表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界に来たのでハーレムを目指したら、女性が強すぎて一歩も進めない件  作者: きなこもち
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/90

ヴァレリアの第二手

それは暴力じゃなかった。


だからこそ、止めようがなかった。


---


きっかけは、小さな新聞記事だった。


王都日報の朝刊。

目立たない二段記事。


《試験的施策の検証――想定外のコスト増大》


名前は出ていない。


でも、読めば分かる。


・制度実験で増えた間接費

・医療や治安へのしわ寄せ

・“非公式に関わった人物”の存在


(俺だな)


直接責めてはいない。

断定もしない。


ただ、こう書いてある。


「検証が必要ではないか」

「透明性は確保されているか」


疑問形。


それが一番強い。


---


二日目。


別の新聞。


《政治判断における個人の影響力とは》


識者のコメントが並ぶ。


「制度は、善意の個人に依存すべきではない」

「責任の所在が曖昧な関与は危険だ」

「無名の人物が政策に影響を与える構造は健全ではない」


無名。


それが俺だ。


肩書きもない。

職歴もない。

責任の位置づけも曖昧。


(刺してくるな)


怒りを煽らない。

正しさで包む。


だから広がる。


---


三日目。


街の空気が変わる。


酒場で、そんな話が出る。


「結局さ、あの制度って誰のためだったんだ?」

「男じゃないの?」

「戦ってない男だろ?」

「それって、ちょっとズルくないか?」


悪意じゃない。


公平さの話だ。


「守られない男に場所を作るならさ」

「守ってる側はどうなるんだよ?」


答えに詰まる。


俺も、詰まる。


---


同時に、制度が“整えられる”。


正式な通達。


《政策関与者の資格要件見直し》


・一定以上の身分

・公的職歴の明示

・責任の所在の明確化


どれも正しい。


反論できない。


でも。


(全部、俺を弾く条件だ)


俺には肩書きがない。

公的な立場もない。


あるのは影響だけ。


それが、一番嫌われる。


---


王城・執務室。


アリシアは書類を黙って読んでいた。


(うまい)


暴力は使っていない。

拘束もない。

暗殺もない。


ただ、規定を整えただけ。


「殿下」


行政官が言う。


「新規規定により、例の人物は公式な場への立ち入り資格を失います」


アリシアは静かに頷いた。


「分かりました」


声は平静。


でも内側では理解している。


(完全に外された)


命も奪われていない。

自由も奪われていない。


だから抗議できない。


---


その夜。


俺は初めて、王城の門を通れなかった。


南門。


「申し訳ありません」


門番が頭を下げる。


「規定が変わりまして」


「俺は?」


「関係者ではなくなりました」


はっきり言われる。


(ああ、これか)


合法的排除。


怒りは湧かなかった。


ただ、静かに切り離される感覚。


---


エリスはそれを聞いて、歯を食いしばった。


「汚い」


「いや」


俺は首を振る。


「正しいよ」


「正しいから腹が立つんだ」


彼女は拳を握る。


「剣なら止められる」


「でも、これは斬れない」


その通りだ。


紙と理屈で塞がれた道は、剣じゃ開かない。


「ごめん」


エリスが小さく言う。


「謝らないで」


「俺が選んだ」


前に出なかった。

象徴にならなかった。


その代わりに、静かに外された。


---


軍事顧問棟。


ヴァレリアは報告書を読む。


「排除は完了です」


副官が言う。


「本人は健在。ただし、政治関与は不可能」


ヴァレリアは頷く。


「それで十分だ」


「彼はもう関われない」


「世論も制度も、彼を“無関係者”にした」


血は出ていない。


「これが一番きれいな勝ち方だ」


副官が少し迷って言う。


「ただ、例の暗殺者がまだ動向不明です」


ヴァレリアは目を細める。


「問題ない」


「彼女はもう“刃”ではない」


本当にそうか。


その疑問は口にしない。


---


夜。


屋根の上。


セラは王城を見下ろしていた。


(きれいな手だ)


殺さずに消した。


理想的な政治。


(そして)


(彼は、本当に外に出された)


今、彼を追っている者はいない。


守られてもいない。


狙われてもいない。


ただ、関係が切られた。


(これが一番効く)


セラは気づいている。


このまま放っておけば、彼は自分で消える。


誰にも必要とされない場所に追いやられた人間は、自分から薄くなる。


それだけは、分かる。


---


翌朝。


俺は街を歩く。


誰も止めない。

誰も話しかけない。


王城にも呼ばれない。


守られない。

排除もされない。


ただ、無視される。


(なるほど)


(これが一番きつい)


でも。


胸の奥に、小さな火が残っている。


エリスの言葉がよみがえる。


「死を使うな」

「生きていることを使え」


(無関係者として)


(何ができる?)


制度の中には入れない。


なら。


制度の外から動くしかない。


ヴァレリアは一つだけ誤算している。


排除された人間は、

制度に縛られない。


肩書きがないなら、

失う肩書きもない。


次の一手は――


まだ、誰にも見えていない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ