷静だ。

・例外は模倣を誘発する

・模倣は失敗を生む

・失敗は制度への不信を生む

・よって例外は管理されるべきである

誰も反論しなかった。

反論しづらいからだ。

________________________________________


次に記者が動いた。


「あの男」

「成功した後何をしました?」


答えはいつも同じ。


「何も」


その“何も”が

切り取られた。


《成功後社会的責任を放棄》

《模範にならない男》


言葉は

刃よりも静かに刺さる。

________________________________________


世論は

こう言い始めた。


「危険だったけど」

「まあ」

「もう終わった話だよね」


それが

均衡派の勝利条件だった。

________________________________________


ヴァレリアは報告を聞き静かに頷いた。


「いい流れだ」

「排除は」

「成功しつつある」


副官がためらいがちに言う。


「彼が」

「本当に消えたら?」


ヴァレリアは即答した。


「なら」

「制度は正しかった」


それ以上でも以下でもない。

________________________________________


同じ頃。

俺は計画の最終確認をしていた。

場所は

王都の外。

管理外区域。

魔力濃度が不安定な

旧実験地帯。

________________________________________


「条件は」


俺が言う。


「完璧」


ミレイアが帳簿を閉じる。


「記録は曖昧」

「証人は複数」

「責任者は不在」

「事故として成立する」

________________________________________


セラが淡々と補足する。


「追跡は」

「死亡確認が出た瞬間」

「自動停止」

「均衡派は」

「祝杯をあげるでしょう」


その言葉に

誰も笑わなかった。

________________________________________


「最後に」


ミレイアが俺を見る。


「本当に」

「戻らない?」


俺は頷いた。


「戻る場所が」

「もうありません」


それは事実だった。

________________________________________


その夜。

王女アリシアは

公式会合で一つの決定を下していた。


《監督強化措置の継続》

《対象者行動なし》

《危険度低下》


彼女の胸に

小さな違和感が残る。


「静かすぎる」


だが

それ以上踏み込めなかった。

踏み込めば

政治になる。

________________________________________


翌朝。

均衡派は

最後の布石を打った。


《特別監視対象の一部解除》


それは

餌だった。

自由を与え

動かせるための。

________________________________________

セラが低く言う。


「来ました」

「ええ」


俺は頷いた。


「完璧なタイミングです」

________________________________________


王都では

人々がこう噂していた。


「結局」

「あの男は」

「何だったんだろうね」

「さあ」

「危険じゃなくなったならどうでもいい」


それが

最も残酷な結論だった。

________________________________________


夜。

空が曇る。

魔力嵐の兆候。

自然現象。

誰も

責任を問われない。

________________________________________


ミレイアが静かに言う。


「ねえ」

「あなたが」

「消えたあと」

「世界は少し良くなる?」


俺は即答しなかった。

そして答えた。


「分かりません」

「でも」

「悪くなる理由が一つ減ります」

________________________________________


遠くで雷が鳴る。

計画は

すでに動き出していた。

止められる者は

もういない。



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